
塾の教師にとって大事なのは、いかに入試問題を研究するか、です。
しかし、これが不十分な教師の多いこと。
入試問題を解かない教師
私がSAPIXの中途採用を担当していたころ、採用試験を兼ねて、中学入試問題を解いてもらうことがありました。
だいたいは、麻布の社会科を解かせました(社会科教師の場合)。
ご存じのように、麻布の社会科入試問題は、全国の入試問題の中で最高峰といえる問題です。思考力・記述力、そして教養が高度なレベルで融合していることが求められる、とても「良い」入試問題なのです。この問題に比べれば、開成も聖光も「つまらぬ」問題です。
さて、採点するとまあひどいレベルなのですが、それを脇においておくとしても、面接でこう聞いてみるのです。「先生。今解いていただいた入試問題、どこの学校のものかわかりますか?」
信じられないことに、これに即答できる教師が非常に少ないのですね。
およそ社会科教師を名乗るのなら、まっさきに入手して解きたくなる学校なのですが。
もちろん即答できない方は、その場で不採用としました。
なかには、こんな方もいましたね。この方は高校の先生を20年やっているベテランなのですが、中学受験の世界は知らないとのことでした。
しかし、とても勉強家だったのです。
「先生、今解いていただいた問題はどこの学校のものかわかりますか?」
「麻布でしょうか」
「その通りです」
「実は今回応募するにあたって、中学入試問題集を購入して、いろいろ解いてみたのです。私はあまりに中学受験のことを知らないもので。驚きました、中学入試問題って難しいのですね」
もちろん採用したい人材です。
なぜ入試問題を解かないのか
我々の仕事は、生徒を志望校に合格させる、このことに尽きます。
そのためには、入試問題を知らないとお話になりません。
しかし、この入試問題研究(解くこと)は、仕事時間中に行えないのです。
「入試問題研究日」「入試問題研究タイム」を設けて、仕事時間中に教師に問題を解かせている塾を私は知りません。理想はそうあってほしいですが、コスト的に無理でしょうね。「そんな時間あったら勧誘電話の一つもかけろ!」と言う塾ばかりですから。
そこで、入試問題研究は、教師がプライベートの時間を削ってやるしかありません。
これは塾からは強制できません。違法になりますので。これはあくまでも教師が「自主的に」行う性質のものなのです。
しかし、プライベートの時間を、仕事のための研究に費やすのは誰だって嫌ですよね。
だから「解かない」のです。
こうして、まともに入試問題を解いたこともない教師ばかりとなるのです。
それでも、趣味と実益を兼ねて、入試問題を解きまくる教師もいます。私もそうですが、楽しくて仕方がないのです。毎年の入試問題を、1科目あたり200校分くらいは解いています。もっともそれを知った部下から、「先生、社畜ですね」と指摘されてしまいました。そうなのか?
新しく検討している塾の先生と面談する際には、こう聞いてみてください。
「先生。うちの子はA中学を志望しているのですがどうでしょうか? 今年のA中学は、社会科が難しかったみたいで、うちの子にも解けるでしょうか?」
「ああ、問題ありません。A中学は、ここ5年以上、社会科は易しかったのですが、今年だけ妙に難しい問題が出題され、合格点は相当下がりました。おそらく来年以降は、以前の難易度に戻ると思います。それに難しいといっても時事問題の部分だけでしたから、対策は簡単ですよ」
これくらいは言ってほしいですね。