
今回は小6受験学年(あるいは5年生)に向けたお話です。
過去問がいかに大切か、という内容です。
過去問演習の効能
中学受験勉強において過去の入試問題を解くことは非常に大切です。
その理由は2つあります。
(1)志望校の傾向を肌で知る
自分が受験しようと考えている学校が、いったいどんな入試問題を出しているのか。
これを知らないことには、対策の立てようもありません。
また、学校により出題の癖というものもあります。これも、知っているのと知らないのでは大違いです。
そこで、自分が受験する予定の学校の過去問を解くことが大切です。
(2)足腰の強い得点力を鍛える
多くの人がこれを考えていないのです。
子どもたちは、ただ知識を覚えただけ、ただ授業で習っただけでは、入試問題が解けるようにはなりません。
社会科を例として説明します。
社会科の単元学習が公民分野まで一通り終わるのは、だいたい6月~7月頃でしょう。つまり夏休みに入る前には、全ての知識が出そろっているのです。
では、入試問題で満点が取れるのか、というと全くそんなことはありません。せいぜい5割程度の得点だと思います。
それは、一度習っただけでは知識が定着していないことと、その知識を活用することができないこと、この2点が理由です。
例えば、こんな質問をしてみましょう。
「日本において貨幣経済が本格化したのは何時代だろう?」
これを、時代ごとに挙手させて聞いてみると、見事に意見が割れるのです。
生徒A:奈良時代!
私:どうしてそう考えた?
生徒A:なんか、富本銭とか和同開珎とかがあったから。
たしかに富本銭は683年、和同開珎は708年です。奈良時代は710年~ですので、一理あります。
生徒B:江戸時代!
私:どうして?
生徒B:だって、小判とかあったじゃない。
たしかに小判は家康が鋳造を始めました。
生徒C:明治時代!
私:どうして?
生徒C:それは、明治維新があったから。たしか銀行もこのころ作られたんだよね。渋沢栄一だっけ?
たしかに渋沢栄一によって1873年(明治6年)に日本初の銀行として第一国立銀行が作られました。
私:それでは、江戸時代までは貨幣は使われていなかったんだね。
生徒C:・・・・・。
そこで私からヒントを出すことにします。
私:次の語句を覚えているよね。「日宋貿易」「宋銭」「定期市」「借上」「土倉」「問丸」「馬借」「二期作」「牛馬耕」「永仁の徳政令」
生徒一同:あ、鎌倉時代!
いずれの語句も、知識として習っています。つまり最初から彼らの頭の中には答の種が存在していたのです。だから、「宋銭が輸入品だった貿易は?」と聞けば、「日宋貿易!」
と答えられますし、「それを始めたのは?」「平清盛!」と答えられるのです。借上や土倉が金融業だったことも知っていますし、御家人の借金帳消しのために徳政令が出されたことも知っています。
しかし、そうした知識を有機的に結び付けて考えることが全くできないのですね。
こうした「問題を解く力」を身につけるためには、問題を解くしかありません。
これが過去問演習の効能です。
※この質問は、「貨幣経済が本格化」とわざと曖昧な聞き方をしているので、たとえば「江戸時代」という答えも間違いとはいえません。
詳しくは、貨幣博物館のHPを見るとよいでしょう。とても勉強になります。
不足しがちな過去問演習
こんなに大切な過去問演習ですが、多くの塾では不十分なのが現状です。
それには理由があります。
(1)時間が無い
本当は夏休みは過去問演習に充てるべき大切な時期なのです。集中して問題を解くことに時間を割ける唯一無二のチャンスです。
しかし、大半の塾では、「夏期講習」で生徒を縛ります。毎日塾に行き、「授業」を受け、宿題をやる。それだけで夏休みがつぶれます。
もし私が本当に良心的な塾を開くとすれば、夏休みは普通の授業はしないでしょう。
午前中に4科目の過去問をきちんと解かせ、午後にはその問題の解説授業を行います。これが一番効果があがります。
ただ、生徒を集めても「問題を解かせる」だけでは授業料はいただけないですね。また、多くの保護者が「何点とれた?」ばかり気にするのも問題です。
結局のところ、「過去問は家で解いておいてください」となるのです。
(2)理解されない
得点力向上のための過去問演習は、実は学校を問いません。多様な問題演習により得点力を上げることだけが目的ですので、志望校の問題に特化する必要もないのです。
例えば、男子生徒に女子校の問題を解かせてもよいのです。
しかし、多くの方はこれを嫌がります。受験校の過去問だけ解けばよいと勘違いしているからでしょう。たしかに受験校の過去問演習も大切ですが、それだけでは全く足りないのです。
(3)同じ学校を受験する生徒ばかりではない
集団指導塾の欠点です。同じ学校を受験する生徒だけを集めてのクラス編成がほぼ無理なのですね。
(4)教師の力量不足
悲しいことに、教師の力量が不足している場合もあります。模範解答なしに解答をその場で導ける力が無い教師も多数いますし、問題から知識を膨らませていくことができない教師も多数いるのです。
そんな教師の過去問の解説授業は、解説ではなくて、ただの「答え合わせ」になってしまうのです。
自衛する勇気
ある保護者から聞いた実話です。
通っていた小規模塾では過去問演習をほとんどしてもらえなかったのです。このままではまずい!と危機感を抱いた保護者は、家で時間を測って入試問題を解かせました。ただ、記述や算数の途中式の採点が家ではできなかったので、塾の先生に頼みにいったのですね。すると、こう言われたそうです。
「今回だけは特別につけてあげますが、次からは持ってこないでください」
たしかに過去問の採点は時間がかかります。持ってこられると迷惑だと思う気持ちも(同業者としては)理解できます。ただ、一学年数百名も抱えるような塾ではないのです。ごく少人数の生徒しか指導していないのに、それを断るとは。
また、こんな話も別の保護者から聞きました。
個別指導塾に通っていました。マンツーマンの指導です。過去問演習もやらせてくれます。しかし、塾に行くと問題を解かされるだけで、答え合わせは家で母親がやっているのです。問題を解かせるだけで高額な個別指導料を取る「勇気」がすごいですね。
過去問演習に関しては、塾任せではうまくいかない場合が多いと思います。
自分で計画をたてて進める必要があるのです。
過去問演習のやり方についてのオンライン説明会を開きます。
ぜひご参加ください。(無料です)
夏休みの早朝に、過去問の解説授業をオンラインで実施します。
少し早起きしての参加をお待ちしています。
麻布・海城・鴎友・女子学院・渋谷渋谷の5校の3年分の国語と社会の入試問題の解説をします。これらの学校を受験する方はもちろん、過去問演習の趣旨を考えると、それ以外の方にも役立つ講座です。