元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】五大塾の特徴と選び方 合格実績編

すでにどちらかの塾に「満足して」通われている方は読む必要の無い記事です。

現在通われている塾に「納得していない」方や、新たに塾を探している方に向けた記事となります。

※一つの塾を持ち上げたり貶めたりしないようニュートラルな立場を心がけたのですが、どうしても古巣のSAPIXに甘くなってしまうことはご容赦ください。そこで頑張っている元同僚・元部下たちの顔が浮かんでしまうもので。

五大塾とは?

別に「五大塾」が確定しているわけではありませんが、「難関校への合格実績が高い塾」を5つピックアップしてみただけです。

すると、SAPIX・早稲田アカデミー・日能研・四谷大塚の名前が目立ちます。従来なら「四大塾」として考えていたのですが、最近はグノーブルの数字も目立つようになりました。そこで、「五大塾」として考えることにいたしましょう。

 

客観的な指標

私見が入る余地のない、客観的な指標を考えます。

(1)合格実績

 まず誰もが気にするのが合格実績なのは間違いありません。希望している中学への合格実績が高い塾がいいに決まっていますから。

「合格実績が高い」ことは、以下の利点を意味するのです。

◆同じ中学を目指す仲間(ライバル)が多い

たとえば開成中学を目指すとして、通っている塾に一人も開成志望者がいない環境と、開成志望者が10人いる環境では、どう考えても後者のほうがいいのは言うまでもありません。互いに争い、励まし合いながらの受験勉強となるからです。

田園都市線沿線のとある校舎の室長をしていた頃、その校舎の優秀な男子の受験パターンはだいたい決まっていました。

2/1:駒東

2/2:栄光or聖光

2/3:筑駒

筑駒が第一志望なのですね。そして1日は同じ駅(池尻大橋)を利用する駒東を受験するのです。乗り換えなしで通学できますのでどうしてもこのパターンになるのです。どんなに優秀な子でも、なかなか開成は志望しづらいようでした。

しかし、そこに関西から引っ越してきた子が入ってきたのです。彼は「絶対開成!」志望でした。どうやらもともとは灘中学を目指して頑張っていたのですが、首都圏に転居することになってしまったのです。塾の先生に、「東京で灘に匹敵する学校は開成だ」と聞いたのが志望動機でした。

すると、今まで「1日は駒東」と決めていた子が、みな「開成」志望へと変わっていったのです。その年の受験は、開成・筑駒ともに合格者が続出する「当たり年」となったのでした。

子ども、とくに男子は単純ですからね。周囲の影響を受けやすいのです。

◆教師にノウハウが蓄積する

おそらくこれが最大の利点です。とくに最難関校を目指す場合には必須の条件ともいえるでしょう。標準レベルの入試問題でコンスタントに8割とれる学力があれば、だいたいの中学校の合格は見えてきます。しかし、最難関校ともなるとそれだけでは不足します。より難易度の高い問題を解く力、癖のある問題への対処法、高度な思考力や記述力、学校の求める生徒像の把握、そうした要素が必要だからです。こればかりは、実際にその学校を志望する生徒を指導することでのみ身につくものなのです。

私がSAPIXの講師採用を担当していたころ、他塾のベテランを名乗る応募者に対して、難関校の入試問題を解いてもらってこう質問することがありました。

「今解いてもらった入試問題はどこの学校のものだかわかりますか?」

信じられないことに、即答できる応募者がほとんどいないのです。「そのレベルの学校を受験する生徒を教えていなかったので」と言い訳するのですからあきれてしまいます。

まあ、教師とて「仕事」として給料分の働きをするだけですので、自分の生徒に志望者のいない学校の入試問題まで解いている余裕などないのでしょうけれど。

 

※合格実績について

各塾が公表している「合格実績」がどこまで信ぴょう性が高いものなのかについては、なかなか難しいものがあるのです。

二つ以上の塾を掛け持ちで通う生徒の場合、どうしても両方の塾で合格実績にカウントされてしまうという問題があります。たとえば受験間近の3か月間だけ、毎週どこかの塾の「特別講座」に通っただけで、その塾の内部生として実績にカウントされてしまいます。なかにはそれを狙ってそうした「特別講座」に他塾の優秀者を取り込むことに注力する塾まで出てくる始末です。一つの塾にだけ通う「生粋の内部生」のみの実績を数えたいところですが、塾としても、生徒が他塾をかけもちで通っているのかどうかまでは調べていませんので。

