
志望校に特化した対策ははたして最善の道なのか?
志望校別クラス
ほとんどの塾では、小6になると志望校別のクラス編成をとります。
例えばSAPIXの場合は、新6年生の2月からこうなります。
火・木・・・平常授業、男女ミックスの成績別クラス編成(A~α1コース)
土・・・・・志望校別クラス編成(開成コース、桜蔭コース等)
火・木には5年生から引き続きカリキュラム学習を行います。ここでは志望校は関係なく、シンプルに4科目の成績だけでコース分けを行います。
そして土曜の志望校別クラス編成のやり方はこうなります。
まず男女それぞれ成績別に並べます。
たとえばそれぞれ6クラスずつだったとして、男子1~男子6,女子1~女子6、となります。
そしてそれぞれのクラスの生徒の志望校を見ます。
例えば男子1の生徒たちは、開成・筑駒が集中しています。そこでコース名は「開成・筑駒コース」とします。おそらく女子1コースは「桜蔭・女子学院コース」となるでしょう。男子2コースは、駒東や慶応普通部を志望する生徒が多くいますので、「駒東・慶応コース」となります。
もちろん地域によって志望校は変わります。例えば「鴎友・英和コース」となったり、「フェリスコース」となったりします。
ここで「〇〇コース」の冠名は、あくまでも「その成績の生徒が比較的多く志望する学校名」であることにご注意ください。
まさかクラス全員が同じ学校を受けるわけではありません。
したがって授業内容も、「このレベルの子たちが受験するいくつかの学校を想定した」授業となりますので、特定の志望校にフォーカスした指導ではありません。
しかし、学校名を冠に着けることで、クラスの雰囲気は変わります。つまり、生徒たちに受験校を意識させ、受験生である自覚を促すのが最大の目的なのです。
ここで、「うちの子は駒東も慶応も受けないのだから、このコースにはいたくない!」「早稲田コースを作ってくれ!」というのは違うのです。あくまでも、生徒の学力レベルにあった授業をするための目安ですので。
また、大規模校舎ですと、開成志望者だけで「開成1コース」「開成2コース」と作れるのですが、大半の校舎ではそうはいきません。冠名と実際の志望校が違っても気にする必要はありません。教師はそのクラスに集まっている生徒たちの志望校をある程度把握して授業をすすめますので。
ただし、「麻布・武蔵」を受験する生徒については状況は異なります。試験問題に特色があるので、早くから特化した授業を行うため、別にクラスを作ります。
9月になると、「日曜特訓(SS特訓)」がはじまります。志望校もある程度確定していますので、ここからは本格的な「志望校別」のクラス編成となります。
例えば、SS特訓では、「開成コース」「麻布コース」「慶応コース」と別れ、土曜特訓では「栄光コース」「聖光コース」に再編成、といった形をとります。
SAPIXの強みは、ごく一部の小規模校舎数校を除いて、普段通っている校舎で土曜特訓・SS特訓の両方の志望校別指導を行える点にあります。
大半の塾では、それができずに、生徒を一つの校舎に集約します。
たとえば開成志望者だけ西日暮里校舎に集合! といったかんじでしょうか。
塾としては合理的です。開成合格を指導できるレベルの教師を多数そろえなくてもよいですし、「一か所に集って切磋琢磨」感を演出することもできます。
しかし生徒にとっては問題があります。
移動時間が無駄なのです。
また、普段指導を受けている先生以外の指導は、指導の一貫性が損なわれます。
生徒目線か、塾目線か、と言うことだと思います。
このあたりは塾によって方針が変わります。
「筑駒特訓講座」
こんな名前を見れば、筑駒受験生なら思わず惹かれますよね。
それが狙いです。
他塾の優秀層をかすめ取る目的の講座ですから。
ここにも、塾の姿勢が見て取れます。
志望校の過去問だけではダメ
中学受験の入試問題は、二つの傾向軸を考えます。
まず時間軸。同じ学校では常に狙われる傾向がある、という考えかたです。
次に平面。様々な学校で同じ傾向の出題がある、という考えかたです。
とくに社会科はこの傾向が顕著です。
社会科の教師は、社会の変化に敏感です。
わかりやすい例をあげれば、フードマイレージ・地産地消・スローフード運動・トレーサビリティ、などといった「食」に関するワードがありますね。
これらは、20年前には全く出題されませんでした。しかし最近はあらゆる学校で普通に出題されています。作題する先生方の思考が似ていることに加え、研究熱心な先生は他校の入試問題も見ています。
A中学の入試問題だけを20年分やるより、最近の入試問題を幅広く勉強したほうが、A中学の合格は近づきます。
国語にもこの傾向はうかがえます。古典的名著からの出題よりも、「ここ1・2年で出版された」本からの出題が多いのです。まったく同じ作家の同じ作品を、複数校が出題、ということも珍しくありません。
志望校に特化しすぎると得点力が弱くなる
幅広い出題や入試傾向の変化に対応できる得点力を付けるためには、志望校に特化しないほうがむしろ正解です。