元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

けっきょくどこかで受験するのだから、どのタイミングで受験すべきか

人生、どこかのタイミングで受験をしなくてはなりません。

小学校受験・中学受験・高校受験・大学受験

この4つの受験のうち、どれがベストのタイミングなのか、今回はそんな話題です。

(1)小学校受験

はじめにお断りしておきますが、私は小学校受験は専門外です。

それでも、私を「受験」の専門家とみこんでのご相談もありますので、ある程度の知識は持っています。

ご存じのように、小学校受験は2つの尺度で測定されます。

客観的尺度と主観的尺度です。

客観的尺度はペーパーテストです。これはシンプルでいいですね。幼稚園生にいったいどんなペーパーテストを実施するのか、その方法は置いておいて、少なくとも「点数」という客観的なデータが得られます。

それだけなら公平ですし、対策も立てられます。

受験というものは、「その学校の生徒になりたくて努力してきた努力値」を測定することで成り立っています。いろいろ批判もありますが、ペーパーテストの得点が一番わかりやすい指標です。

しかし、小学校受験にはもう一つ厄介な尺度があります主観的尺度です。

これを測定するために各小学校はこんな「テスト」を実施します。

〇行動観察

〇運動

〇制作

〇口頭試問

〇面接

いずれも客観的に得点化などできない、担当者の主観に左右される評価です。

それでも口頭試問だけは、ある程度得点化が可能なのですが、それは大学入試以上のお話です。「ルソーのエミールについて、君の考えを述べよ」これはドイツの大学入試の口頭試問の問題ですが、これなら、まず「エミール」を既読であるかどうかで選抜が可能ですし、さらにどこまで深く読み込んでいるのか、他の教育論との比較はできるのか、そうした指標で得点化できるでしょう。

しかし、小学校受験は幼稚園生の受験です。口頭試問が意味を成すとはとても思えません。

評価基準、つまり合格基準があいまいだと、対策も曖昧なものにならざるを得ません。そこで、小学校受験対策としては、もっともなものから怪しいものまで、巷にあふれるのでしょう。

たとえば、「貸農園」ってありますね。1平方メートルくらいに区切った区画を借りて、野菜を作る、あれです。ある時そうした貸農園の一角に、某小学校受験塾のプレートが表示された一角を見ました。こうした貸農園は、借りた人が、思い思いの種をまき、苗を植えて野菜を育てます。スタッフはアドバイスをしたり道具を貸すだけなのが普通です。しかしこの時スタッフに確認したところ、この小学校受験塾の一角は、種まきのときと収穫のときの2回だけ幼稚園生たちが集まってくるものの、間の世話は、すべて貸農園スタッフが有料で行っているのだそうです。

これが「農業体験」として売り物になるのでしょう。

 

さて、小学校受験をするかどうかの判断基準は、以下の4点です。

①大学まで続くエスカレーターに乗せたい。

 気持ちはわかります。慶応幼稚舎に入れれば、よほどのことが無い限り、慶応大学卒業の肩書が手に入ります。慶応に限らずとも、大学まで一切の受験を回避したいという家庭方針なら、小学校受験はマストでしょう。

②家の近所にある小学校に通わせたい

公立小学校は学区で区切られていますので、必ずしも至近距離ではないかもしれません。そんな公立小学区よりも近いところに私立小学校があるのなら、これは魅力的でしょう。

③環境を重視

公立小学校と私立小学校では、その設備はもちろんのこと、集う生徒たちも異なります。公立は、良く言えば多様性に富んでいる、悪く言えば、お近づきになりたくない親子もいるかもしれません。その点私立はすばらしいですね。

④教育方針が好き

私立ですから、その教育方針は様々です。そこに共感しての受験、本来はこれが王道です。

 

逆に考えると、上記4項目に該当しないのなら、小学校受験はする必要はないでしょう。

 

(2)中学受験

一部例外を除いて、私立中学は中高一貫です。場合によっては大学附属なら大学受験も回避できます。

12歳から18歳という、人間形成にも学力向上にも教養にとっても、一番大切な時期を、高校受験で途切れさせずに過ごせるのが最大の魅力です。

もちろん進学校であれば大学受験にも有利ですし、国際交流プログラムが充実している学校もあります。

しかも、高校受験や小学校受験とは違い、選択肢が多いのも特徴です。

さらに、中学受験は、4つの受験の中で一番シンプルです。

本番入試のペーパーテストの得点、これだけで合否が決まります。

対策も立てやすいですし、きわめて公平です。

ただし、慶応中等部のように、面接の比重が高い学校はその限りではありません。せっかくペーパーテストを突破しても、二次試験の面接で半分が落とされますので。

中学受験の最大の欠点は、通学距離と学費でしょう。

ここが気になるのなら、近所の公立中学一択となります。

 

さらに私が中学受験を推奨する理由として、「大切な教養を身に着ける」ことがあげられます。中学入試問題は、これから中学生にかけて身に着けるべき基礎教養に満ちているのです。ただ「中学合格」という小さな目標を超えて、学ぶ価値のある勉強です。

 

(3)高校受験

大半の子供たちが高校受験します。これがmajorityです。

majorityだから良いというわけではありませんが、安心感はあります。

しかも高校入試については、私立高校の選択肢は多くはないものの、公立高校なら、どこかに入れる定員があります。

それでも勉強を全くさぼってしまった場合には、通信制高校というセーフティネットもありますね。

もっとも高校入試には、「内申」という不透明なものがあることに気を付けましょう。

いわゆる「内申美人」を目指すことができないと、高校入試、とくに公立高校入試では著しく不利となりますので。

 

(4)大学受験

大学受験については、みなさんも記憶に新しいところでしょう。

しかし、最近の大学入試は、私立大学の場合はおよそ6割が推薦・統合型選抜であることには注意が必要です。普通に試験を受験して進学するルートが年々狭まっているのです。

また、最近の傾向としては、大学附属中高の増加があげられます。従来の中高一貫進学校が、いつのまにか大学の附属・係属校になっているのです。

これには、早くから生徒を確保したい大学の思惑と、附属・係属化することで生徒を集めたい中高一貫校、さらに不透明さを増す大学入試を回避したい保護者の思いが一致しているからでしょうね。

たとえば、手元のSAPIX偏差値表を見ると、桜蔭中学が63、香蘭女学校が48となっています。

この学力差は歴然としています。

しかし、桜蔭の大学合格者を見ると、19名の合格者がいます。この19名、おそらくは他大学(早慶や国公立)の合格もとっているのでしょうけれど、立教大学への進学者もゼロということはないでしょう。それに対して、香蘭は、立教大学へ100%の推薦枠を持っています。

それでも、桜蔭の6年間はかけがえのない出会いに満ちていたと思いますので、大学だけを見て論ずる気はありませんが、最近の大学附属人気というのもうなずける話です。

 

結局のところ

 

この議論に結論はありません。

ご家庭の方針次第です。

しかし、私の意見(あくまでも私見)を言わせていただければ、可能なら中学受験だろうと思います。その理由は、他の受験と比べて、最も公平な試験だからです。しかも、小学生のこの時期に、これだけの勉強をする(できる)というのは得難い経験です。これが将来に大きな意味を持つと思っています。

進学校か大学附属校かについては、これはご家庭と本人次第です。