元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験に失敗する家庭の特徴


この時期に刺激的すぎるタイトルかもしれません。

しかし、多くの受験家庭を見てきたからこそわかることはあるのです。

今回は、中学受験に失敗する家庭の特徴をいくつか紹介します。

※こうした家庭が必ず失敗するということではありません。思い当たることが少しでもあれば、今後に生かしてほしいというアドバイスのつもりです。

夫婦関係が良くない

 夫婦の関係について、私ごときが口をはさむことはできませんし、語る資格もないのは重々承知しています。しかし、中学受験の成功、という狭い目的だけを考えた場合、どう考えても夫婦の意見がずれている家庭はうまくいかないのです。

 

あるとき、ご夫婦で進路相談に来た方がいました。それまでは、説明会や保護者会、面談にいらっしゃるのはいつも母親でした。しかしその時は、受験も近いということもあって、父親も乗り出してきたのですね。

入試が近づくと、こうした方も多くなります。これは良いことではあります。何といっても、中学受験は12歳の子供にとっては過酷すぎる試練です。それを母親一人で支えるのは大変です。父親も参戦すべきです。

面談は、父親主導で進みました。いつもは饒舌な母親が、一言も口を挟まないのです。

どうやら父親は、子供の成績や志望校が気に入らない様子です。母親にまかせきりにしていたからこんな状態になってしまった、そう言わんばかりなのは態度から明らかでした。

途中に何度も母親が口をはさもうとするのですが、その都度乱暴に遮られるのです。

「お前は黙っていなさい!」

他人の私の前でこのセリフ、今どきこんな父親がいるのだと少々あきれてしまいました。

受験に際して、家庭内の意見の不一致は問題です。良い結果につながるはずがないのです。

 

あるご家庭は、両親とも教育熱心でした。相談にも父親も母親もよく訪ねてきますし、電話もかかってきます。これはとても良いことですね。そう思っていたのですが、どうも話がずれていることに気づきました。

 

「これは先日お母さまにも申し上げたのですが・・・・」

「そうなんですか、初耳です」

 

「お父様からうかがいましたがお子さんは大学附属は嫌なのだとか」

「えっ、そんなはずはないです」

こんなことが続き、私もわかってきました。家庭内で夫婦の情報交換ができていないのです。そういえば夫婦そろっていらっしゃることは皆無でした。

 

学校の名前にこだわる

 学校の名前、つまりブランドです。

もちろんこれも大切です。憧れの学校を目指して努力するのですから、学校のブランドにこだわるのはけっして悪いことは無いのです。

しかし、それが行き過ぎたり、子供の現実と乖離している場合はまずいですね。

 

志望校のご相談を父親としているときでした。

「A中学は、正直に申し上げて合格可能性は低いと思います。私が過去に指導した生徒でも、同じくらいの成績で合格できた生徒は皆無でした。残り3か月で挽回できる状況ではありません」

「いや、もう2月1日はA中学と決めていますから」

 

志望校を決めて揺らがないのはとても良いことなのですが、11月も過ぎようとするタイミングで全く成績が届いていない学校を、曲げずに受験するのは無謀としか言えません。嫌な言葉ですが「記念受験」には意味がないのです。

合格可能性がほぼゼロの学校を受けさせられる子供が哀れすぎます。

 

「わかりました。それでは1日はA中学として、その場合は2日と3日にB中学とC中学ではどちらも難しいと思います。そこでD中学をお勧めしたいのですが」

「D中学ですか? あんな、名前さえ書ければ受かるような学校に行かせるつもりはありません!」

 

合格可能性が低い学校をいくつ受けても何度受けても、可能性は高まりません。せめて1校でも合格させてあげたいとおもって提案したのですが、門前払いでしたね。

それにしても、「名前さえ書ければ・・・」とは失礼すぎる言い方です。D中学は、定員割れ寸前の困難な時期を乗り越えて、国公立や医学部にもコンスタントに合格者を輩出する進学校になっているのです。

子どもの現状を無視して学校のブランドにこだわる受験は悲劇しか生みません。

 

子どもの勉強に無関心

良く言えばおおらか、悪くいえば放置。そうした方もいました。

子どもは素直にのびのびと育ったのですが、勉強はできるようにはなりません。

家庭学習がゼロでも親から何も言われないのですから、それは成績が上がるはずはないのです。

「別に勉強したくなければする必要は無いといつも言っているのです。本人が勉強したければするでしょう」

理想的に聞こえますが、逆です。

小学生の年代で、勉強が好きで自分から率先してやる子は皆無です。私も30年以上、4桁にのぼる生徒を指導してきましたが、そうした生徒は片手ほどの人数しか知りません。

小学生のときに全く勉強をしなければ、どこの中学にも合格はできません。たとえ定員割れの中学校でも、必ず不合格者はいるのです。

そのまま公立中学でも勉強をしなければ、行ける高校はありません。公立中学の進学先高校を調べてみると、およそ1割が通信制高校なのはそれが理由です。なかには通信制高校ですらない、サポート校に進む生徒もいます。

小学校のときのきちんとした学習習慣は、親の支援が必要です。

 

学校を見に行かない

 

みなさん、第一志望校は当然見に行きます。第二・第三志望の学校も見に行くでしょう。しかし、第四・第五志望、つまり「押さえ」の安全校を選ぶためにどれだけ足を運ぶでしょうか。

 

例えば、6年生の夏前に、SAPIX偏差値が48の男子がいたとします。家庭で考えた受験校はこうなっています。

2/1 駒東(59)

2/2 聖光(66)

2/3 海城②(63)

2/4 聖光②(67)

この後成績が向上しないと全滅パターンです。

こうした場合は、私はいつもこの質問をします。

「どこにも合格できない場合は、公立中学でもよいとお考えですか?」

公立中学からの高校受験はなかなか大変です。私立高校の選択肢が少ないことに加え、「内申点」という主観評価がありますので。

それでも、「そのつもりです」と聞けば、これ以上のアドバイスはできないのです。しかし、どこにも合格できないという経験は、たとえ公立中学に進学するとしても、本人に嫌な失敗体験しかもたらしません。そこで、こういうアドバイスをします。

「どこにも合格できずに公立中学に進学するのと、どこかに合格は出ていたのに、そこを蹴って公立中学に進学するのでは、本人の中学校生活のスタートに大きな違いがあります。1校は合格をとれる学校を受験してみませんか」

この成績の生徒なら、本当は1日の駒東をやめて、芝・都市大付属・攻玉社・巣鴨あたりを受験してほしいところです。しかし駒東をどうしても受けるのなら、午後入試を織り込むか、聖光をあきらめてもらうか、そういうことになるでしょう。

そこで、その生徒に合いそうな学校をいくつか名前を出し、とにかく説明会には行くようにアドバイスをします。

 

しかし、こうした場合の常として、私がアドバイスした学校を見に行かない方が多いのです。「そんな学校まで見に行かなくても何とかなるでしょ」と安易に考えるからです。それなのに、受験間際になって慌てて「受かりそうな」学校に出願する方も多いのです。一度も足を運んだことのない学校を受験するのは、たとえ偏差値的に合格レベルだったとしても、とてもお勧めできません。

 

実際に足を運んでみると、偏差値でははかれない魅力的な学校がいくつもあるのです。幅広く学校を見て、そのうえで子供に合った学校を志望校とする、その当たり前のことができなければ、受験の成功はおぼつかないでしょう。