元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

子ども性善説の是非




今回は、あまり賛同を得られない話かもしれません。

あくまでも私個人の考えですので、怒らずに読み流してください。

 

子どもは嘘をつく

おそらく、私と同業の方なら全員が「その通り!」と同意してくれると思うのですが。

子どもは嘘をつきます。

これは仕方のないことなのです。

「嘘をつかないピュアな子ども」というのは、おとぎ話の世界の中だけだと思っています。

大人である私たちも、嘘をつきますね。

嘘をつくよりも本当のことを言ったほうがよいことは経験上わかっているのに、日常的に嘘をつきます。

 

例えば、他人から食事に誘われましたとします。行きたいと思います。しかし、手元不如意なとき、どうしますか?

 

A:「いいですね、ぜひ行きましょう! でも、あいにくお金がなくて。食事代、貸してくれませんか?」

B:「ぜひ行きたいのですが、今日はあいにく手持ちのお金がなくて。すいません、またの機会にさせてください」

C:「ぜひ行きたいのですが、今日はこの後予定があって。すいません、次回は必ずご一緒させてください」

 

正直なのはAとBですが、大人としてはこんな人は嫌ですね。相手に食事代を借りるAは最悪ですし、Bの対応も、これが許されるのは学生くらいでしょう。この対応は相手に不要に気を使わせますからね。

「いいですよ、今日は私がご馳走しますから」となるか、あるいはもっと気遣いできる人なら、「実は先日ちょっとした臨時収入がありましてね。そこでぜひあなたにご馳走したいと思っていたのです」と言ってくれるかもしれません。もちろんこれはあなたに遠慮せずに食事に来てもらうための「方便としての嘘」ですが。

結局のところ、無難なのはCの対応ですよね。

 

そうやって嘘にまみれた人生(言葉にすると嫌ですね)を送る大人だからこそ、余計に子供には嘘をついてほしくないという気持ちが強く、子供を神格化してしまうのかもしれません。

しかし、大人以上に良識もモラルも未発達な子供です。

さほど罪悪感を感じずに嘘をつくのは珍しくもないのです。

 

「どうして宿題をやってこなかったんだ?」

「やったんだけど、ノートを家に忘れた」

 

こんなかんじの嘘、よく聞きますね。

十中八九、ノートは空白のはずです。

 

子どもに対しては、人を傷つける嘘、周囲に迷惑をおよぼす嘘だけは「絶対悪」だということを教え、自分自身をごまかさないように指導するしかないと思います。

 

そういえば、こんな子もいましたね。

その日塾にA子さんが来なかったのです。さぼりですね。そこで授業後に家に電話をしました。

「A子さんは今日お休みされていましたが、体調でも悪かったのですか?」

「えっ、塾には行ったはずですが」

「いや、来ていませんでした」

「ちょっとお待ちいただけますか」

電話の向こうで、母親がA子を呼ぶ声が聞こえます。娘に確かめているのでしょう。やがて母親が電話に戻ってきました。

「娘は今日塾に行ったと言っています」

「いえ、お見掛けしませんでしたよ。出欠の記録にも×印を私がつけています」

「娘が言うには、教室の一番後ろにいて小さな声で返事をしたから、来ていたことに気づかれなかったのだとか」

数百人の大教室ではありません。せいぜい20名程度しかいないのです。あり得ないですね。どうやらA子は「先生に気づいてもらえなかった」の1点張りで親をごまかそうとしているようです。そして残念なことに、母親は娘に説得されかかっているのです。

「うちの娘は体も小さいですし、目立つタイプでもありませんし・・・」

まるで、娘に気づかなかったのは私の責任だと言わんばかりです。

「今日の授業内容は、全員のノートに5ページ分書かせました。A子さんの今日のノートを確認してください」

 

親が子どもを信じるのは大切なことですが、無条件に信じるという意味ではないと思います。嘘をついてしまう心の弱さも含めて信じてあげるということだと思うのです。

 

子どもはさぼれる時はさぼってしまう

 

大人だって、同じです。たとえ明日提出の書類があったとしても、つい「明日やれば間に合うだろう」と考え、今日はさぼってしまいます。少なくとも私はそうですね。

 

まして子どもです。水が低きに流れるがごとく、安易な方へと流されてしまうのです。

家で入試問題を一人で解いていて、目の前に模範解答冊子があれば、つい開いてしまいます。

やらなくて済む(と本人が判断)してしまえば、やりません。テストの間違い直しなど、一番やりたくないですから、「間違い直しはやらなくていいって塾の先生が言ってた」くらいは平気な顔で言いますね。

 

テスト中、自分がわからない問題があると、つい隣の子の答案を見たくなる。これだって珍しくはありません。

ある時、テスト中に、あからさまにカンニングしている子が一人いました。そこでテスト終了後に、「残念なことに、この教室の中に、カンニングしていた生徒がいた。自覚がある生徒は、後で私のところに来なさい」と宣告したところ、ぞろぞろと数人の生徒が来て驚かされたことがあります。まあ正直に来るだけかわいいものですね。

 

そうした弱い心を、少しずつ育てていく時期なのだと思います。

 

子どもの弱さを認めよう

 

嘘をついたりごまかしたりさぼったり。そうした心の弱さも含めて、すべてを受け入れてあげましょう。

そして、それを少しずつ正しい方向に導いていくのが、大人の役割だと思います。

「うちの子は絶対に嘘などつくはずがない!」

その思い込みが、もしかして子どもを別の方向に押しやってしまうかもしれないのです。