今回は、新聞の折り込み広告として入っていた某塾のチラシを深読みしてみます。
そもそも最近は新聞に塾のチラシが入ることはめっきり減りました。新聞自体が読まれなくなっていますし、新聞の読者層も高年齢化したため、塾の宣伝ツールとしては効果が薄くなっているからです。
それでも入っていたこのチラシ、じっくりと見てみることにしましょう。
※この塾を持ち上げるつもりも貶めるつもりもありません。ただ単に同業者としての興味がわいただけです。
合格実績について
このA塾は、集団指導塾系列の個別指導塾です。
2026年の中学入試合格実績はこうなっていました。
◆御三家・最難関中 40名
こうまとめられるとわかりにくいですね。個別の学校はこうなっています。
開成・麻布・桜蔭・女子学院・雙葉・駒場東邦・聖光学院・渋谷幕張・渋谷渋谷・豊島岡女子・栄光学園・灘・都立小石川
たしかに、いわゆる「御三家」と「最難関」には違いありません。御三家とよばれる「武蔵中」が抜けているのが気になりましたが、きっと合格者ゼロだったのでしょう。
ただ、気を付けなくてはならないのは、これらの学校の試験日がずれている点です。一人の優秀な生徒が複数校の合格を出すことは普通なので、40名というのはあくまでも「延べ人数」です。実は、「男女御三家」という勝手なくくりが良く使われるのは、開成・麻布・武蔵・桜蔭・女子学院・雙葉、この6校の入試日はすべて2月1日なので、合格者数のカウントが明確なため、塾同士の実績比較に便利なのです。もっとも今年はサンデーショックとよばれる、女子学院だけが2日に入試日をずらしているのでその限りではありません。
また、あまり使われませんが「難関10校」というくくりもあります。御三家6校に加えて、駒東・慶応普通部を加えます。これでは8校ですね。2月1日のみの受験校というのは意外と少ないのです。まあ早稲田実業・早大学院あたりを加えてもよいでしょうか。
間違いなく難関校の渋谷幕張・渋谷渋谷・豊島岡を入れたいのですが、そうすると数字が濁ります。また栄光・聖光も入れるわけにはいきません。まあこれはあくまでも学校のレベルとは違い、塾同士の実績比較として業界内で計算しているだけです。
みなさんも、もし塾の合格実績を比較したいのなら、2月1日の1回しか受験チャンスが無い学校の実績を比べると、塾の実力がよく見えると思います。
ここにあげられていた学校の入試日はこうなっています。●が1回のみの試験日、〇が複数回の試験日となっています。
入試日と、詳細な合格者数をまとめました。

HPで、1名合格までの学校を公表している姿勢には好感がもてます。首都圏76校舎あるそうです。
ただし、A塾は個別指導塾ですから、系列の集団指導塾と両方に在籍していた生徒が多かったことが予想できます。したがって、この合格実績も、このA塾の手柄なのか、それとも集団指導塾の手柄なのかはわかりません。
もっとも、最近は複数の塾を利用する生徒もけっこういますので、塾の合格実績は割り引いて考える必要があるのです。
阿漕な塾になると、それを狙って、優秀な生徒が多い他の塾の生徒を積極的に、「特待生」「無料テスト」などで釣ろうとするところもあるくらいですから。
その他の実績については、
◆早慶・GMARCH中
◆難関進学・附属中
◆上位進学・附属中
と、あわせて4分類で学校を分けて、それぞれの合計合格者数を掲載していました。
このように、複数の学校をまとめてグループを作り、その合計人数を広告に載せるという広報戦略は、個人的には好きになれません。
上述したように、塾の実績を「良く見せる」やり方だからです。
それよりももっと問題なのが、学校を塾が勝手にグルーピングしているところです。
これを見ると、あきらかに
御三家・最難関中>早慶・GMARCH中>難関進学・附属中>上位進学・附属中
という4段階の区分となっています。
まあ、御三家や早慶が偏差値的にも人気的にも上にくるのはわかります。これに異論がある方はいないでしょう。
しかし、難関進学校と上位進学校に分けることで、それぞれに含まれる学校をあきらかにこの塾が勝手に上下差をつけていることになりますね。また、同じ附属中でも二つに分けました。
受験産業は、偏差値至上主義なのは仕方がありません。そういう価値観の世界ですから。
しかし、入試が終わったのなら、すべての受験生は等しく「おめでとう!」だというのが、最低限のモラルだと私は思うのです。
「僕はA塾に通って合格したけれど、ちらしを見たら、下のランクの学校扱いなんだな」
そんな風に思わせることに、私の良心は痛みます。
「進学する学校が一番良い学校だ!」
私が卒業生に接するときの基本姿勢です。
合格者の声
ちらしには、十数名の「合格者の声」が、氏名・合格校・顔写真とともに掲載されていました。皆うれしそうな笑顔です。
大勢の生徒を受験指導してきた立場の私としては、どの塾だろうと、こうして志望校に合格した子の様子を見ると、何か心が温かくなる思いです。
ただし、問題がありますね。
それは、合格校すべてと、氏名まで出してしまった点です。誇らしい成果として保護者も承諾したのでしょうけれど、世間にわが子の個人情報をこうした形でさらすことには相当な注意が必要だと思います。最近は、多くの塾で合格者氏名を出さなくなっているのですが。
まだ紙ベースなのが救いです。
たかがチラシ1枚といえど、その塾の姿勢がうかがえます。