
全中学受験生の親の悩みの筆頭はこれですね。
「どうしてうちの子の成績は伸びないの?」
さらにこうなると悩みは深まります。
「どうして成績は下がる一方なの?」
今回はこのことについて書いてみます。
成績の2種類
まず、「どうしてうちの子の成績は・・・・」と考える前に、「成績」の定義をきちんとしておきましょう。
成績には、絶対評価と相対評価の2種類があります。この2つを混同するところに、最大の問題があると思います。
成績の相対評価
ある集団の中で、どれくらいの成績なのか、そのポジションを考えるのが「相対評価」ですね。順位・偏差値でおなじみの考え方です。
例えばマラソンレースに出たとしましょう。
「今日はもう一つの調子だったけれど、有力選手がほとんど出場していなかったおかげで6位に入賞できた。」
この「6位」が相対評価です。いったいどういったレースでどんな選手が集まっていたのかによって順位は大きく変わります。
成績の絶対評価
絶対評価とは、子供の学力を、何等かの基準で達成度・到達度で示した評価です。
文科省ではこのように言っています。
新学習指導要領においては、基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することを重視していることから、評価についても、学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況を見る評価を一層重視することが重要となります。このため、指導要録においても、これまでの考え方を更に発展させ、従来から「目標に準拠した評価」による「観点別学習状況の評価」に加え、「評定」(各教科の学習状況を総括的に評価するもの)についても、「集団に準拠した評価」(いわゆる相対評価)から、「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)に改めたところです。
あいかわらず文科省の出すメッセージはまわりくどいですね。
「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)は、学習指導要領に示す目標がどの程度実現したか、その実現状況を見る評価のことを指します。
こちらのほうが少しはわかりやすい。つまり、目標値が100だったとして、どこまで到達したのか、それを「絶対評価」と言うのでしょう。
しかし、学校の成績で「絶対評価」を出そうとしても、その判断は結局のところ教師の主観によるものなので、精確とはとてもいえないことはご存じのとおりです。
わかりやすく得点で考えます。
ある100点満点のテストで65点だった。これが「絶対評価」です。そこでこう考えました。
「65点では納得いかないなあ。もっとがんばって、せめて80点はとれるようにしよう!」
次のテストでは、85点でした。
「よし! 目標達成できたぞ!」
点数を見ることはとてもわかりやすい指標なのですが、もちろんこの論理は成り立ちません。
最初のテストは、もしかしてものすごく難しいテストだったのかもしれないからです。大半の生徒が半分も取れない中での65点は立派でした。しかし、次のテストはとても易しくて、大半の生徒が満点でした。そこでの85点はちっとも良くはありません。
テストの難易度を考慮しないと、絶対評価などできないのです。
絶対評価が困難なのは、テストのたびに、母集団も難易度も異なるために、参考にしづらいのですね。
他の生徒と比較してのポジションを考えるのが相対評価ですが、本人の実力を測定するのが絶対評価です。しかし、テストの母集団も難易度も実施時期も異なるテストで、本当の実力を測定することなど不可能に思えます。
もしそれが可能なら、子供の学力の伸長を数値化できるのでとても便利なのですが、そうはいきません。
マラソンレースのように、「2時間8分10秒のパリオリンピック参考タイムをめざそう!」「2時間4分55秒を切れば日本最高記録だ!」となればとてもわかりやすのですが。
項目反応理論
みなさんは、IRT(項目反応理論:Item Response Theory)をご存じでしょうか。
これは、前述したテストの問題点、絶対評価を可能にした理論です。
テストの難易度や質まで考慮した尺度が提供されます。細かい統計的な説明は省きますが、得点ではなくてスコアが出されます。
スコア、と聞いて思い当たる方も多いでしょう。
TOEFL,TOEIC,GTECなどがこのIRTを採用してテストを実施しています。
そういえば、TOEFLは、英語力が変わらなければ、いつ受験しても同じスコアが出る、そんなことを聞いたことがあるかもしれません。
これを使えば、学力の絶対評価がしやすいのですが、残念ながら中学受験の世界では採用されていません。問題作成や統計処理が面倒なことに加え、保護者に説明困難だからだと思われます。
それよりも単純に、「3個間違えたから3点減点で97点!」のほうがわかりやすいからですね。
相対評価から絶対評価へ
中学受験勉強において、相対評価が意味をなすのは、常に同じ集団で競っている場合だけです。それにしたところで、集団全体の学力が向上している中で順位を上げることは困難ですから、こだわりすぎることは不毛です。
たとえば、4年生の時にSAPIXに入塾したところ、男子全体順位が800番だったとします。そこから2年間頑張ったけれど、最後まで順位は変わりませんでした。
「こんなに頑張ったのに、成績があがらなかった」と落ち込むことに意味はありません。なぜなら、その2年間に、SAPIX男子上位層の子たちも努力して成績が伸びているからです。今年のSAPIXの2月1日1回のみ入試の人気校を考えます。開成・麻布・武蔵・駒東・慶応普通部・早稲田実業・早大学院、ここまでの合格者を足すと1019名でした。つまり800番なら、これらの学校の合格者集団の中にいるということになるのです。2年間できちんと学力がついてきているのですね。(もちろんそんなに単純な話ではないです)
そこで私がお勧めするのは、「得点率」を見ることです。
難易度が異なるテストの得点率を見ることに何の意味があるのか、そう考えるのはわかります。しかし、塾内の定期テストならば、その年代、その時期の子供が解くテストとして、作成者側は、平均点を6割くらいにするように調整して問題を作成します。それくらいできなければプロではありません。また、入試問題にしても、中学入試という狭いフィールドでの戦いですから、一部の学校を除いて極端に難易度に差はありません。
順位や偏差値は参考程度として、それよりも4科目それぞれの得点率、4科目総合の得点率を気にしてほしいのです。
そのためには、大量のテストを解く必要があります。そうすることで得点率の推移が見やすくなるからです。
これは過去の記事でも引用した、ある受験生の得点率推移です。
6年後半には、入試問題演習に特化した指導をしたのです。
算国150点ずつ、理社100点ずつに換算して、入試問題演習の得点を500点満点として記録しました。そのままグラフ化すると見づらいので、10回の移動平均をとっています。

7割の壁がなかなか突破できず、11月・12月で成績がさがりました。しかし、1月の一か月でぐいぐいと得点率が向上したのです。
一度は出願をあきらめた第一志望の最難関校に、見事に合格した生徒でした。
偏差値・順位をみての学力評価は、ある意味他人との比較です。それよりも子供自身の得点力と向かうほうが、はるかに健全だと思います。