
前回書ききれなかったので続きです。
SAPIX・日能研・四谷大塚・早稲田アカデミー・グノーブルを比較検討します。
※一つの塾を持ち上げたり貶めたりしないようニュートラルな立場を心がけたのですが、どうしても古巣のSAPIXに甘くなってしまうことはご容赦ください。そこで頑張っている元同僚・元部下たちの顔が浮かんでしまうもので。
客観的な指標
塾を比較検討する際に参考になる客観的な指標を考えます。
(1)合格実績
これは前回書きました。ただし塾によっては客観的な指標とはいいがたいことにも注意が必要です。まあ目安程度といったところでしょうか。今回比較する五大塾の主要校実績はこうなっています。
これらの学校を取り上げた理由は、2/1のみの1回入試の学校で、偏差値表上位の学校だからです。渋谷渋谷や豊島岡等多くの学校が複数回入試を行っていますので、塾の比較には使いづらいのです。(ただし2026はサンデーショックの年で、女子学院が2日に移動したので数字が乱れています)

(2)生徒数
これについては、卒業生数を公表しているのはSAPIXとグノーブルだけです。グノーブルについては知りませんが、SAPIXは各校舎毎に合格者数をまとめたチラシを作っており、そこには校舎の卒業生数も書かれています。通う分には、近くの校舎の生徒数やクラスの人数だけがわかれば用は足りるのですが、模試の偏差値データを考えると、ある程度の全体人数は必要です。統計的な話は置いておいても、1000名くらいいないと偏差値データの信ぴょう性が高まらないと思います。
(3)校舎数(一都三県)
◆SAPIX・・・46校
◆日能研・・・96校
◆四谷大塚(直営校)・・・35校
◆グノーブル・・・14校
◆早稲田アカデミー・・・133校
(すいません、早稲田アカデミーはたくさんありすぎて数え間違えているかもしれません。)
これを見ると、日能研と早稲田アカデミーの校舎数の多さが際立っています。たしかに、どの駅にもこのふたつの塾は見かけます。
日能研は神奈川が本拠地の塾です。二つの別法人が「日能研」ブランドを名乗っています。本社所在地はそれぞれ日能研「本部」が新横浜、「関東」がセンター北ですね。いわゆる「本部系」と「関東系」では若干指導方針や雰囲気が異なるのですが、気にしない方が大半でしょう。例えば、横浜市営地下鉄「センター北」駅前には「関東系」の本部校舎が、「センター南」駅前には「本部系」の校舎がそれぞれあります。両駅は歩いて往復できる距離ですので、紛らわしいですね。
日能研については以前こうした記事を書いています。
早稲田アカデミーは、もともと「高校受験」に強みを持った塾だったのです。公立中学校の生徒の高校受験は公立高校進学が主流ですので、「遠くの塾」に電車を乗り継いでいくよりは、歩いていける近所の塾が好まれる傾向があるのです。そのために、面の展開がもとめられますね。
こうして多数展開した校舎で、高校受験に合わせて中学受験の生徒も集めているので、校舎数が多くなるのでしょう。
これは、通う立場からするとありがたい話です。中学受験は時間との戦いですので、少しでも通いやすい近所の塾が「正義」です。いくら評判の良い塾であっても、電車に乗って通塾時間をかけるのでは時間がもったいなさすぎます。その点、日能研や早稲田アカデミーなら、歩いて行ける範囲に校舎がある可能性が高くなりますね。
ただし、個人的に一つだけ謎があります。
SAPIXで講師の採用と研修をしていた立場から言うと、「良い先生」の確保は本当に大変なのです。学力の高い人間を採用し、研修し、さらに現場で指導していくのは難しいのです。これが校舎展開の足かせというかボトルネックとなるのです。
他の塾で10年以上の経験がある先生や、あるいは長年中学や高校の先生をやっていた人もずいぶん応募してきましたが、多くは採用にいたりませんでした。「学力が低い」ことが理由の場合が多かったですね。入試問題が解けないことにはお話になりませんので。もちろん入試問題が解けるだけでは足りません。開成や麻布、筑駒や桜蔭を目指す生徒の指導ができるのは、もっと次元の高い話になります。
100校舎をこえる校舎展開をするのに、どうやって4科目の有能な先生を確保しているのか、ぜひ一度聞いてみたいものですね。
(4)費用
これも大切な「客観的」な数字です。
ただし、授業料等の費用を全てHPで公表している塾は実は多くはありません。
