
中学受験は過酷な試練でした。
早い子の場合、小学1年生から塾通いが始まっています。
場合によっては、幼稚園の年少から、小学校受験を目指して幼児教室に通い、小学校受験に失敗して中学校受験に切り替えた、そんな人もいるかもしれません。そうすると、これまでに8年間!も受験勉強をしてきたことになります。
そこまで早くスタートしていなくても、少なくとも小学4年生からは塾に通って中学受験勉強に取り組んできた子が大半だと思います。
毎日の塾の小テストに追われ、毎週のテスト、さらに模擬試験、夏休みもゴールデンウィークもありませんでした。正月に特別講習がある塾が大半です。ひどい?ところになると元日まで特訓授業をやっています。
そのつらい勉強の日々を耐えられたのも、「中学合格」という目標があったからでしたね。
そしてそれが達成された今、どっと脱力しているのも当然でしょう。
しかし、いつまでもそうやって「燃え尽き」ているわけにはいきません。
今後どうやって再び目標に向かって進むことができるのかについて少しだけアドバイスします。
1.大学入試を目標にしない
いくらなんでも、「さあ、今度は6年後の大学入試だ!」ではあんまりです。
やる気なんか沸いてきませんよね。
もちろん、いずれ大学入試は意識するとしても、今ではありません。
中高一貫校生を対象とした塾の広告にこんな文言があります。
「合格おめでとう、次は東大!」
あまりにも中学受験生の気持ちを無視したフレーズだと思います。
中高の6年間は、大学入試合格のためだけに存在しているのではないのです。
12歳から18歳をどう過ごすのか、それは大学入試などという「小さな」目標よりももっと大切なことなのです。
2.学校の勉強を大切にする
上で大学入試を目標にするな、といいましたが、もちろん勉強をしなくていいということではありません。
ここで一番大事にしてほしいのは、「学校の日々の授業を大切にする」ことなのです。
たしかに、中学受験の日々は、小学校の勉強とはかけ離れた高度な内容を、塾や家で学んでいました。
勉強は学校でやるものだという感覚は無かったと思います。
しかし、中高は違います。
とくに私立中高一貫校には、優秀な先生方が大勢いらっしゃるのです。
切磋琢磨できる同級生たちも大勢います。
まずは、毎日の授業に全力集中しましょう。
もちろん、主要教科(英数国理社)以外の副教科も同様です。
この時期の学びは、「大人になるための基礎教養」を身に着ける大切な学びです。
たまに、学校をさぼったり遅刻したり、授業中にスマホを見ていたり寝ていたりする生徒がいます。
授業を聞かずに、塾の宿題をしている生徒もいます。
本当に愚かです。
いったい何のために中学受験をしたのでしょうか?
中高一貫校の授業は、「簡単すぎて物足りない」ことなどありません。授業に全力集中し、多くのものを吸収しましょう。
3.クラストップを目指す
どうしても目標が定まらないと、やる気がわかないかもしれません。
そこで、まずは「クラスのトップ」を目指すのはどうでしょうか。
学校によっては成績を公表するのでクラスの順位がわかりやすいところもあるでしょう。そうではなくても、なんとなく、「あいつのほうが僕よりもできそうだ」といった感触はつかめるものです。
「数学は私よりできる子が多いけれど、国語は負けない」
そんなささやかなプライドが、前へ進むエネルギーとなるのです。
そして、すぐに一学期(前期)の中間試験がやってきます。
まずはこの試験で、全科目満点を目指しましょう。
試験範囲が決まっているテストです。満点は決して不可能な点ではありません。
4.クラブ活動に燃える
中高一貫校の醍醐味はここにあります。
高校受験が無い6年間を部活に捧げることができるのです。
まあ実際には高校3年になる前に部活を引退しますので、実質的には5年弱ですが。
それでも、高校受験がある場合とはくらべものにならないほど充実した時間が過ごせるのです。
もちろん、日々の勉強にも手を抜かないことが前提です。
5.後悔しない6年間を過ごす
10年後、20年後、あるいはもっと歳を重ねてから、中高時代を思い返すことはたくさんあります。その時に、「もっと〇〇しておけばよかった」「どうしてあんな風に過ごしてしまったんだろう」といった後悔はしたくないですよね。
先日、中高時代の友人と久々に会って、たまたま本の話になりました。
「本好きな人をみると嫉妬する」
というのですね。その理由を聞いてみると、こうでした。
「俺は中高生のとき全く本を読まなかったから」
たしかに、大学生になってからの読書は、授業に直結した専門書ばかりになります。社会人になってからも、読むのは仕事に直結した本ばかりです。その時間さえ取れずに、AIに要約させることも普通です。
自分の趣味の読書、教養の読書などという贅沢が許されるのは、中高時代をおいて他にはありません。
読書は当然としても、「やり切った!」と思える6年間をぜひ過ごしてほしいのです。
6.保護者のみなさんへ
上記は、生徒へのアドバイスでした。
「燃え尽き」てしまうのは、子供ばかりではありません。急に目標を見失ってしまう保護者の方も実は多いのです。
そこで、「今度は東大!」とばかりに、子供の中高生活に干渉しようとする方も多数います。
〇中学入学前から子供を通わせる塾の説明会に足を運ぶ
〇ママ友情報を必死で集め、塾を選ぶ
〇学校の授業内容を詳細にチェックする
〇中学の保護者の間に「ママ友ネットワーク」を作ろうとする
〇中高の親睦会の幹事を引き受け積極的に新規活動を作ろうとする
〇学校の「ダメ」なところをあぶりだし、学校に改善を要求する
〇学校準公式の「おやじの会」に参加し、足しげく学校に通う
〇学校準公式の「親サークル」に参加し、足しげく学校に通う
〇学校の定期試験対策を親主導で行う
〇少しでも成績が下がると、家庭教師・個別指導塾に入れようとする
〇子供のスマホを毎日詳細にチェックする
いくつくらい当てはまりますか?
これらの「干渉」は、悪いことではありません。
中受が終わった瞬間に、「役割終了!」とばかりに子供を放置するよりはよいでしょう。
しかし、何事も「過度」なのがまずいのです。
基本的には学校にお任せするのが良いのです。何せ学校の先生方はその道のプロですから。12歳から18歳という多感な時期の子供の扱いに長けていますし、経験も豊富です。
そうして、少しずつ自立を促していく、そうした時期だと思います。
過去の教え子を思い出します。自由な校風で知られる、男子最難関校のA中学に進学した子の親が報告に来たのです。
「私たち母親が集まって、A中学にもついに家庭科の授業を作らせることに成功しました!」
家庭科が中学で必修化される以前の話です。
A中学では、教師の趣味と思えるほどの自由で高度な学習が行われていました。この母親たちは、そうした「大学入試に関係のない授業」を削らせて、「家庭科」の授業を自分たちで実現したことが誇らしげでした。
なんだか、A中学の良さを殺しているようにしか思えませんでした。
学校の情報公開の姿勢が不満で仕方がなかった親もいました。
「必要な情報は生徒に直接伝えています」と言われても納得しないのですね。
子供の動向を逐一詳細に把握しないと気が済まないようでした。
子供の成長を見守るのと、ヘリコプターのように上空を常時巡回するのは違います。
もちろん、子供のさぼり状況も把握せず、成績表も見たこともない、というのも困りますね。
適度な距離感が大事な時期だと思います。