元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

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【中学受験】2025大妻多摩 帰国生入試 日本語作文

今回は、大妻多摩の帰国生入試日本語作文をとりあげます。

この学校は、帰国生の受け入れに積極的な学校です。

 

帰国生受け入れについて

HPを見ると、こう書かれていました。

帰国生のみなさんへ
 本校では、将来の国際社会を見据え、さらに多様な生徒が集い個人の可能性を高め合える学校創りを目指して、帰国生の受験を歓迎しております。入試は、11月下旬の帰国生入試、7月と3月の帰国編入試験を設置し、帰国生の皆さんの受け入れる機会を設けています。

 帰国生の皆さんには、自分の個性や経験を発信すると同時に、多くのことを受信して欲しいと願います。大妻多摩は、帰国入学の皆さんと国内生が相互に刺激し合い、高め合う学校でありたいと思います。本校が帰国生も国内生も同じクラス、同じ授業で共に過ごしてもらう方針を取るのは、この願いからです。 ぜひ、説明会においでいただき、ご自分の目で本校を見てください。説明会の日程が合わない場合には、事前にお申込みいただけば、いつでも授業・施設見学が可能です。お待ちしております。

大妻多摩は、一般入試で140名の募集定員で実質合格倍率は、1.1倍~1.3倍となっています。帰国生入試は募集定員を定めていませんが、一桁台後半の出願者数のようですね。

これだけみると、生徒募集には苦戦しているのかもしれません。

大学実績については、大妻中高がなかなかの実績をきちんと公表しているのに対して、大妻多摩はほぼ非公表です。「ほぼ」というのは、国公立大学現役6名、私立大学現役307名合格となっていて、あとは「過去5年間の合格大学一覧」のところに、大学名が列挙してあるだけです。これでは何もわかりません。どの大学に何名合格したのかのデータを見なければ、その学校の学力のレベルがつかめないからです。

これは、公表する必要を感じていないのか、それとも公表したくないのか。おそらく後者でしょう。せっかく良い学校なのにこのやり方は逆効果な気がします。

学校の情報開示の姿勢にも学校の特色が現れます。例えば、すでに2026年の大学入試の結果が出そろいつつあり、早くも「東大合格者速報」といった記事を目にします。しかし、よく見ると、いくつかの高校が抜けています。とくに東大に特化していなかったり、それをいち早く公表することに重きを置いていない学校ですね。

 

さて、この学校が帰国生を積極的に受け入れる目的は、多様性を求めるのはもちろんでしょうけれど、大学実績に期待する面ももちろんあるでしょう。

入学後は帰国生を分離せずに、一般生と混ざっての授業となります。ここに少々不安を感じる方もいるでしょう。

学校はそこにもこう答えています。

入学後について
 授業の進度に不安を感じるかもしれませんが、本校は小規模校で教員と生徒の距離が近く先生に質問しやすいムードがあるので、どんどん質問してください。国内生にも不得意な科目を抱える生徒もおりますが、補習やノート指導、個別指導などで対応しています。これまで在籍していた帰国生の方も、この対応で6年間を楽しく過ごして進学していきましたので、帰国生入試の試験(作文または英語と基礎計算力確認試験、面接)で本校への入学が認められるレベルであれば心配はいりません。

なるほど。かなり親切です。

帰国生の入試相談を受けていると、よく聞くのが以下の悩みです。

 

◆子供の能力をより伸ばしてくれる環境か

これは、すでに高度な英語力があるので、一般生と一緒は嫌だ、そういうことを意味しています。この気持ちもわかりますね。切磋琢磨できる環境を期待しての私学なのですから、退屈な英語の授業を受けたくないというのはもっともです。

 

◆不得意な教科を丁寧に指導してもらえるか

海外の環境だと、どうしても国語、あるいは理科・社会が十分に身についていない帰国生も多いですね。そうして入学した学校で、苦手分野を丁寧にフォローしてもらえるのかどうか、ここは大事なポイントです。

 

◆子供がなじめるか

 日本とは異なる教育環境で育ったため、日本の「堅苦しい」学校環境になじめるかどうかが心配な方も多くいます。それに対する学校のフォローを気にするのです。

 

◆海外大学進学支援体制はあるのか

これはあまり多くはありません。そもそも帰国生で海外大学を目指すのなら、最初からインターナショナルスクールに入るほうが正解だからです。

しかし、国内の1条校(学校教育法第1条に規定された学校)に進学し、さらに海外大学も視野に入れたい場合は、そうした実績のある高校を選ぶ必要があります。

 

帰国生入試日本語作文

海外で生活していて、「日本にはあるが現地にはなくて、困ったもの・こと」あるいは「日本にはないが現地にはあって、良かったと思ったもの・こと」について、具体的に書きなさい。その際、どのように困ったのか(あるいは良かったと思ったのか)も、書きなさい。文字数は600字以内とします。

 

帰国生入試の作文としては定番のものですね。

これについては、海外に行った時期がポイントになると思います。たとえば、2歳からアメリカにいて現地の幼稚園・小学校に通っていたのなら、アメリカスタイルの生活が普通となっていますので、「日本にはアレがあったのに、こっちにはなくて不便だ」という発想にはいたりませんし、「日本にはないコレがこっちにはあって良かった」とも思いません。そもそも日本の「普通」がわかりませんので。

小学校に入るくらいの年代になっていれば、日本にあって現地にないもの、日本にはなくて現地にはあるものくらいはいくらでも思いつくと思います。

 