また、基本的な授業料は公表していたとしても、その他の教材・テスト・オプション講座等、結局は必要となる費用が別途必要な場合も多いのです。
HPでわかる範囲で調べてみます。小6の比較です。
◆早稲田アカデミー
・入会金 22000円
・授業料 54900円(月)
・別途年会費2,900円/月・教材費・必修テスト代・前期土曜YT講座代が必要となります。
これに、さまざまな特別講座が加わります。
◆SAPIX
・入室金 33000円
・授業料 66000円
基本料金はこれだけです。毎月のテスト代およびテキスト代も含まれています。
このほかに、夏期講習や、6年9月以降に実施される日曜特訓の費用は別途かかります。SAPIXの料金体系はわかりやすいと思います。「オプション講座」はいっさいありませんし、毎回の授業で使われるテキスト以外に必要な教材は、「歴史資料集」「理科資料集」「地図帳」「漢字本」くらいです。これらは一度買えば最後まで使えます。
◆日能研
・入会金 22000円
・授業料 49060円(月)
このほか、テスト代が半年で101200円、教材費が半年で47916円となっています。
一見「最安値」に見えますが、オプション講座費用等がけっこう必要だとも聞きました。
◆グノーブル
・入室金 16500円
・授業料 66000円(月)
テキスト代および毎月のテスト代は含まれています。特別講習は別途かかります。
◆四谷大塚
・授業料 67650円(前期)、90750円(後期)
このほかに教材費、テスト代、特別講習費は別途必要です。
HPからわかるのはこの程度です。
実際に必要な金額については直接聞いてみるほかありませんが、おそらく年間に必要な金額は大差ないと思います。
高額なら生徒が逃げますし、安いと赤字になってしまいます。各塾が、横をにらみながら考えた費用ですから、だいたい同じと考えてよいでしょう6年生なら、年間150万円程度になるでしょう。
塾で最も大きいのが「人件費」です。したがって授業料を安くするためには二つしか方法がありません。1度の授業を行う教室の人数を増やすのか、あるいは「安い」報酬でも働く人を雇うのか。ただし、40名を超えるような集団指導はもはや廃れました。それだけの人数を指導できる力量を持つ教師がいないというのも理由ですが、何より消費者がそれを求めていません。となると、授業料を下げるためには、単価の安い講師を雇うしかないのですが、この募集時の時給は、教師の能力に比例します。家庭教師だって東大生と〇〇大生では全く違いますから、同じことです。
各塾の募集告知を見てみます。非常勤講師(学生中心)の時給はどうなっているでしょうか。
◆SAPIX 3000円
◆グノーブル 3200円
◆早稲田アカデミー 2500円
◆四谷大塚 3000円
◆日能研 3060円(ただし大卒以上)
参考までに、大手個別指導塾の講師募集を見ると、1600円~となっていました。授業料は個別指導ですから集団指導とはくらべものにならないほど高額なはずですが、公表されていないのでよくわかりません。
客観的な数字で比較しようとしても、これくらいしか材料がありません。これではどの塾にするか決められないですね。
主観的な選び方
これは、主観ですのでまさに「人による」としか言えません。
また、担当する教師の個性によるところも大きいでしょう。
同じ教師でも、生徒・保護者による受け止め方も千差万別でしょうし、教師自身も成長・変化します。
まずは直接足を運び、教室責任者の話を聞いてみるのが一番です。
私自身の意見としては、自分がよく知っているSAPIXを一番に推したいところです。教師がテキスト・テストを全て自分たちで作っています。それができるレベルの教師が揃っているといってもよいでしょう。巷でいわれるように最難関校受験生だけの方を見ている塾では決してありません。対応が冷たい印象をもたれがちですが、そんなこともありません。ご家庭からアプローチすれば、きちんと応えてくれる塾です。
ただし、家庭学習をまったくしないご家庭には向きません。託児所がわりにとりあえず通わせるという塾でもありません。目標をもってきちんと努力をする、あるいはそのつもりがあるご家庭なら、志望校によらず向く塾だと思います。さらに、わが子(&親)を「洗脳」してほしいご家庭にも向きません。このあたりが「クール」といわれる所以でしょう。
