
子どもたちの記述答案を見ていると、眩暈がするほどひどいのです。
今回は、そんな彼らの記述答案についいて、いったいどのあたりが「ひどい」のかを整理します。
漢字を使わない
これが最も多い減点ポイントです。
Q:円安が日本にもたらす影響について100字以内で説明しなさい。
A:「ゆしゅつするしなもののねだんがたかくなるためゆしゅつにはふりになるしかいがいりょこうにもいきにくくなるそれにゆにゅうひんのねだんがあがるからいろいろなもののねだんがたかくなってせいかつなどがくるしくなる。」
生徒が書きそうな答案を作ってみましたが、私にはこれ以上無理でした。そもそも彼らは論理破綻した文章が得意ですので、こんな答案すら書けません。
それにしても、ひらがなだけの文章がこんなに読みにくいとは。一応漢字に直してみましょう。
「輸出する品物の値段が高くなるため輸出には不利になるし海外旅行にも行きにくくなるそれに輸入品の値段が上がるからいろいろな物の値段が高くなって生活などが苦しくなる。」
これでやっと何が書きたいのかがわかります。
ツッコミどころ満載の文章ですが、とりあえず「採点してもらえる俎上」に乗ることはできました。
この、「採点してもらえる俎上」に乗れるかどうかが、まず最初の関門なのです。
長年、サピックスの生徒の記述答案を見てきました。
記述答案の採点は、ある程度の「採点基準」を設けてから行います。そうしないと複数の教師の採点がぶれるからです。しかし中には「読めない&読む気が起きない」答案というものがあるのですね。文字が判読できない答案です。こうした答案に共通しているのは、「オールひらがな」であることです。それでもイトミミズが行進しているような答案をなんとか解読してみると、まあ内容も「箸にも棒にも掛からぬ」ものであるものばかりなのです。苦労して読解した時間が無駄になります。
これには理由があります。
記述答案を書くときの最大のポイントは、「読み手を意識」することにあります。テスト答案なら、読み手は「採点する教師」になります。読み手に読んでもらえる答案であることが大前提です。
その大前提を無視している答案が、良い答案であるはずがないのですね。
つまり、「allひらがな」答案というのは、そもそも「採点してもらう気がない」答案ということになります。
そこで、そうした「採点してもらう気がない」答案、つまり「allひらがな」答案については、読解しないで×をつけることにしていました。
こちらが一所懸命苦労して読解したところで、結局×になる答案でしかないからです。
実際の中学受験の採点が、このような厳しめの「赤嶺スタイル」で行われているかどうかはわかりません。学校にもよるのでしょう。しかし、短時間で大量の採点を行わなければならない(しかも年々合格発表時間は早まっている)状況を考えれば、採点してもらえずに×がついている可能性はけっこう高いのではないかと思っています。
こうした「allひらがな」答案を書く子たちというのは、「漢字がわからないので書けない」ケースよりも、「漢字で書ける字なのに書かない」場合がほとんどです。
おそらくは「漢字で書くのが面倒だからひらがなでいいや」と考えているのでしょう。
たしかにそんな生徒、欲しい中学校はありません。
「うちの子は字が汚くて」
「ちゃんと漢字を使いなさいっていつも言っているのですが」
笑顔でこんなことを言っている場合ではないのです。
お子さんの答案、そもそも「採点の俎上」に乗ることすらできていないのかもしれないのです。
句読点が打てない
「、(読点)」と「。(句点)」がまともに使えない生徒がとても多いのです。
さすがに最後の「。(句点)」くらいは使えるかというと、それすら省略する答案が多数です。まして「、(読点)」がきちんと使える答案は皆無といいたくなるくらい少ないのです。
その理由は簡単です。
頭の中が整理されていない
句読点の使い方を知らない
読み手に読みやすくしてあげる気がない
まず、頭の中の整理というのは、論理的な思考のことですね。何をどう言う順でどのように書くか、瞬時に判断して頭の中で文章構成を組み立てる能力のことです。
例として出した「円安の影響」であれば、輸出に与える影響と輸入に与える影響の二つに分けて書くことを瞬時に考え、それなら50字程度の2文構成が適切であることを判断できることが必須です。
それができないので、ダラダラとひとつながりの文章を書き、句読点を使わないのです。
句読点のルールもよく知らないのでしょう。
句点のルールはシンプルです。文の最後に「。」を打つだけですので。
しかし読点が使えないようですね。
読点については、大人である我々も厳密なルールなど知らずに使っています。
なんとなくここに打つかな、そんな調子で書いているのです。それが可能なのは、大量の文章を読んできた経験があるからです。
一応のルールはこうなっています。
・並列関係の語句の後、誤読を防ぐために打つ、主語の後に打つ、接続後の後に打つ、感動詞の後に打つ、などでしょうか。
こういう細かいルールが大好物の方は、文化庁のHPから、「くぎり符号の使ひ方」という項目をご覧ください。そこには、文部省が1946年(!)に定めたルールが書かれています。
実に面倒くさいです。
文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 参考資料
ただし、この文書には良いことも書かれています。
「くぎり符号の適用は、・・・・文の論理的なすぢみちを乱さない範囲内で自由に加減し・・・・読者の年齢や知識の程度の応じて、その適用について手心を加へるべきである。」
読みやすければそれでOK!
言ってしまえばそういうことになりますね。
記述の力をつけるというのは、形式を学ぶことではありません。
それでは順番が逆になってしまいます。
読みやすい文章を書くために、さまざまなルールが存在するのです。
そこのところを間違えてはいけません。
読み手に対する思いやりが大事ということなんですね。
つまり、句読点をきちんと使っていない(or使えないor使う気が無い)文章は、この「読み手に対する思いやり」が欠如しているということになります。
主語が曖昧
日本語という言語の特徴として、「主語が省略されがち」であることがあげられるでしょう。
「昨日はありがとう。すごく楽しかった。また行きたいな。あ、そういえば、あれ、見つかった? ずっと探してたでしょ。もしよかったら、今度貸してほしいな。楽しみにしてるね。」
この程度の文章、私たちは日常的に書いていますね。
しかし、これを英文に直そうとすると一苦労です。
“Thanks for yesterday. I had a really great time. I'd love to go again. Oh, by the way, did you find that thing? You've been looking for it forever, right? If you don't mind, I'd love to borrow it next time. I'm looking forward to it.”
こんなかんじかな(私は英語が専門ではないので拙い翻訳で恐縮です)。
「I」と「You」を補ってあげなければ英語としては通用しません。
しかし逆に、「私」と「あなた」を多用すると、今度は日本語として不自然になってしまいます。
「昨日はありがとう。私はすごく楽しかった。私はまた行きたいな。あ、そうえいえば、あなたが探していた物は見つかった? あなたはそれをずっと探してたでしょ。もしあなたがよかったら、こんど私に貸してほしいな。私はそれを楽しみにしているね。」
くどいですね。
しかし、記述答案にはこれくらいのくどさは必要です。
主語と述語の関係を意識して、的確に主語を使うようにするだけで、だいぶ文章は読みやすくなるのです。
記述力向上の第一歩として、「短文作成メソッド」についての本を出版しました。
ぜひお読みください。
輸出商品の価格競争力が高まり企業の利益が増える一方、燃料や食料品などの輸入コストが上昇して国内物価が上がる。その結果、家計の負担が増えたりインバウンド需要で観光業が活性化したりする影響があある。
