
(日本国憲法の正式な英語表記はThe Constitution of Japanです)
今日は5月3日です。つまり「憲法記念日」です。
毎年この日の授業では、憲法について生徒に考えさせるのが恒例です。
そこで、いつもの3人組に登場してもらい、憲法について考えてもらいましょう。
例によって登場人物は麻布志望の3人組、タロウ・ワタル・ゲンタ(仮名)です。実際の生徒・授業ではなく、過去の授業を再構成したものです。
憲法の歴史
タロウ:先生、今日は何の日か知ってる?
私:世界報道自由デーだな。
ワタル:なにそれ?
私:1991年のユネスコ総会でウィントフック宣言というのが採択されたんだね。これはアフリカの独立した多元的な報道の促進に関する宣言で、それを記念して決められたんだ。表現の自由は民主主義に不可欠だからな。
タロウ:ふうん。いや、そうじゃなくて、今日はもっと大切な日だよね?
ゲンタ:リカちゃんの誕生日!
タロウ:リカちゃん?
ゲンタ:妹が持っているんだよ、人形。
ワタル:ゴミの日!
ゲンタ:それはわかりやすいね。
タロウ:もうみんなでボケるのやめようよ。憲法記念日って言ってよ。
私:ああ、ポーランドの憲法記念日だな。
タロウ:本当?
私:1791年の5/3に採択されたことを記念しているんだよ。これは世界でも2番目だったようだ。
タロウ:へえ。
ワタル:そう聞くと、1番目の憲法が気になるよね。
私:どこだと思う?
ゲンタ:ドイツじゃない? ワイマール憲法ってあったよね。
私:ワイマール憲法は1919年だ。社会権を規定した最初の憲法だが。
タロウ:フランスじゃないの? ほら、フランス革命があったし。
私:1789年のフランス革命勃発直後に出されたのがフランス人権宣言だった。それを受けて1791年にフランス憲法ができたんだ。
タロウ:ほら! ポーランドと同じ年だけど、こっちが早いよね?
私:惜しいけれど、フランス憲法は9月3日なんだ。
ワタル:アメリカ合衆国憲法かなあ。民主主義先進国のイメージがあるし。
私:アメリカ合衆国憲法は1787年9月17日に作成された。
ワタル:やった!これが世界最初だね!
タロウ:あれ? アメリカ合衆国憲法って、フランス人権宣言の影響を受けたってどこかで聞いた気がするんだけどなあ。それじゃあ逆になっちゃうし。
私:よく知ってたね。実は作られた当初は、人権に関する規定が少なかったんだよ。そこで1791年に、修正第1条から第10条までが「権利章典」として追加された。フランス人権宣言の影響もあったんだね。
ゲンタ:その権利章典の10か条ってどんなの?
私:やはり気になるか。少し細かいけれど、だいたいこんな内容だ。
憲法修正1条:国教樹立の禁止。信教・言論出版の自由、集会・結社の自由、請願権を保障
憲法修正2条:人民が武器を保有し携帯する権利を保障
憲法修正3条:個人の住居に軍隊が無断で舎営することを禁止
憲法修正4条:不当逮捕、不当捜査の禁止
憲法修正5条:大陪審の告発、起訴なしには犯罪の責任を問われない
憲法修正6条:陪審裁判、公開裁判の原則
憲法修正7条:民事裁判上の諸権利の保障
憲法修正8条:過大な保釈金、残虐な刑罰の禁止
憲法修正9条:連邦政府による人権侵害の防止
憲法修正10条:連邦政府に付与されていない権限は各州または国民自身にある
ゲンタ:なんとなくしかわからないけれど、日本国憲法にも似ているね。
ワタル:そもそも日本国憲法はアメリカ合衆国憲法を参考にして作られたから、それは似るのは当たり前だよ。
タロウ:ちょっと待って! 修正2条って怖くない?
ゲンタ:うわ、本当だ! 武器を保有して携帯する権利っていったい何?
ワタル:アメリカでは銃を持つ権利が憲法で保障されているって聞いて、てっきり嘘だと思ってたけど、本当なんだね!