また、複数の塾を「グループ化」している塾が、グループの実績を合算して広告に載せているのもよく見かけますね。

かつては、一度無料テストを受けただけの生徒に合格発表後に電話をかけて、「うちの生徒として実績に載せさせてください」と依頼する最低な塾までありました。その後そうした行為はさすがになくなったようですが。

「公益社団法人 全国学習塾協会」が定めた基準というものも一応あります。

受験直前の6か月間のいずれかに①「在籍」があり、かつ②同時期に受講契約に基づく30時間以上の「受講」の実態がある生徒、あるいは継続して3か月以上の「受講」の実態がある生徒を、合格実績をカウントする対象の生徒とする。

こうなっています。

たった30時間の受講で合格実績にカウントされます。

また、「在籍」「受講」の定義はこうなっています。

「在籍」とは、入塾申込書等の契約書面の取り交わしがあり、有料の講座への料金の納入が証明できることを指す。体験授業や模試受験のみ等の生徒はカウントの対象としない。
「受講」とは、対面授業への出席やwebを介してのオンライン受講、映像の視聴等を指す。在籍のみで受講実態が無い生徒はカウントの対象としない。

「映像の視聴」が受講となるのは今時ともいえますが、3か月間、毎週1時間だけ「映像を視聴」するだけでよいのですね。

いずれにしても、何等かの基準を提示したのは評価できます。ただし、この「全国学習塾協会」には、中小塾が多く加盟しているのですが、会員リストで私の知っている(つまり大手)塾の名前は、「栄光ゼミナール」「ena」「湘南ゼミナール」「明光義塾」「スクールIE」「中萬学院」、そして「早稲田アカデミー」しかありませんでした。日能研も四谷大塚もSAPIXも未加盟です。

 

五大塾のHP合格実績の「但し書き」を見てみます。

 

◆早稲田アカデミー

公益社団法人全国学習塾協会が定める基準に従って集計しています。集計対象は、早稲田アカデミーグループに塾生として正規の入塾手続きを行い、授業に参加した生徒です。

一見すると「公明正大」な姿勢に見えますね。

「早稲田アカデミーグループ」のうち、中学受験に関連しているブランドはこんなところです。

「水戸アカデミー」「QUARD(クオード)」WASEDA ACADEMY UK CO.,LTD・WASEDA ACADEMY USA CO.,LTD.「帰国生専門 LOGOS AKADEMEIA」「難関中高受験専門塾

ExiV」「SPICA」「早稲田アカデミー個別進学館」

これらの塾の実績が加算されています。

 

だいぶ以前の話ですが、私が教えていた優秀な生徒が、この塾の「無料公開模試」を受けたところ、勧誘が熱心だったと聞きました。

「優秀なお子様のために、個別指導のプロを集めたタスクフォースをつくります。お子さんのもよりの校舎で個別指導しますので入りませんか?」

受験も間近な時期にこう言われると母親としても気持ちが揺らぎます。しかも格安な費用を提案されたのです。

もちろん私としては全力で反対しました。受験までのプログラムはすでに動いており、この子はそれを順調にこなすことで成績をあげてきました。残り2か月を切ったタイミングで「他の塾の個別指導」を受けることは、この生徒にとってマイナスになると判断したからです。指導者(塾)が変われば、指導も異なります。例えば私が「これは不要」と切り捨てている知識を「これは大切だ!」と教えられることも、あるいはその逆もあります。どんな角度からの指導でも器用に吸収できる生徒ではありませんでしたから。

残念なことに、お母様は魅力的な提案をあきらめきれなかったようでした。「せっかくご提案いただけたので」となってしまったのでした。

しかし、数日後に、やはり断ったと連絡があったのです。子ども本人が、「赤嶺先生が反対なら私は行かない!」と言ったとか。それを聞いたときは思わず泣きそうになりましたね。

ちなみにこの生徒は第一志望の最難関校に合格しました。

 

