中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

ロジカルライティングに必要なインプットのやり方

前回の記事で、ロジカルライティングの前提としての知識の大切さについて書きました。

では、どのように知識をインプットすればよいのでしょうか?

知識のインプットのやり方としては、3通りあります。順に説明します。

 

(1)単語としてのインプット

 知識のインプット方法としては、誰もが最初に思いつくのはこのやり方でしょう。英単語を例にします。英単語を一覧にした暗記用の参考書、昔からたくさんありますね。

 

◆『英語基本単語集』(旺文社)・・・赤尾の豆単です。これが「英単語学習参考書」の嚆矢だそうですね。1942年!に旺文社から創業者の赤尾好夫氏が編集し出版された「英語基本単語集」は、「豆単」と呼ばれてベストセラーとなりました。

 もともとは、アメリカの教育学者のソーンダイクが作った英単語統計表がモデルになっています。英語の新聞や文献から頻出単語を抽出したのですね。同様の手法で、日本の大学入試問題や教科書から頻出後をまとめたのです。

 

 さすがに私の世代ではもう「豆単」の時代は終わっていました。

 

◆『試験に出る英単語』(青春出版)・・・1967年に登場したこの単語集は、頻度順が明確でより実践的だったため、たちまちベストセラーとなりました。私もずいぶんお世話になりました。東京では「でる単」と呼ばれましたが、関西では「しけ単」だそうです。

 

◆『英単語ターゲット1900』(旺文社)・・・1984年に登場。これは現在でも中高で副教材として使っている学校が多いですね。

 

『DUO』(アイシーピー)・・・1994年登場です。今は「DUO3.0」となっています。

書店の英語参考書コーナーに行くと、ターゲット1900とDUOが平積みされているのをよく見かけますね。生徒に聞くと、「ターゲット派」と「DUO派」に分かれるようです。実はこのDUOは、例文を通して単語を学ぶというコンセプトです。

 

思わず懐かしの英単語集について語りそうになってしまいましたが、本題に戻ります。

英単語を「単語」の状態で丸暗記することは、大量の情報をインプットするのに適していますが、それだけでは使い物にはなりませんね。

ただしDUOのようなコンセプトであれば、後述するインプット法につながります。

 

同様に、ロジカルライティングに必要な知識も、ただ単語として暗記するだけでは役立ちません。

 

(2)文章を通したインプット

 たとえば「円安」という単語を例にしましょう。

「円安=外国通貨に対して円の価値が低くなること」

こう覚えたとします。まあ一般的には対ドル相場がわかりやすいので、「円の価値がドルに対して低くなること」と覚えてもさほど間違いとはいえません。

 

こうして「円安」という単語をインプットした生徒に対して、

「1ドル=140円から1ドル=150円になることを何という?」

と尋ねると、「円が高くなっているから円高!」と答える生徒が、残念ながら多いのです。小5の段階では7割くらいかな。小6の夏を過ぎても、2割くらいの生徒がそう思っています。

そこで、「逆だ!」と指導すると、「そうか。1ドルが140円から150円に高くなっているけど、そういうときは円高の逆で円安なんだな」と覚える生徒が多数出てきます。

これが単語としての暗記の問題点なのです。

 

たとえば「やませとは?」程度の単純な知識なら、「東北地方の太平洋側に初夏に吹く冷害をもたらす湿った北東の冷たい風のこと」と覚えれば問題ありません。しかし、「円安」のように、その原因や影響が複雑なものについては、単純な暗記では何ともならないのです。

「円安の進行により、石油や天然ガスのような輸入に頼っている資源の価格が上がり、エネルギー価格の上昇をまねいている」

「円安のため、日本から海外への旅行意慾が低下している反面、インバウンドとよばれる海外から日本への旅行客が増加した」

「輸出で利益をあげている日本の企業は、円安による増収分を内部留保とする傾向が強く、給与には反映されていない」

「加工貿易の時代と異なり、現代では円安が単純に輸出企業の利益につながらないという問題がある」

 

たとえばこれくらいの文章を読み、その内容をきちんと考えることではじめて、「円安」という事象が理解の段階に進むのですね。

 

(3)情報を出し入れすることでインプットを強化

 これは、インプットした知識を使った短文作成をすることで、よりインプットを強化するというやり方です。

たとえば、「都心回帰現象」という語句を使った短文作成をさせてみるのです。

「都心回帰現象で都心に人口が戻ってきている」

これでは説明が足りないですね。

「1990年代になると、バブル崩壊により都市中心部の地価が下落し、郊外から人口が都心部に戻る都心回帰現象がみられるようになった」

せめてこれくらいは書いて欲しいと思います。

これは一見すると「アウトプット」しているように見えますが、こうしてアウトプットしながら、知識をより強固にしていく効果を狙っていますので、むしろインプットの技法のひとつと考えるべきでしょう。