
中学受験にまつわる議論(批判?)の中にこうしたものがあります。
「親の言いなりになって受験しても、将来困るようになる」
この意見は、「中学受験反対派」に根強いのです。
今回はこのことについて考えてみます。
結論
私の書く文章は長い(回りくどい)とよく指摘されます。ブログ記事も、ちょっと油断するとすぐに5000字を超えてしまうのです。
そこで今回は結論から先に書くことにします。
「親の言いなり中学受験は正しい」
その論拠を上げていきましょう。
1.小学生の「自主性」の正体
長年(35年以上!)にわたり、SAPIXで中学受験に臨む小学生たちと向き合ってきました。
そこで経験則として得たのです。
小学生の自主性はまがい物であると。
「まがい物」というと少々言葉がきついですね。「借り物」あるいは「発展途上」とでも置き換えましょう。
「自主性がある」とは、自分で判断する力が備わっていることを意味します。その判断を下すためには、「判断材料」を持っていることが前提です。
小学生には、この「判断材料」があまりにも少なすぎるのです。
ここまで書いてきて、ふと思い出したことがあります。私の幼少期の思い出です。
私の幼少期には、家族で外食をすることは皆無でした。
ある時、珍しく家族でレストランに出かけたのです。幼い子どもの目には「高級レストラン」に映りましたが、たぶんごく普通の洋食系レストランだったのだと思います。そこでメニューを渡されて、「何でも好きなものを食べなさい」と言われました。しかし悲しいことに、メニューを見ても、知っている料理が何一つ無いのです。唯一知っていたのが「ホットケーキ」でした。そこでホットケーキを選んだところ、「何でそんないつでも食べられるような物を選ぶのか!」と理不尽に叱責されたのでした。
知らなければ選びようがない。当たり前ですね。
さて、小学生が自主性を発揮、つまり自分の意思で判断するためには、彼らに判断材料と経験が必要です。
「放課後何して遊ぶ?」
「サッカーは?」
「それより野球しようぜ」
今時は廃れつつありますが、そんな会話、いかにもありそうですね。
「放課後、俺の家でカタンして遊ぼうぜ」
「カタン?」
「バックギャモンでもいいよ」
「バックギャモン?」
「マンカラでもいいけど。どれで遊ぶ?」
「????」
どれも個人的に好きなゲームです。
カタンは一時期家族ではまりました。ボードゲームの「名作」とされるゲームです。マンカラは、紀元前4000年!からあるそうですね。特別な道具など用意しなくても遊べますが、専用のボードがあるとより楽しめます。バックギャモンも5000年の歴史を誇るそうですね。
いずれにしても、知らなければ選べません。
こう考えてくると、小学生の「自主性」の正体が見えてきます。
(1)すでに持っている情報に基づき判断する
ゲームや料理のメニュー程度なら、簡単に判断できますし、仮に「知らない」料理であったとしても、説明を聞けば、それまでに知っている料理から類推することも可能です。
しかし、「中学受験をするか否か」「どの中学校を受験すべきか」「現在何の勉強をすることが中学受験を有利に進める戦略上正しいのか」などについて子どもが判断することは不可能です。
(2)周囲(親・教師)の言うことをなぞる
これは「自主性」とはいえません。大人の顔色をうかがっているだけです。
(3)ただのわがまま
子どもの自主性を尊重する=子どものわがままを放置する
こうなっている場合も多いですね。
ある生徒の実話です。
無理筋な受験を繰り返し、のきなみ不合格となってしまいました。理由はただ一つ、「子どもが受けたいといった中学」しか受験しなかったからです。子どもの志望理由も、「なんとなく素敵」レベルの理由でした。子どもの「自主性」を尊重し、親が責任を放棄したことによる悲劇だと思います。
こんな拙い「自主性」にまかせることが、いかに意味のないことなのか、わかるでしょう。
2.親の誘導が大事
子どもは親の心を映す鏡のようなものです。一番長い時を一緒に過ごす親の影響をうけて育っていきます。
あるご家庭は、両親が「手に職」系のお仕事をしており、仕事も順調でした。子どもは勉強については放置されて過ごしていたのです。「別に勉強なんかできなくても、何とでもなるから」と、自らの経験にもとづいて親は放任していたのですね。別にそのこと自体は悪いことだとは思いません。何もすべての小学生が中学受験レベルの勉強をする必要はないでしょう。しかし6年生の後半に、子どもが急に「中学受験して私立に行く!」と言い出したのです。どうも地元の公立中学の噂を耳にしたようなのです。「一貫校に行って好きなことをしていたい」というのが受験理由でした。実に幼稚な理由ですが、小学生なんてそんなものです。ご相談を受けた私は、勉強をしてこなかったその子でも受かりそうな学校の中から、何とか合いそうな良い学校を探してアドバイスしました。その子は見事に進学できました。
しかし残念なことに、そうやってせっかく進学できた学校を途中で退学しました。理由はやはり「全く勉強しなかった」ことにあります。また、親も「別に嫌なら勉強なんかしなくてもいい」という姿勢でした。これではもはや「教育ネグレクト」だと思います。
親が上手に、子どもの気質や能力を見極めながら、適切な進路に誘導してあげることが大切だと思います。
もちろんこれは「親の意思を無理やり子どもに押し付ける」こととは別次元です。