グノーブルについてはよくわかりませんが、SAPIXと同じスタイルを踏襲しているとすれば、よいのかもしれません。立地はSAPIXがある駅にだけあります。それならSAPIXではなくあえてグノーブルを選ぶ理由もなさそうですが、これも実際に足を運んでみて、納得した方を選べばよいでしょう。
四谷大塚については、予習スタイルを考えると、自学自習が可能な優秀な生徒にこそフィットするスタイルの塾だと思います。しかし残念なことに、そうした生徒が多く集まっていないことは、合格実績に表れています。HPや広報についても、もっと堅実な塾だったはずですが、最近はずいぶん「派手(品がない?)」になりましたね。もしかして東進の傘下になったことが影響しているのかもしれません。
それでも予習シリーズはよくできた教材ですし、毎週の計画的な学習スタイルが可能で、かつ週テストの点数が高い生徒には向くでしょう。この週テストで点が取れない生徒の場合は、その振り返りの時間が取れないまま、先へ先へとカリキュラムが進むので、あまり向かないと思うのです。
もし家の近くに中小塾しかない場合は、四谷大塚の提携塾を選ぶというのも悪くない考え方だと思います。
日能研は、万人に向く塾だと思っています。迷ったらとりあえず日能研(か四谷大塚提携塾)を選んでおけば、そう大きく外さないと思います。教材体系もしっかりしていますし、問題集等も多く出版しています。
ただし、本気で最難関校を目指す場合には物足りないかもしれません。もっとも日能研は校舎による温度差が大きいとも聞きました。実際に足を運ばないとわからないでしょう。
早稲田アカデミーについては、私には良さがあまりよくわからないのです。体育会系、熱血系とよく聞きますが、気合と勢いでいけるほど中学受験は甘い世界ではありません。無駄を排した緻密な指導こそが重要だというのが私の考えです。早稲田アカデミーの「夏期合宿」の動画を見ると、生徒も教師も「合格」ハチマキを締めて気勢をあげている様子がありました。SAPIXとは真逆のスタイルですが、好きな人もいるのでしょう。
また、頻繁にご家庭に電話がくる「熱心で親身な」塾だとも聞くのですが、そんな時間が教師にあるということも信じられません。教材作成・テスト作成・予習・入試問題研究等で、教師は忙しいのです。それをやらないと授業のクオリティは維持できませんから。この塾には残業を厭わぬ先生が多いのでしょうか?
それでも難関校への合格実績を伸ばしていることは事実です。実際に難関校に進学した生徒に聞くと、同級生達の出身塾は「サピが5、早稲アカが3、四谷大塚と日能研が1,1」くらいだと言っていました。SAPIX等他の塾に通いながら、早稲アカの「NN」だけには通ったという子もいるようですね。
今の早稲田アカデミーは、完全にSAPIXを敵として実績を超えることを目標としています。その「目標」が、通う生徒にとってプラスなのかどうかはわかりません。SAPIXも創業からしばらくは、古巣の「TAP」を抜くことを目標としていた時期がありました。その甲斐あってかどうか「TAP」は消えましたが。
SAPIXのようなクールな塾を好まない方にはよいのかもしれません。
五大塾のレベルになると、どの塾も合格へのスキルやシステムを持っています。あとはそうしたスタイルが子どもに合うかどうかで決めるしかないのです。
それでも迷った場合には、この3点を考えるとよいと思います。
◆家からの距離
◆拘束時間(の少なさ)
◆まじめさ(誠実さ)
近さは正義です。通塾の無駄を1分でも削ることは大切です。そして、拘束時間が短いこともまた正義です。家でじっくりと復習(or予習)をする時間が必要ですし、計算練習や暗記も家庭学習の領分です。さらに6年後半になると過去問演習に自宅で取り組まなくてはなりません。拘束時間が長いとこうした学習の妨げになるのです。
さらに、最後に大切なのは、塾&教師のまじめさ(誠実さ)だと思います。たとえば生徒からの質問に即答できないとき、適当な嘘でごまかそうとするのか、それとも「わからない」と正直に答えてから、きちんと調べて生徒に教えようとするのか。志望校についても、校舎の実績のために「無理筋」なチャレンジを煽るのか、それとも本当にその生徒に合った学校を考えようとするのか。
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