私:ああ、この条文は、日本人にはちょっと理解しがたいよな。もともとアメリカ合衆国という国は、地域ごとの独立心が旺盛なんだね。そこで、連邦政府の権力濫用を防いで自治を守るために銃を所持した民兵が必要だと考えたんだ。また、独立戦争直後のアメリカは混乱していたし、奴隷の暴動もあったので、自己防衛のためにも銃が必要だった。
タロウ:だから銃による犯罪が絶えないんだね。僕、平和な日本に住んでいてよかったよ。
ワタル:そういえば、もっと昔にイギリスに憲法があったって聞いたことがあるよ。
私:ああ、もしかして1215年に制定されたマグナカルタのことかな。
ワタル:そう、それ! 1215年っていえば鎌倉時代になったばかりじゃない! すごい古いよね。
私:当時のイギリス王のジョンが、フランスと戦争するために、都市と諸侯に莫大な負担を強いていたんだね。それに反発して作られたんだ。戦いを強行して負けて帰ってきたジョン王に反発して、人々がロンドンを制圧してね。それでジョン王も署名するしかなくなったんだ。そんな経緯だったから、国王の権力を制限するといった内容になってるよ。憲法というわけではないが、「法による支配」を提唱したんだ。日本語では「大憲章」という。
ゲンタ:つまり、国王の絶大な権力をルールで縛るってこと?
私:その通り。
タロウ:きっとそのジョン王って人は嫌だっただろうね。
ワタル:自分の権力を制限されて喜ぶ王様なんていないものね。
憲法の役割
タロウ:結局憲法って何なの?
ワタル:そんなの決まってるよ。法律の上の法律だろ?何ていうか、スーパー法律みたいな?
私:まあ間違ってはいないが。憲法の意義は3つに整理できるんだ。まず1つ目が、国王の権力を縛る役割。
ゲンタ:マグナカルタみたいに?
私:その通り。ヨーロッパでは国王の権力が絶大だったからな。そこで、貴族階級や有力な市民たちによって、権力を制限する目的で憲法が必要だった。だから、国王や、国を動かす人たちの権力を縛るというのが憲法の大切な役割なんだ。
タロウ:あとは人権だよね。日本国憲法にも基本的人権についていろいろ書いてあるし。
私:その通りだ。人権を保障することが憲法の大切な意義なんだね。
タロウ:あと一つが、僕が言ったやつだよね。法律の上の法律。
私:国の最高の決まりとして、政治の仕組みや法律の基本の考えを定めている。まとめると、最高法規、人権保障、そして国家権力の制限、この3つが憲法の意義ということになる。
憲法の改正
ワタル:日本国憲法って改正しなくちゃならないほどダメなの?
私:なんでそう思う?
ワタル:だって最近憲法改正の話題をよく聞くから。
私:ワタルはどう思う?
ワタル:今ちょうど憲法を勉強しているところだけど、変えなくてはならないとは思わないんだけどな。
タロウ:でも、人権はもっと充実させてもいい気がするよ。新しい人権とかさ。
ゲンタ:国会や内閣のしくみについても、もっと国民の意見が反映されるような仕組みになってもいいよね。いっそのことアメリカの大統領制みたいにしたらどうかな。
タロウ:ええ? それは嫌だよ。だって、大統領の権力が強すぎると、戦争を勝手に始めたりするじゃないか。
ワタル:確かに。あ、だから大統領の暴走を抑えるためにも憲法が重要なんだね。
タロウ:アメリカ大統領が憲法違反で裁判になってるってニュースを見たよ。
私:最近でいえば、2月に米連邦最高裁がトランプ大統領が発動した「相互関税」を、議会の権限を侵す「憲法違反」と判決したな。
タロウ:それって、民主主義を無視したってこと?
私:そうも言えるな。
タロウ:そうか。憲法って国王や大統領みたいな人たちにとってみれば、うっとうしい鎖みたいなものだけど、だからこそ大切なんだね。
ワタル:あとは、前々から思ってたんだけど、選挙権だって18歳じゃなくて、15歳くらいにしてもいいと思うな。そうすれば、自分たちの未来に関わることなんだから、みんなもっと真剣に勉強するようになるし、投票率だって上がると思うんだ。
タロウ:それは憲法じゃなくて、公職選挙法じゃないか。
ワタル:そうだったっけ。
私:そうやってみんなで議論して考えることが大切なんだね。
タロウ:先生はどう思うの?
私:憲法改正についてか? さっき憲法の3つの意義について学んだよね。まあ、人権保障をもっと充実させる議論なら賛成だ。最高法規の役割を考えて、国会や内閣の仕組みについて議論してもいいと思う。国家権力を制限する役割については、憲法の歴史を考えると、緩める方向よりもっと強化する方向の議論だったら賛成かな。いずれにしても、国民みんなが、自分のことと捉えて徹底的に議論する必要があると思うよ。だからこそ、変えるかどうか議論する前に、現行の憲法を一度しっかり勉強する必要があるよな。
一同:はあい。
昨年は、祝日としての憲法記念日について考察しました。
ロジカルライティングについての本も書いています。
