元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験相談】得意教科を伸ばすべき? それとも苦手教科を何とかするべき?

この質問もよく聞かれます。

「うちの子は算数で点を稼いで国語で点を落とすのです。これからは得意な算数を伸ばすのと、苦手な国語に注力するのと、どちらがよいでしょうか?」

得意な科目はやらせやすい

親としても、四六時中「勉強しなさい!」と言い続けるのはストレスですね。しかし、得意科目は、こちらから言わなくても自発的に勉強してくれます。子供が自ら勉強しているのですから、こんなにありがたい話はありません。そして、気が付けば苦手科目の学習は後回しにされ、結局ほとんどやらないままになってしまいます。得意・不得意の溝は広がるばかりです。

そこで、こんな言い訳が発生するのですね。

「今から苦手科目をやらせたところで、そんなに伸びないだろう。それなら、得意科目をもっと伸ばしたほうが総合点を稼げるのでは?」

このもっともらしい「言い訳」がさらに傷口を広げてしまうことになるのです。

 

目立たない子が受かる?

SAPIXに限らず、どの塾でも成績別にクラスを分けています。私が社会科をあるクラスで指導していたとします。そうですね、真ん中くらいのレベルのクラスとしましょうか。そうすると、その中で何人か、社会科がとてもできる生徒がいるのです。当然授業の反応もよく、クラスの雰囲気をリードしてくれるありがたい生徒です。やがて私の中で「A君とBさんは、優秀だ」という評価になります。反対に、クラスの中で目立たない生徒がいます。成績も授業中の反応も中庸です。「CさんとD君は、まあ普通の出来具合だな」という評価になるでしょう。しかし、実際の入試では、A君やBさんよりも、CさんやD君のほうが上のレベルの学校に合格していくケースが多いのです。

この一見逆転現象とも思える合否結果は、当然の結果でもあります。

真ん中レベルのクラスで社会科が得意だったA君とBさんは、「社会科が得意なのに他の教科が足を引っ張っているからこのクラス」なのです。逆に真ん中レベルのクラスで目立たなかったCさんとD君は、「社会科がぱっとしないのにもかかわらずこのクラスを維持している、つまり他教科が悪くはない」のです。

仮に、算国理社、それぞれの偏差値がすべて50だった場合、4科目総合の偏差値は50にはなりません。おそらく55くらいにはなるでしょう。これはどういうことかわかるでしょうか。

もし全生徒の4科目の偏差値がすべて同じだった場合には、こうした現象はおきません。4科目それぞれの偏差値が50の生徒は、4科目総合偏差値も50になります。しかし、そういう生徒は少数です。大半の生徒たちが、科目の出来具合がバラバラです。だから、4科目でまんべんなく得点できる生徒の総合偏差値は上がるのです。

 

不得意教科を無くすことこそが王道

合格のためには、四科目で不得意科目を無くすことこそが王道となります。また、試験の得点というものは、点が高い子がさらに伸ばすことは困難です。100点満点のテストで、85点とれる生徒がさらに10点を上乗せするのと、40点しかとれない子が10点を上乗せするのでは、明らかに後者のほうがたやすいことはわかりますね。

4科目でバランスよく同じくらいの得点力がある生徒が有利である。これが事実です。

 

単科入試や2科目入試、変則入試の是非

近年、入試制度を変えてくる学校が増えました。

・午後入試の新設

・入試回数を増やす

・単科入試の導入

・2科目入試の導入

・英語入試の実施

・変則入試の導入

 

もし、志望校の入試がこのような入試を導入しているのなら、上手にそれを利用するとよいでしょう。例えば午後入試で算数だけ、国語のみ、そうした入試もよく見かけます。試験時間が十分にとれないからですが、理社が苦手な生徒、算数が得意な生徒にとってはありがたいですね。

また、教科力を必要としない、面接・作文・作業重視の入試や、プレゼン入試など、変則入試を実施している学校もあります。最初からそうした学校が志望校なら、これも利用できるものは利用すべきでしょう。

 

しかし、もし入試制度から志望校を選ぼうとするのなら、賛成できません。

なぜなら、こうした入試制度の変更の目的は、「受験生を増やす」ことにあるからです。つまり学校にとっての営業戦略上の措置ですね。そして、そうした変則入試を導入した学校の中には、そうでもしなければ生徒が集まらない学校もあるのです。

たとえば、ダンスパフォーマンス入試を実施していたある女子校は、もうありません。名前を変えて共学校になりました。さすがにダンスパフォーマンスだけで入学してきた生徒の学力は高いとは思えませんが、そうでもしなければ生徒が集まらなかったのでしょう。

もっとも、私の知っているある女子生徒は、とにかく勉強が苦手だったのですが、英語だけは勉強していたため、英語のみの単科入試で、定員割れの女子校に進学しました。その学校もすぐに名前が変わり共学校化してしまいましたが、本人も親もとっても満足しているそうです。偏差値では測れない学校の魅力があったのですね。

 

さらに先の話になりますが、不得意教科を放置して中学受験をすると、中学校に進学してからの苦労が待っています。

中学受験の4科目は、中学生になったから「逃げきれる」科目ではありません。いずれ必ずやらなければならない勉強ですので、ここは逃げずに、正面から苦手教科と向き合うべきでしょう。