
私は中学受験専門なのですが、親戚に強引に頼まれて、幼児の国語の指導を行ったことがあります。
その際に有効だった手法について紹介します。
お話さいころ
指導したのは、小1と幼稚園生の姉妹でした。この姉妹は、国語力がとても低かったのです。理由は簡単で、本を全く読まないからでした。本を読まないということは、語彙力が低いこととイコールです。母親は、幼少期より読み聞かせを一所懸命やったそうですが、効果はあがっていませんでした。アニメ・ゲームといったものに囲まれた日々を送っていたのです。
まず親に厳しく指導したのは、ゲームを取り上げ、アニメの視聴時間を制限することでした。最近のアニメをご覧いただければわかると思いますが、物語世界がステロタイプで、会話も幼稚です。昔からアニメなんてそんなものでしたが、とくに低俗化に拍車がかかっているような気がします。そしてゲームについては百害あって一利なしですから。
この姉妹に対して、きちんとした文章指導は不可能です。そこで、仲良く遊ぶことにしました。用意したのは、オリジナルの「おはなしさいころ」です。
百均ショップで立方体の木片を入手し、その6面にイラストの紙を貼ってつくりました。イラストは、動物、植物、食べ物、人などを用意します。こうしたさいころをいくつか作成したのです。
ゲームは簡単です。さいころを数個ころがし、出てきたイラストを使ったショートストーリーをつくる、そうしたゲームです。
例えば、犬、りんご、海、この3つが出てきたとします。
「犬のポチはりんごが大好きでした。あるときポチが海岸を散歩していると、大きなりんごが流れてきたのです」
どこかで聞いたような話ですね。
まあ最初のうちはこんなものでしょう。
子どもにこうしたゲームをさせると、かならず「ふざけすぎる」子がいます。
「海で遊んでいた犬がいつのまにかりんごになった」
これはOKです。まるでカフカみたいですね。
「犬がさあ、りんごと海で泳いでてさあ、ぎゃははは」
これは教育的指導が必要です。物語を紡ぐということは、聞き手に聞かせることですから。自分一人がわけのわからぬ笑いにはまるのは、NGです。
そのお話を聞いた人が、物語の情景を思い浮かべることができるように、そしてストーリーの続きが気になるように、そこを指導します。
語句や文章読解の合間にやるこのゲーム、姉妹はいたく気に入ったようで、これを楽しみに国語の指導を受けに来ていたようなものでした。
学年があがり、だいぶ語彙も増えてきました。
そこで、徐々にレベルを上げていきました。
さいころにイラストを描くのが難しい語彙を導入します。感情の言葉や動きの言葉です。これについては、番号のリストをつくり、普通の数字さいころを導入します。
くやしい、うれしい、かなしい、といった語彙ですね。
これを混ぜて物語を作ります。
このまま発展させて、きちんとした短文を書かせるところまでやってもよかったのですが、それはやめておきました。あくまでも勉強の合間の息抜きとしてのお話づくりゲームにしておきたかったからです。
この指導の甲斐があったのかどうか、この姉妹はすっかり本好きになりました。
暇さえあれば本に読みふける子になったそうです。
ここまでくれば、国語力の向上まであと一歩ですね。
実はこの「おはなしさいころ」は、古典的な教育手段です。
さいころの市販品もありますし、カード式のものもたくさん売られています。
慣れないうちは、カード式のほうが使いやすいかもしれません。ただし、カード式だと、空想の余地が少ないという弱点があるのです。横断歩道を渡ろうとするおじさん、バス停にならぶおじさん、といったように、決まりきったストーリーに誘導しようとする意図が見えてあまりおもしろくありません。
それなら、こうしたさいころスタイルのほうがシンプルで遊びやすいと思います。
市販品ならこのあたりがよさそうです。
これは、「冒険」以外にも「アクション」「ムーミン」などのシリーズがあります。
