元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】6年生の親があと10か月でやるべきこと

小学校での6年生としての学年が始まります。

「あと1年か」

ついそう考えてしまいますが、中学受験のXデーは、2/1です。

つまり、「あと10か月」です。

まずはこの残り日数を認識しましょう。

フォアキャストよりもバックキャスト

ビジネスでは日常的に使われる語句ですね。

「未来をどの視点から考えるのか」という思考プロセスの違いでバックキャストとフォアキャストに分かれます。


バックキャストは、「逆算思考」のことですね。この場合の起点は「理想の未来」になります。「なりたい姿」をまず決め、そこから逆算して「今何をすべきか」を考えます。
フォアキャストは「積み上げ思考」で、起点は 「現在」です。「過去」の場合もあります。 現在の状況やデータをもとに、予測・延長して「将来はどうなるか」を考えます。

 

おそらく今までの学習は、短期的なフォアキャストの積み重ねだったと思います。毎日の宿題、予習、テストの間違い直しに追われ、何か月も先のことを考える余裕などなかったことでしょう。

とりあえず目の前にある課題を片付けるのに精いっぱい。

そんな状態です。

これは別に悪いことでもなんでもありません。今の課題を片付けることに注力するのは正しいやり方です。「四の五の言わずに机に向かう!」というのは正解です。

しかし、6年生になって「ゴール」が近づく今、親としては、10か月後の未来をきちんと考えるべき時期になったのです。

 

バックキャストではこうした経過をたどります。

1.ゴールを具体化・・・ 「いつ」「どのような状態」になりたいか明確に決める。中学受験のゴールはもちろん「志望校合格」です。しかし、ただ漠然と「どこかに受かればいい」という状態では、ゴールは具体化したとはいえません。「〇〇中学に合格」という明確なゴールを設定しましょう。


2.現状とギャップの把握・・・設定したゴール、つまり志望校の合格に必要な学力と、現在の子供の学力を比較し、足りない要素を洗い出します。どの科目が足を引っ張っているのか、あるいは科目の中でも何が足りないのか、それを明確にします。


3.アクションプランの策定・・・ 未来からさかのぼって、必要なタスクを時間軸に沿って配置します。やるべき事柄を、残り10か月の時間軸に当てはめていくのです。

 

4.「今」やるべきことの確定・・・計画を立てたら、 最初のステップを特定し、直ちに行動を開始する必要があります。

 

ゴール=目標校の確定

親の心理としては、わが子の能力を「過大評価」しがちです。それは親としては正しい在り方です。しかし、中学受験を考えた場合は、「過大評価」ばかりでは困ります。

現実的な目標設定をしなくてはなりません。

ただし、1校だけを受験するのではないでしょうから、ある程度必要学力(つまり合格偏差値)に幅をもたせることになるでしょう。

「具体的にどれくらい上を目指しても大丈夫なのですか?」

よくこう聞かれます。もちろん人によるとしかお答えできませんが、それでも現実的なラインというものは存在します。

偏差値でいうと、プラス3、これが現実的な数字です。

「たった3だけ?」とがっかりするかもしれませんが、受験生全員が本気で走るラスト10か月で、偏差値・順位を上げるのは容易ではないのです。少し気を抜くとすぐに追い抜かれて偏差値は下がります。

このあたりの事情は以前詳しく書きました。

peter-lws.net

現状とギャップの把握

志望校と子供の学力のギャップを正確に把握してください。多くの方が、ここが甘いのです。ここは冷徹に、直近の模試の成績のみを参考にします。直近3回の模試の平均偏差値をとるのがおすすめです。

次に、科目の偏差値を見ますが、ここでは、それぞれの科目の「最低偏差値」を見てください。例えば、4科目総合の平均偏差値が55だったとしましょう。しかし、算数の最低偏差値が40だったとします。いつもは国語が良いのですが、その国語も48のときがありました。

このようにして、苦手科目を浮き彫りにすることが大事です。

 

10か月のアクションプラン

10か月ではできることは限られています。例えば算数が弱点だったとしましょう。しかしたった10か月では、算数の学力を飛躍的に伸ばすことはできません。そこで、「足を引っ張らない」ことを目標としてみます。計算でのミスは許されませんし、一行問題も落とせません。まずはここを徹底的にトレーニングする計画を立てましょう。社会科の歴史が苦手なら、まずは年代を丸暗記することから始めます。また、入試問題も計画的に解く必要があります。

おおまかに2つのステージに分けるとよいと思います。

第一ステージ(4~7月)・・・弱点補強

まず4か月を使って、苦手教科を何とかします。標準問題レベルなら間違いなく得点できるようにしていきましょう。

第二ステージ(8~1月)・・・得点力安定

とにかく過去問を大量に解いてください。問題演習をしないかぎり、得点力は安定しません。

 

現在は、ほとんどの塾でまだ「カリキュラム学習」がメインだと思います。社会科は公民分野が残っているでしょうし、理科や算数で未習の分野があるかもしれません。しかしそれも7月までです。7月になると、どの塾でも「新しいことを学ぶ」段階は終了します。しかし、このタイミングで入試問題を解いてみても全く得点できないでしょう。

そこから先は、ひたすら得点力を高める・安定させることに注力する時期となります。

場合によっては、塾の通塾日数や講習参加の是非も検討する必要があるかもしれません。しかし、そのことをお通いの塾に相談することは無意味です。

「授業を間引きするなどもってのほか!」

「夏期講習は毎日徹底的に鍛える時期です。参加は必須です!」

こう言われるだけですので。私もSAPIXの室長時代はそう言ってはばかりませんでした。これは何も企業としての営業戦略ではなく、本気でそう考えていたからです。塾教師の本能としては、1日でも、1時間でも、1分でも多くの時間を生徒の指導に費やしたいのです。教室に来てくれないことには指導はできませんので。

しかし、今にして思うと、それは必ずしもすべての生徒にとって最適の選択ではなかったのかもしれません。

子どもにとって最適なやり方を親が判断するほかありません。