この問題については、「奇をてらった」例をあげる必要はありません。「斬新な」ものを思いつく必要もないのです。ごくありふれたものでけっこうです。

しかし、600字も書かなくてはなりませんので、膨らませやすいものにしなくてはなりません。

例えば、こんな例はどうでしょう。

「納豆がアメリカの僕が住んでいた地域には売っていなくて困った」

納豆が好きだったのですね。そして現地では手に入らなかった。アメリカでも日本食ブームにより、今やどの町のスーパーでもある程度の日本の食材は手に入ります。しかし、納豆・豆腐・かまぼこといった、現地ではほとんど生産されていない生鮮食品については、意外に入手が難しかったりするのです。もっとも豆腐については、早い段階から「常温保存できる豆腐」がアメリカでは売られていました。なんと常温で半年も保つのです。これを最初にアメリカのスーパーで見つけたときには驚きました。実はこれを日本で2018年まで解禁しなかったのは、日本の豆腐屋を保護するためだともいわれていましたね。また、健康食ブームやベジタリアン用として、現地でも豆腐は作られるようになりました。これが意外においしいのです。にがりを使った伝統的な製法がアメリカに伝わったからだともいわれています。

 

話が横道に逸れかかってしまいました。

納豆が無くて困った経験を書くのはよいですが、ここからどう膨らませますか?

せいぜい、「我慢した」「車で遠くの日系スーパーに行ったときにまとめ買いして冷凍した」くらいしか書けませんよね。

ここで、「自分で作ってみた」ことが書ければなかなかおもしろい作文になるのですが。

食べ物関連は、例としてあげやすいのですが、600字に膨らませるのが困難です。フランス在住の知人は、日本に一時帰国するたびに、日本の調味料を大量に持って帰ります。現地では手に入りづらいのだそうです。とくにお気に入りは「青しそチューブ」だそうです。なるほど、たしかに便利ですし、「和風」の味をすぐに演出できますしね。シソの種を持って帰って育てようとしたけれど、どうしても現地では育たなかったと言っていました。シソなんて雑草並みの繁殖力があると思っていたのですが、意外です。もしそうしたエピソードがあれば良い作文が書けそうですが、そうでなければ食べ物関連はかえって書きづらいでしょう。

 

私があげるとすれば、「洗浄便座」でしょうね。TOTOのウォシュレットは偉大な発明だと思っています。海外から帰国するJALの機内に備わっていたのを見たときには感動しました。

しかしこれも書きづらいテーマですね。ここはおとなしく「浴槽」くらいにしておきましょうか。お風呂好きな国民としては、海外のシャワーメインの浅い浴槽には納得がいきません。

 

以前に同様のテーマで記述させたとある帰国生の生徒は、「歩道」をあげていました。

 

私:歩道くらいアメリカにだってあるだろ?

生徒:それが違うんだよ、先生。僕の住んでいた地域はニューヨーク郊外だったんだけど、歩道が途中でなくなってるんだ。

私:歩道がなくなる?

生徒:みんな車で移動するから、誰も歩道なんか歩かないんだよ。だから、歩道を歩いていたら、突然歩道が途切れてそれ以上行けなくなる道がいくつもあったんだ。

 

つまり、クルマ社会のアメリカでは、道を歩く人がほとんどいないのですね。たしかにマンハッタンでもなければ、郊外に行けば、歩いて移動している人をほとんどみかけません。歩道だってコンクリートの隙間から雑草が生えていて、長らく人間が歩いた形跡が無いところもあります。かといって車道を歩くのは危険です。まさにクルマ社会の弊害ですね。これは現地に住んでいないとなかなか気づけないことだと思います。日本とアメリカの比較としては、面白い着眼点でした。

 

あとは、「困ったもの・こと」「良かったと思ったもの・こと」という指示に注目して、「もの」ではなく「こと」を書くのも良い方法です。

 

日ごろの注意

まだ現地に滞在中なら、今からでも日本と現地の違いや共通点については日ごろから意識しておくことをおすすめします。どの学校を受験するにせよ、必ず役に立つと思います。親子で「日本とアメリカで異なることをあげてみよう!」などと、交互に言い合うようなことも有効そうですね。

 

子:ランドセル!

母:なるほど。たしかにアメリカにはランドセルは無いね。

子:日本のランドセルは重かったんだよ。でもこっちの学校は教科書は学校に置いておけばいいし、リュックを使えばいいしね。コロコロ転がすバッグ使ってる子もいるよ。

母:日本でも、重いランドセルを見直そうという動きがあるんだって。

子:それはそうだよ。日本の小学生がかわいそうだよ。

母:どうしてランドセルが必要だったのかな?

子:教科書が一杯入るから。

母:こっちでは教科書は持ち帰らないよね。どうしてかな?

子:家で使わないし。そもそも宿題ほとんどないよ。

母:どうして宿題が無いと思う?

子:逆に、どうして日本の小学校ではあんなに宿題があったのかな?

 

こんなふうにして、日米の教育の比較まで発展できたら素敵です。

 

大妻四姉妹

大妻と名がつく学校は4校あります。

1908年に開かれたのが、千代田区3番町にある「大妻」で、ここが長女となります。

そして80年後に開かれたのが「大妻多摩」で、妹といったところです。

「大妻嵐山」と「大妻中野」は、他の学校法人が大妻の傘下に入ることでこの名前になりました。いわば義理の妹といったところです。

 

大妻多摩の特色といえば、何と言っても立地と環境でしょう。

体育館が2棟、サッカーの公式戦ができる広さの人工芝グラウンド、中高専用の天然芝グラウンド、土のグラウンド、テニスコートが6面あります。とても女子校とは思えない充実ぶりです。これは、「大妻女子大学多摩キャンパス」と施設の一部を共用としているからですね。自然が豊かな多摩丘陵に位置しますが、最寄り駅の小田急多摩線唐木田駅からは徒歩7分となっています。

都会の真ん中、皇居近くにある大妻中高とは対照的な立地ですね。