◆四谷大塚

合格者数は、『四谷大塚ネットワーク(※)』に継続して在籍し、四谷大塚が開発した「予習シリーズ:をはじめとする教材および「週テスト」等の教育サービスを活用して学習した生徒を対象として集計しています。講習生や公開テスト生は一切含んでいません。
(※)『四谷大塚ネットワーク』とは、(1)四谷大塚直営(四谷大塚直営校舎、通信教育「進学くらぶ」)、(2)四谷大塚YTnet(主に首都圏の提携塾)、(3)四谷大塚NET(主に首都圏以外の提携塾)のネットワークです。

四谷大塚は、1950年代設立の老舗、いわば中学受験を切り開いてきたパイオニアです。当初の基本スタイルは、「予習シリーズ」で自宅学習→日曜日にテストを受ける、でした。授業はありません。テスト後の1時間程度のワンポイント解説授業だけです。

やがて、自宅学習ができない生徒のために、「準拠塾」が雨後の筍のごとく乱立します。現在では、予習シリーズ&週テストを導入した多数の「提携塾」と「直営教室」があります。自前で教材体系やテスト体系を構築できない中小塾が無数に加盟しています。大手では、「臨海セミナー」と「早稲田アカデミー」が提携塾となっています。

 

普通、「四谷大塚に通う」といえば、「四谷大塚直営教室に通う」ことを意味しますので、直営教室のみの合格実績をみないことにはこの塾の「実績」はわからないのです。

 

◆日能研

HPのどこにも、上記のような「但し書き」が見当たりませんでした。

ただ、そのことで日能研の合格実績の信ぴょう性が揺らぐということはありません。個人的には「きちんと集計」していると思っています。

・1名合格の学校まで公表

・公表スピードが速い

このあたりが理由です。

 

◆SAPIX

 第37期 在籍者数 5969名 (2026年3月23日現在 )
※ サピックス小学部では、内部生手続きを行い、継続的かつ2026年1月まで在籍した生徒のみを合格実績として掲載しております。テスト生や各種講習生などは、実績に含んでおりません。

一般的な但し書きですね。ただし注目すべきは「在籍者数」を公表しているところです。

塾の規模が大きくなれば実績も高くなります。塾としては在籍者を公表したくないところも多いのです。あるいは、提携塾・グループ塾の生徒数を合算すると大きくなりすぎるのが理由かもしれません。

SAPIXでは、創業以来の方針として、「在籍者数」と「合格実績は1名合格の学校まで公表」を続けています。内部にずっといた私だからわかるのですが、この塾の実績は嘘偽りが無い正直な数字です。

急成長した塾ですので、敵?も多かったのです。「SAPIXは実績を水増ししている」などといった誹謗中傷と戦うためにも、合格実績は正直にカウントすることが重要でした。その姿勢は今でも変わりません。個別指導ブランドの「プリバート」の数字も合算していません。

 

◆グノーブル

ご存じの方も多いと思いますが、グノーブルはSAPIXから分離独立して作られた塾です。したがって復習スタイルをはじめとした指導方針は酷似しています。

Gnobleグループの内部生として手続きを行い、受験直前期まで継続的に在籍し、授業を受講した生徒のみを合格実績として掲載しております。

こちらもSAPIXと同様に、在籍者数を公表しています。

「グノーブルグループ」というのは、「個別指導愚のリンク」のことでしょう。そちらの数字も合算しているということなのだと思います。

たとえば開成中のグノーブル(グループ)の実績は23名ですが、個別指導グノリンクの実績は12名となっています。ただし、この12名が、個別指導だけを受講していた生徒なのか、それとも集団指導のグノーブルにも通っていた生徒なのかは不明です。グノーブルに通いながら、算数だけグノリンクも併用した、そんな生徒が多そうな気もしますので、さほど目くじらを立てるほどでもないでしょう。

 

合格実績比較

塾実績

各塾が公表している数字をまとめただけです。(四谷大塚は直営校の実績)

生徒数については、サピックスとグノーブルだけが公表していますが、他の3塾は不明です。おそらく、日能研>早稲田アカデミー>SAPIX>四谷大塚(直営校)>グノーブルだと思いますが。

 

私の感想としては、相変わらずSAPIXの独壇場ですね。早稲田アカデミーは、「早稲田」系には強いですし、日能研と四谷大塚は何とかふんばっているといった印象です。グノーブルの躍進も気になります。