
こんなご相談をうけたことがあるのです。
「中学受験に有利な小学校はどこですか?」
海外からの相談でした。
小学校低学年で帰国するにあたって、中学受験に有利な小学校を探していたのです。帰国して住む場所は自由に決められるので、それならどの小学校(の近く)に住むべきか考えていたのですね。
その時のことを思い出しながら、中学受験に有利な小学校ははたしてあるのか、考察します。
※本記事では、「附属」に統一して表記しています。「付属」の表記を使用している学校には大変申し訳ないですが、あまりにもわかりづらかったもので。
私立小学校という選択肢
このご相談の方の場合は途中からの編入ということになります。編入生を受け入れていない私立小学校も多いですが、今回の記事ではそこは考えないことにします。小学校1年生から普通に入学するとして考えます。
私立小学校と一言で言っても、いくつかの種類がありますね。
(1)そのまま大学進学が約束された大学附属小
大学が人気校であり、もしその附属小に入学できれば、そのままエスカレーター式で大学まで行ける、そうした小学校もありますね。この場合は、ほぼ100%の生徒が大学に進学できる学校でないと魅力は半減します。
・慶應義塾幼稚舎
・慶應義塾横浜初等部
・早稲田実業初等部
・青山学院初等部
・立教小学校
・学習院初等科
まだまだありますが、すぐにこうした学校を思いつきますね。
一部例外はありますが、これらの小学校に進学するということは、そのまま慶応大学や早稲田大学に進学するということを意味します。
子どもの将来の進路・大学を、わずか6歳で決めてしまうのですから、ある意味勇気がいる選択です。
もちろん、高校の大学実績を見てみると、必ずしも附属大学に内部進学した生徒ばかりではありません。例えば、学習院高等科の2025年の大学実績はこのようになっています。
・学習院大学推薦進学・・・114名
・慶応大学合格・・・・・ 15名(指定校推薦6名)
・早稲田大学合格・・・・ 10名(指定校推薦3名)
・青山学院大学合格・・・・・9名
・上智大学合格・・・・・・・9名(指定校推薦3名)
・中央大学合格・・・・・・・10名(指定校推薦2名)
・東京理科大合格・・・・・・9名(指定校推薦1名)
・明治大学合格・・・・・・・9名
・千葉大合格・・・・・・・・4名
・東京大学合格・・・・・・・1名
学年人数がおよそ200名での実績です。過半数(6割弱)が内部進学、あとは他大学進学ですね。
大学附属高校の場合、国立大学であったり、自分の大学にない学部のある他大学を受験する場合は、内部進学の権利を保留したまま他大学受験ができるのが普通です。もちろん普通に外部大学を受験する生徒もいます。
学習院大学より格上(嫌な表現ですいません。ただ入試偏差値のみの話です)に進学した生徒もいる一方、もちろん格下(これも嫌な表現ですいません。あくまでも入試偏差値のみです)の大学に進学する生徒もいます。内部進学の基準を満たせなかった生徒だと思われます。
つまるところ、将来通いたい大学の附属小学校に進学できれば、中学受験・高校受験・大学受験を回避できるのですから、魅力的な選択肢です。
ただし、「中学受験」とは無関係ですので、この記事ではこれ以上は触れません。
(2)中高内部進学を前提とした小学校
大学の附属であるかどうかは別として、ほぼ全員が小学校からそのまま中高に内部進学する小学校がありますね。多くの私立小学校がここに該当します。また、学芸大附属小やお茶の水女子大附属小(ただし女子だけ)、筑波大附属小のような国立もここに該当します。
この場合も、「中学受験」を前提とした本記事ではこれ以上は書きません。
(3)中高附属ではない小学校
ここに該当する学校は多くはありません。国立学園小や精華小くらいしかすぐには思い浮かびませんでした。小学校受験をして私立小学校に進学するメリットとしては、中学受験・高校受験を回避したいというものがあります。そのメリットがないということは、全員が中学受験をしなくてはならないのです。この2校は、いわゆる「中学受験小」として名を馳せています。私立小のメリットを生かして、中学受験で難関中学への合格実績を誇っているからです。
例えば、精華小の場合は、中学合格実績はこのようになっています。
聖光 32
筑駒 11
浅野 21
サレジオ 14
鎌倉学園 11
開成 16
栄光 12
麻布 7
駒場東邦 6
桜蔭 14
フェリス 11
豊島岡 10
女子学院 5
洗足学園 5
