元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

なぜ子どもは「説明できない」のか?

教師は忍耐強い。

常々そう感じています。

日常生活ではさほど気の長いタイプではない私でも、生徒相手には違います。

そうでなければ「仕事」にならないからです。

何を言っているのかわからない彼らの話に耳を傾けて、何とか理解しようとする。

ご家庭ではどうでしょう?

「説明できない」子どもたち

彼らが「説明ができない」理由はいくつかあげられます。

 

(1)語彙力が低い

子どもたちが何か一所懸命説明しようとしています。しかし、適切な語句が使えないのです。これでは何を言っているのかさっぱりですね。

「あのさ、先生、よくわからないんだけど」

「何だ?」

「ほら、トランプがさ」

(またトランプネタか。今度は何かな?」

「それでヨーロッパが怒ってるんだよ。だからオーストラリアがさ」

(ヨーロッパ? オーストラリア?)

「それってアメリカはどうしてそんなことするの?」

(もしかして・・・・)

「相互関税のことか?」

「そう! それ!」

「つまり、トランプが課した相互関税の影響から脱する目的で、EUとオーストラリアがすべての関税を撤廃する貿易協定を結んだ。そうなればアメリカが世界の貿易の枠組みから除外されることになり、結局はアメリカの不利益になるはずなのに、どうしてトランプ大統領は相互関税を導入したのだろうか、そう聞きたかったんだな」

「さすが先生!」

 

「相互関税」という語句が出てこなかったのは仕方がない。時事用語ですから。しかし、せめて「関税」「貿易」くらいの語句は使ってくれないと、何を言おうとしているのかさっぱりわかりません。

 

こうした社会科用語に限らず、普通の日本語であっても、かれらは語彙力が低いのです。

 

(2)自分本位で話す

 子供たちの話の特徴は、常に「自分の話したいことしか話さない」、これです。

一般に、話というものは以下の2通りに分かれます。

A:自分の話したいことを話す

B:相手の聞きたいことを話す

一見同じように見えますが、全く異なります。

 

例えば、国会中継で見かける政治家の答弁。質問をはぐらかすためなのか、相手の聞きたいことにきちんと向き合っていないのをよく見かけますね。官僚がつくった原稿を、下を向いてぼそぼそと読み上げているだけ。何か伝わりますか?

 

例えば、結婚式のスピーチ。新郎の会社の上司がマイクの前に立ちました。緊張しています。話すことを忘れてしまい、慌ててポケットから原稿を取り出して、震える声で読み上げました。会場の客はおろか、新郎・新婦に伝わる話になるでしょうか。

 

(3)論理が崩壊している

 これは話法以前に、彼らの頭の中が「ショート回路」で構成されているからでしょう。何か話し始めたと思うと、突然話題が変わるのです。

「あれ? 今何言おうとしてたんだっけ?」

よく聞きますね。

 

 

「説明できる」ようになるためには

上記を鑑みれば、対策は簡単です。

 

(1)語彙力UP

 言葉ですから、語彙が無いとどうしようもありません。国語・社会・理科といった教科の学習だけでなく、日常会話でも語彙力は向上します。

そのためには、周囲の大人たちも、「子供むけの話し方」をやめましょう。

 

(2)聞き手を意識する

当たり前すぎるほど当たり前のことですね。独り言でないのですから、常に話の聞き手が存在します。どう話せば相手にわかってもらえるのか、これを意識し続けることは大切です。

 余談ですが、塾の先生の結婚式に出席すると、いつも感心します。スピーチに立った先生方の話が、異様に上手いのです。皆メモなどもたずに、アドリブで、新郎・新婦や列席者の顔を見ながら話を展開しています。これは、理解力の低い子供相手に日々を送っていた賜物でしょう。

 

(3)論理力を鍛える

 論理力を鍛えるのは、一朝一夕にはできません。難しい社会問題について討論したり、難しい文学作品について討論したり、そしてそれを文字化したり、そうした鍛錬が必要となるのです。

 論理的な思考力を鍛えることが大切です。

 

 

 

私は、話の達人はこうありたいという理想を持っています。

 

その1・・・相手の「聞きたい」内容を察する

 察するためには、相手に話をさせるのが一番ですね。「話し上手は聞き上手」と昔から言われるのはそのことです。まずは相手の話にじっくりと耳を傾ける。そうして始めて、相手が何を聞きたがっているのか、自分のどんなアドバイスを求めているのかがわかります。さらに達人の域に達すると、相手が話す前から、相手が聞きたがっている話を推察できるのです。私が目指すのはその領域です。

 

その2・・・どう話せば相手の心に届くのか考える

 話し方を変えるだけで、相手の心に届くかどうかが変わります。世間の「コーチング」と呼ばれるスキルはこの部分に特化したものです。

 

その3・・・本音で語る

 結局のところ、自分が本当に信じていないこと、納得していないことについていくら話したところで説得力を持ちません。相手に伝わるためには、まず自分自身が理解し納得していることが重要です。

 

その4・・・誠意

 同じ話でも、誰が話すのかによって説得力が変わります。私の世界は受験という狭い世界です。その世界のプロとして納得していただけるよう、精進あるのみですね。

 

ロジカルライティングの実践例を紹介する本を書いています。

参考になると思います。

麻布受験生以外にもぜひ読んでほしいと思っています。