
前回・前々回に続き、SAPIXの親からの相談を紹介します。
※個人情報保護の観点から、ご本人が読んでも自分のこととわからぬレベルまで設定を変えていますが、事実に基づきます。
やっぱり〇〇校でないとダメなのね
自宅もよりの校舎に通っている生徒の親からの相談です。
「やっぱりうちのA校からは開成(or桜蔭or女子学院or慶応中等部などなど)に合格者が少ないから。だからB校に移ろうと思うのです。あちらは何人も合格しているので」
これを、例えばA校の室長の私に直接言うのですから、なかなかの方ですね。
もちろん、私は理を尽くして説得します。
(1)時間が無駄である
中学受験は時間との闘いです。小学校に行きながら、残り時間を費やして高度な受験勉強をしなくてはならないのです。無駄にできる時間など1分たりともありません。わざわざ電車に乗って離れた校舎に通う意味などないのです。
(2)合格割合はどこの校舎も同じ
1学年300人規模の校舎で開成合格者が15人と、60人規模の校舎で3人では割合は同じです。大規模校舎のほうが目立つ数字なのは当たり前ですね。
(3)地域差があるだけ
校舎の立地・沿線によって志望校は変わります。合格人数も変わるのは当然です。
(4)教師はローテーションしている
とくに決まりがあるわけではないですが、数年ごとに教師は所属校舎が変わります。実力のある教師も校舎を転々としています。これによって校舎間の指導力の平準化を図っているのです。
(5)校舎間で競っていない
塾によっては、校舎単位で「合格実績」「売上」などを競わせているようですね。しかしSAPIXにはそうしたカルチャーはありません。会社として、どこかの校舎に力を入れているということはないのです。
(6)規模による差はあるが
大規模校舎は同等の学力の生徒がひしめき合っていますので競争原理が働きやすいのは確かです。逆に小規模校舎であれば生徒一人一人に目配りができます。メリット・デメリットを総合判断すると、結局のところは近くの校舎が最適です。
(7)冠コースにはそこまでの意味はない
例えば、「開成コース」という志望校別のクラスを作っても、全員が「開成だけ」を受けるわけではありません。そこには、駒東志望者が混ざっていたり、慶応普通部第一志望者がいるかもしれません。1日は開成を考えていても、実は栄光・聖光が第一志望という生徒もいるでしょう。あるいは筑駒本命で、開成はあまり気が進まない、駒東・筑駒ラインの子も多そうです。とりあえず「男子最高レベル」のコース名として「開成コース」あるいは、「開成・駒東コース」「開駒コース」などといったネーミングとするのです。使う教材も、生徒の学力に合ったものを選びますので、別に「開成のみ特化」しているのではありません。むしろ総合的な学力を高めることが、開成合格にもつながるのです。
しかし、塾によっては西日暮里あたりに開成志望者だけを集めて「開成特訓コース」のようなものを設置するところもありますね。一見合理的に思えますが、通塾時間が無駄なだけです。所属校舎のみの学習で志望校はどこでも合格に導けるというのがSAPIXのカルチャーです。
とまあ、こうしたことをお話するのですが、なかなか納得はいただけません。
土曜・日曜の志望校別特訓の授業だけは他校舎に遠征する生徒というのが出てきます。
教える側からすれば、1週間の学習内容を把握して指導するのですから、一部の授業だけ他校舎に行かれると指導の一貫性が損なわれるのですが。
このように、非合理的かつ無駄の多い行動ですが、気持ちはわかります。
やはり不安なのです。
少しでも「〇〇中」の合格が近づく気がするだけで、十分校舎を移る理由になるのでしょう。せめて親の不安が子供に伝わらぬように泰然自若でいきましょう。