ただしこれは5年累計の数字ですので、5で割ると、聖光6名、浅野4名、筑駒2名、麻布1名、栄光2名、開成3名、桜蔭3名、女子学院1名、とそんなかんじでしょうか。1学年80名の実績ですからたいしたものです。
(4)外部受験もする附属小学校
淑徳小・宝仙小・洗足学園小・聖セシリア小等ここに該当する小学校も多いですね。
実は、こうした小学校も2つに分けられるのです。中高に魅力がなくて内部進学する生徒が少ない=みな外部受験してしまう小学校と、中高も人気校だが中受も推奨している小学校です。しかし、学校法人経営上は、人気がない中高をそのまま放置しておくわけにはいきません。魅力的なプログラムを導入し、内部進学者を増やす傾向にあるのが普通です。ただし、聖セシリア小や洗足学園小のように、小学校では男女共学でも中高は女子校の場合は、男子全員が外部受験しますし、女子も外部受験する生徒多数です。
洗足学園小の学年人数は、男女40名ずつとなっています。2025には、内部進学試験を受験したのが39名、合格者が7名でした。おそらくほぼ全員が内部進学試験を受けたと思いますが、なかなか厳しいですね。
そして、中学受験の実績はこうなっています。
開成 5
麻布 2
浅野 2
慶応中等部 2
駒東 3
筑駒 3
渋渋(男子) 2
渋渋(女子) 2
渋幕(男子) 4
渋幕(女子) 2
桜蔭 4
鴎友 5
女子学院 1
洗足学園 9
雙葉 1
こちらの実績もたいしたものです。
私立小学校は中学受験に有利なのか
結論は、YES&NOです。
すいません、煮え切らない結論で。
しかし、中学受験という観点からだけ私立小を評価しようとすると、メリットとデメリットと両方があるのです。
◆通学時間はデメリット
近所の公立小学校よりも私立(国立)小のほうが近い場合はよいのですが、そうでなければ、あきらかに通学時間は「無駄な」時間でしかありません。
電車・バスなどを使って通学する往復の時間を自宅での受験勉強にあてたほうがいいに決まっています。
◆学校行事の多さはデメリット
これは小学校によりますが、私立小のほうが学校行事が充実している場合が多いのです。その時間ははっきりいって「無駄」です。
◆保護者の人間関係が難しい
保護者どうしのお付き合いが難しいのは、なにも私立に限った話ではありませんし、「人間関係」のような曖昧なものは評価しづらいのも確かです。しかし、ご相談を受けた保護者の方の話を総合すると、公立小のような気楽さは薄いようですね。ある保護者は、中学受験塾に通っていることをひた隠しにしていました。その方曰く、どの子が内部進学し、どの子が外部受験するのか、疑心暗鬼というか、探り合いのような雰囲気があるのだとか。
◆結局皆塾に行く
私は、中受がさかんなとある私立小の小6の授業を見学させていただいたことがあるのです。優秀な生徒ばかりで、先生の質問にもよく手があがります。たしか歴史の授業でした。しかし、塾のカリキュラムを熟知している私からみれば、それは当たり前なのです。なぜなら、受験塾ではとうに習っている範囲の授業だからです。いかにも「初出」を装って授業をしていましたが、生徒たちはすでに知っている内容を確認しているだけでした。授業の進め方も、さほど目新しいものではありません。塾の世界は、激しい競争にさらされている世界ですので、授業は相当工夫されているものなのです。どうしてもそれと比較してしまうのがいけないのですが。この程度の授業に高い授業料を払う価値があるとは私には思えませんでした。
中学受験がさかんな私立小の子は大半(たぶん全員)が塾に通いますし、内部進学が大半の小学校の場合は、今度は内部進学を目指して塾に通う子も多いそうです。
中学受験の実績が、小学校に帰するものなのか、それとも塾の手柄なのかは分けることはできませんが、私立小の目覚ましい合格実績をそのまま鵜呑みにすることもできないのです。
◆授業が無駄にならない
公立小学校とは授業の質もレベルも違います。これが最大のメリットです。前述した歴史の授業でも、さほど面白い授業展開ではありませんでしたが、少なくとも中学受験レベルに近い内容を、授業中に確認することはできます。これは残念ながら公立小学校には望むべくもないことですね。
また、一部の中学受験がさかんな小学校では、小学6年の後半は、自習時間がとても多いと聞きました。その時間中に、生徒たちは各自の中学入試問題集に取り組んだり、塾の宿題に取り組むのだそうです。これは羨ましい。小学校が授業を放棄するのもどうかと思いますが、実際にとてもありがたい体制です。
さらに、算数や国語の補習授業で習熟度別クラスに分けて問題演習をしたり、入試対策講座や夏期講習、放課後補習まで至れる尽くせりの体制をとっている私立小学校まであります。
