元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

親の言いなり中学受験は正しいというけれど、言うことを聞いてくれない

前々回の記事で、「親の言いなり中学受験は正しい」と書いたところ、さっそくこう言われてしまいました。

「そもそも子どもが親の言うことを聞いてくれないのに、『言いなり』になどなるはずがないので困っているのです」

その道のプロなら

 以前教えていた生徒のお母さまのお話です。

そのお母さまは某大学の教授でした。しかし、保護者会や面談などには必ずいらっしゃるのです。「うちのゼミの生徒なんかより息子のほうがよほど勉強していますから」といって。そのたびに「休講」になるゼミの生徒に同情します。

このお母さまは、子どもを塾に送り届けると、自分は塾近くのカフェで自分の勉強をしています。「息子が頑張っている時間は自分も頑張って勉強します」とおっしゃっていました。

そんな素敵なお母さまにこう言われたことを今でも覚えています。

「私は大学の研究や大学生指導のプロですが、中学受験生の指導は素人です。ですからプロである先生方におまかせします」

こう言われることは、誇りでもあり怖くもありますね。

それからずいぶん年月が経ちました。今ではやっと私も「中学受験のプロ」を名乗る資格ができたと思っています。

 

その道の「プロ」の意見になら誰もが耳を傾けます。それは子どもも例外ではありません。生徒たちが我々教師の言うことをよく聞くのは、プロとして信頼されているからに他なりません。

しかし、残念ながら親は中学受験の専門家ではありません。たとえ上のお子さんを中学受験させて成功したとしても、それは「たった一人」の経験でしかないのです。

しかし、今から親が「中学受験の専門家」になることは不可能です。

ではどうしたらよいのでしょうか?

 

2.子どもが親の言うことを聞くということ

(1)幼い

 幼少期には、親に歯向かう子どもは少ないですね。子どもにとって親は「絶対」の存在ですから。しかも親の言うことは間違っていません。

実は中学受験生の小学6年生になっても、「幼い」ままの生徒というものが一定数いるのです。

ある男子生徒は、授業中にトイレに行くといって抜けだしてはママに電話していました。ママの声を聞かないと安心できないのです。

ある男子生徒は、6年生にもなってママとお風呂に一緒に入っていました。これはママがいけません。

ある男子生徒は、授業中にシャープペンシルが壊れるとそれだけで悲しくなってシクシクと泣き出しました。

ある男子生徒は、進学した中学校で友人に「ノート見せて」と頼まれたとき、「ママに聞いてから」と答えました。

 

こうして書いていて気づきましたが、みな男子ばかりですね。女子の「幼さ」は少し様相が異なります。我々にむかって、学校の先生の悪口や母親の悪口を平気で言うような「幼さ」ですね。

いずれにしても、この男子たちには親に逆らうということは考えられません。

 

(2)親が頑張った

 子どもが中学受験をすることになったときから、中学受験勉強を子どもに先行して取り組む方もいます。中学受験の入試問題など、12歳の子どもでも解けるレベルですから、大人が本気を出せばマスターできないはずがないのです。

これは子どもにとっては頼もしいですね。なにせ「自分が解けない問題でも親が解ける」のですから。信頼も生まれる道理です。

ただし、ここには注意があります。「解ける」=「教えられる」ではないのです。

「こんな簡単な問題も解けないのか!」と頭ごなしの態度では、子どもはますます親から離れていってしまいます。

「教えられる」ようになるためには、経験が必要です。こればかりは親には到達できない領域です。

(3)親が弱点を見せた

 あるご家庭では、母親が子どもを「持ち上げ」ました。それもお芝居ではなく本気で。

「お母さんの知らないことをたくさん知っていて偉い」

「こんな問題が解けるなんてすごい」

といったぐあいです。

子どもから見ると少々「情けない」母親かもしれませんが、その優越感を維持するために子どもは勉強に取り組んだのですから大成功です。

親が完璧である必要はありません。それは不可能ですから。

でも、子どもの頑張りを認める親なら、子どもだってむやみやたらに反発しないでしょう。

(4)戦友となった

まるで親が中学受験するかのように、子どもの勉強に並走しました。「この前のマンスリーテストでは、算数は息子に20点も負けましたが国語は圧勝しました」などと言っていましたね。少々大人気ないような気もしますが、そんな親子関係も良いと思います。

 

3.親の第一歩

 中学受験の専門家でもない親が、上から高圧的に一方的に子どもを抑え込もうとすれば、それは反発も生まれます。

子どもがどんなチャレンジをしようとしているのか、そのことに向き合い、子どものことを「理解」しようと務めることで信頼は生まれると思います。

そのための第一歩は簡単です。

まずは子どもの志望校の入試問題を親が解いてください。

これがお子さんが挑もうとしている山の高さです。

それを知ることが第一歩です。

 

もっとも私が保護者会等で機会あるごとにこのことをお話すると、会場の空気がスウーッと引いていくのです。

どうしてでしょうね?