元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾の面談の有効活用法

6年生になり、公開模試も受けるころとなりました。

この後夏にかけて、各塾では個人面談を実施するところが多いと思います。

今回は、面談の有効な活用法について考察します。

SAPIXの場合

個別面談についての塾側の流れはこうなっています。

(1)面談用紙を提出してもらう

 面談用紙には、現時点での志望校や面談で聞きたい事柄を書いてもらいます。

(2)教師の予定調査

 面談担当教師(6年生授業担当教師)の予定をまとめます。

(3)面談担当者の割り振り

 この時期の面談なら、一番偏差値の低い教科(=苦手教科)の教師が担当するのが基本です。さらに、「上の子を担当していてご家庭の事情をよく知っている」「5年生のときから何度も面談してきた」「その志望校ならこの教師が詳しい」といった事情を考慮しながら、担当者を教室長が割り振るのです。教室規模にもよりますが、常勤講師なら20名~30名ほどは担当すると思います。教室長になると50人以上は担当していましたね。

(4)面談前の打ち合わせ

4科目の担当教師で、一人一人の面談内容について打ち合わせします。

「A君の志望校はこうなっていますが、算数から見てどうですか?」

「〇〇中はいけるでしょうけれど、△△中の問題はA君には相性が悪いですね」

「国語はどこを受けても問題ないでしょう」

「理科的には、押さえの学校は××中にしたほうが良いと思いますよ」

「どうしても大学附属校希望ですが、どこかお勧めの学校はありますか?」

「◇◇中なら、去年のあの子も同じくらいの成績で合格しましたし、A君には合っていると思うので奨めたらどうでしょうか」

こんなかんじですね。また、特に科目や学習内容についての相談が書かれていたら、それについても担当教師にリサーチします。

 

これはSAPIXの場合ですが、他の塾も同じかんじではないでしょうか。模試データに基づいて話をするだけなら誰でもできますが、日ごろ生徒を教えている教師でなければわからない生徒の様子や解答能力が重要です。授業中の質問に対する反応で思考力もわかります。

 

事前準備

 塾の教師といえども、全ての学校について詳しいわけではありませんし、4科目すべてについて詳しいわけでもありません。したがって、事前の準備が大切なのです。

そのためにも、面談前に、面談で何を相談したいのか、志望校はどこを検討しているのかについてなるべく具体的に伝えておくことが肝心です。

 面談をしていて一番困るのが、こうしたケースです。

(1)志望校が空欄

 事前の調査用紙には志望校について空白となっている。これが最も困りますね。さすがに中学受験塾に通っているのですから、志望校が全く無いということはあり得ないと思うのです。確定していないから書けないのか、それとも恥ずかしいから書けないのか。

我々も仕事ですから、どんな志望校を提出されても眉一つ動かしません。合格可能性とそのための対策についてお話するだけです。

(2)志望校が1つしか書いていない

 さすがに1校だけしか受けないという生徒はいません。その学校にたいする強い思い入れはわかりますが、他の学校についてのお話ができないのでは困ります。

(3)志望校が大量に書かれている

例えば、「開成・麻布・武蔵・駒東・慶応普通部」と書かれてしまうと、これも困りますね。すべて2月1日の一回しか入試がない学校ですので、「いったいどこに行きたいのか?」となります。

(4)医学部に強い学校希望と書いてある

これも実は困ります。医学部に強いかどうかは、学校の大学合格者一覧を見れば誰でもわかることです。そもそもどこの中高だから特別に医学部に強いという理屈もおかしな話です。せいぜい数学や理科系教科に力を入れている、その程度しかわかりません。しかも昨今どこの学校も理系教育には力を入れていますね。また、入学試験の区分から「医学部進学コース」と銘打っている学校もありますが、だからといって医学部に強いこともないものです。

(5)特定の部活に強い学校を求める

こうしたデータも我々は持っていません。「テニスに強い学校に行かせたいのです」と言われても、さっぱりわからないのです。

(6)校風にこだわる

「自由でのびのびしているけれど、生徒一人一人に向き合ってくれる学校はどこですか?」

「うちの子に合いそうな校風の学校はどこでしょうか?」

こうした、校風についての相談も、実は困るものなのです。

もちろん過去にたくさんの生徒が進学している学校の場合は、卒業生から内部情報について聞く機会もありますし、我々自身が学校の説明会に足を運んでもいます。ある程度の「校風」は把握していますが、我々から見た「校風」と、保護者が感じる「校風」は別物です。こればかりは、ご家庭で直接足を運んで「感じて」いただくしかありません。

 

いずれにしても、面談を無駄なく活用するためには、事前に教師側へ、聞きたい内容を伝えておくことが大切です。

 

納得いかない場合は教室責任者と再面談をする

塾の教師にもいろいろな人間がいますから。個性的を通り越して「アクが強い」教師もいますし、経験値が浅い者もいます。

もし面談して納得いかなければ、その教室の責任者と再面談することをお勧めします。さすがに教室長になっている教師は、経験が豊富ですし、責任持った対応をしてくれるはずです。

ただし塾によっては、教師職ではない事務職が教室長であったり、経験値が浅い教師が室長であったりするケースもあるので要注意です。とくに小規模校舎を大量に展開している塾の場合は注意が必要だと思います。4科目や学校事情に精通している実力ある経験者がそんなに大勢いるとは考えにくいからです。

今後を考えると、信頼できない教室責任者がいるような塾は転塾の一択だと思います。

 

信頼することで得られるものも多い

たまに、模試のデータや学校の出題傾向を詳細に分析して面談にいらっしゃる方もいます。

我々のアドバイスを聞くというよりは、自分の分析結果を披露する面談になってしまいます。

「お子さんは公民分野が苦手なようですね」

「ああ、〇〇中学では過去5年間、公民分野からの出題はありませんから勉強させていません」

「・・・・・・・。算数のテストでも、最後の2問はいつも白紙です。式だけでも書いてくれれば部分点ももらえるのですが」

「〇〇中学ではあのレベルの問題は出ませんから。だから解く必要はないと指導しています」

「・・・・・。国語の漢字をいつも落としています。漢字は確実に得点できる部分ですから」

「〇〇中学では漢字はほとんど出題されていません。だから漢字は捨てています」

「・・・・・・。」

これでは、こちらもアドバイスする気力を喪失します。そこまで完璧な分析ができるのであれば、もう塾は不要だと思います。

塾とご家庭は信頼関係があったほうがうまく行くに決まっています。たしかに塾は合格のために利用すればよい存在にすぎませんが、信頼してくれたほうが塾の教師も張り切りますし、そのほうが得だと思います。