◆優秀な仲間がいる
よく塾に来る子たちが言っているのです。「塾は楽しい!」と。その理由としては、もちろん塾の教師の授業が新鮮でおもしろくためになる、そういうこともあるのですが、何と言っても「話のわかる」仲間ができるのが楽しいのだそうです。塾、それも最難関校を目指す教室ともなれば、おそらく小学校では「吹きこぼれて」いる生徒ばかりです。周囲の友達と話が合わないこともあります。しかし、塾の教室にくれば、自分と同等、いやそれ以上に優秀な生徒たちが集まっているのです。
私立小学校も同じ状況だと思います。これは得難い環境です。
◆設備が充実している
こればかりは、公立小学校が逆立ちしてもかないません。古びた木造校舎で小学校生活を過ごした私からすれば、信じられないような環境ですね。
◆情操教育が充実している
これも、公立小学校が逆立ちしてもかないません。
あるとき、ロンドンのヒースロー空港内で、某私立小学校の生徒たちに遭遇したことがあります。10名くらいの小学生を引率した女性の先生が一人いました。
「それじゃあ、ここからは自由時間ね。〇〇時までに〇番ゲート前に来てね」
そういいおいて、自分は風のように免税店内に消えていきました。後に取り残された子供たちが呆然としていたのが印象深かったのです。
その先生はきっと、自分自身のお土産を買いたかったのでしょうね。いくら空港の出国エリアといえども、日本のような安全は望めません。そもそも子供だけで歩いているのも見かけませんね。しかしこの生徒たちは、騒ぐこともなく、静かにお菓子などを買っているようでした。さすがというべきです。おそらく英語も学んでいるからでしょう。
研修旅行も海外であったり、フランス語を学べたり、ヴァイオリンを学んだり、絵画鑑賞に出かけたり。そうした情操教育が充実している小学校も多いのです。
結論としては、私立小学校はたしかに中学受験に有利な面も多いのですが、通学時間を考えると、必ず有利とはいえません。
中学受験のため、という理由ではなく、その小学校の教育環境・内容が気に入ったという理由で選ぶのなら、私立小学校もよいでしょう。
もし中学受験だけを考えるのなら、何も無理して遠くの小学校に通う必要はありません。
名門公立小学校はどうなのか?
公立小学校は、単純に住むエリアで決まります。そこに「名門」小学校など生まれようもないはずなのですが、都内には「名門」とよばれる公立小学校がいくつかあるのですね。
とくに中学受験率が高い、文京区・港区・中央区にある公立小学校は、越境で通う子や、あるいは引っ越してくる家庭まであるそうです。
青南小学校(港区)・白金小学校(港区)・番町小学校(千代田区)の3校が都内御三家?だそうですが、他にもこんな小学校があります。
誠之小学校・千駄木小学校・窪町小学校・昭和小学校(文京区)
久松小学校・泰明小学校(文京区)
こうした小学校に入るために転居する。私にはちょっと考えにくいですが、最初から住むエリアを探しているのなら、普通のことなのかもしれません。
さて、こうした「名門」公立小学校に進学することのメリットには何があるのでしょうか?
・大半が中学受験をする
・教育熱心な保護者が多い
これだけです。
いったところで「公立」小学校ですから、入学にあたって試験があるわけでもありません。たまたまそこに住んでいる子が通うだけです。したがって一定以上の学力が担保されているわけでもありません。
もちろん、文科省に忠実なカリキュラムで、授業も特別なものはありません。英語に力が入れられていたり、算数の少人数授業があるくらいでしょうか。小学校の枠組みの中でできることは限られているのです。
ヤンキー予備軍のような子供や、入れ墨をした父親はいないかもしれませんが、いないという保証もありません。
例えば上にあげた中央区の久松小の学区エリアは馬喰町・横山町・東日本橋・久松町
浜町1丁目・浜町2丁目となっています。別に高級住宅街でもなんでもない、むしろ雑多な町ですね。駅でいえば、馬喰横山駅・人形町駅・浜町駅に囲まれたあたりです。老舗の店が多く散策していると楽しいエリアですが文教地区ではありません。
実は久松小のすぐ近くには、SAPIX東京校があります。ここはSAPIX発祥の地ですので、規模の大きな教室です。久松小の生徒が多く通っていることは想像に難くありませんね。
落ち着いた教育環境を求めてこうしたエリアに住み、近くの公立小学校に通うのはかまいませんが、わざわざそのためだけに転居する意味はありません。