元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験と高校受験の単純な比較

 

最初は地元の公立中学に進学させる予定だったが、中学受験させたほうがよいのか迷いが生じた。

最初から中学受験前提だったが、最近中受撤退を考えはじめた。

中受と高受、どちらが良いのかわからない

こんなふうに迷う方はたくさんいらっしゃいます。

そこで、今回は、中学受験と高校受験の単純比較をしてみます。

1.どちらが大変か?

これは、勉強時間と難易度、その両方がありますね。

(1) 勉強時間

これは圧倒的に、中学受験>高校受験 です。

それには3つ理由があります。

中学受験のスタートは、4年生からの3年間ですが、それ以前から受験を意識した勉強(つまり小学校とは違う勉強)を始めるのは普通です。

それに対して、高校受験の場合は中1~中3の3年間ですが、一般的には中3の夏以降、部活引退後に本格的な受験勉強に突入します。

次に、部活の存在があります。小学生には部活(本格的な部活)はありませんが、中学生の多くが「勉強以外の活動」に時間を費やします。

仮に、部活はやらずに中1から本格的な高校受験勉強をスタートした場合のみ、小学生が小4からの3年間で費やす家庭学習時間と同等になります。

そして、「授業」の存在があります。

中学受験では、残念ながら小学校の学習内容ではあまりに量・質ともに不足するため、家庭学習(含塾)の学習が必須です。それに対し、高校受験の場合は、中学校の学習内容が高校入試に直結するため、まずは授業優先で基礎を固め、それ以外に受験対策をする、という作戦がとれるのです。

以上より、受験に特化した家庭学習(含塾)時間を単純比較した場合、中学受験の小学生のほうが勉強時間ははるかに長くなります。

 

(2)難易度

乱暴を承知で、中受の入試問題と高受の入試問題を単純に難易度でくらべてみます。

算数・数学はジャンルが違いますし、英語も比べられませんので、国語・理科・社会の3科目で見てみましょう。

 

国語・・・中学受験>高校受験

 文字数からして違います。

 公立高校受験の問題は、試験時間45〜50分の中で、問題文や設問を含めた総文字数は約10,000字程度です。中学受験は、試験時間45〜50分なのは同じですが、読むべき本文(大問2題など)だけで6,000字〜10,000字、多い学校(聖光学院や浦和明の星など)では14,000字を超えるケースもあります。つまり、小説一冊分に近い分量をハイスピードで正確に読み、さらに超重量級の記述を書き上げなければ時間切れとなるのです。

また、扱う文章の抽象度も中受のほうが深いですね。記述問題も「自分の言葉」で書くことが要求されるのです。

 

理科・・・中学受験>高校受験

一見すると「中学生のほうが年齢が上で、高度な内容を学んでいるから高校受験のほうが難しいのでは?」と思われがちですが、入試問題の性質や制限が大きく異なります。

 

 公立高校受験は、「学習指導要領」による厳格な縛りがあり、教科書に載っていない内容や、それを逸脱した応用問題は出題できません。

ところが、中学受験は指導要領の縛りがないため、各私立中学校が自由に問題を作れます。高校の物理・化学・生物・地学で習うような先取り内容や、専門的な科学現象が小学生向けにアレンジされて平然と出題されるため、難易度の逆転現象が起きるのです。渋谷渋谷が2年連続で「有機化学」、それも「栄養有機」を出したのが例としてあげられます。有機化学は高3,栄養有機は大学1年で学ぶ内容です。

 

社会・・・中学受験>高校受験

これも理科と同様に、中学受験は縛りなく自由に出題されます。

しかも、思考力・記述力を問う問題が多く出されるのです。

知識レベルも、高受レベルをはるかに凌駕します。

 

2.受験の公平さ

中受の合否判定はシンプルです。当日の試験の総合点のみで合否が決まります。一部面接を実施する学校はありますが、面接は廃止傾向にあり、重視されません。今時面接で「半分落とす」学校は慶応くらいです。

それに対して、高校受験は「内申点」がありますね。主観で評価される「内申点」の存在が、高校受験を不透明にします。また一部地域では、「事前確約」制度や「単願」「推薦」などの制度があり、さらに不透明さを増しています。

それを考えると、高校受験のほうが「大変」だといえるかもしれません。

 

3.思春期

中学生ともなると多くの子が思春期を迎え、反抗期に入る子も少なくありません。小学生と比べると「親の制御」が難しい年代です。

その代わり、小学生に比べれば「大人」ですので、理詰めの話ができるようにもなってきます。

 

4.学校の選択肢

これは圧倒的に中学受験のほうが有利です。高校受験では私立の選択肢があまりにも少ないのです。私学は中高一貫化して高校募集を停止する学校が増えました。

 

5.大学受験に向けて

あまり中高を「大学受験」の成果で語りたくはないのですが、実際には中高一貫校が圧倒的に有利です。高校受験対策という「足踏み」をしなくてすむのが大きいのです。例えば中3で数1まで終わらせるのは普通です。学校によってはさらに倍速で進みます。

 

結局は?

 

私は中受の世界の人間なので、「可能なら中受を!」というスタンスは変わりません。

ただし、全ての小学生が中受をするはずもなく、その必要も無いと思います。子どもによっては、中受よりも高受のほうが適している子もいますし、家庭方針や本人の希望で地元の公立中学に進学するのも悪くないと思います。そちらのほうがマジョリティです。

中受のための勉強が「やらされている」側面が強いのに対し、高校受験のための勉強は「本人がやる」ものです。これが3歳の年齢差というものです。高受は失敗できない受験ですので、本人がしっかりしないとどうにもなりません。

そう考えると、「本人が自覚をもって3年間しっかり勉強する」という高校受験もよいと思います。

 

ただし、「中受をしないから勉強もしない」という考えには反対です。

小学生のときにやらねばならない勉強があり、それは受験をする・しないこととは無関係です。

 

peter-lws.net

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