中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

ロジカルライティングに必要なインプット

ロジカルライティングのためには、インプットが非常に重要な意味を持ちます。今回はこのことについて考察します。

ライティングはアウトプット技術ではない

 

「うちの子は記述問題が苦手で」

そう言って私のところに相談に訪れる子に共通した点があります。それは、皆知識量が少ないという点です。

知識が無いから書けないのです。

それが、あたかも「知識」と「書く技術」は別のものだと思ってしまうのでしょうか。あるいは、知識の無さを自覚していないのかもしれません。

 

材料が無ければ料理はできない。

単純なことですね。

ずいぶん以前に見たバラエティ番組で、プロの料理人と、料理素人のタレントが料理対決をするものがありました。ただし、タレントが予算10万円なのにたいして、プロの料理人は予算が1000円。これでフルコースを作ったのです。結果は予想がつきますね。どんなに優れた技量を持っていても、材料が乏しければ何ともなりません。

 

失われた30年

例えば例として、こんな問題を考えてみましょう。

「失われた30年」について、その原因と内容を説明しなさい。

 

もし「失われた30年? それって何?」という生徒がいたら、おそらく一文字も書くことはできないでしょう。

大人である我々はどうでしょうか。別に本で勉強した、あるいは学校で習ったことがなかったとしても、普通に生活しているだけで、さまざまな情報がインプットされているため、記述することはたやすいと思います。

 

事象としては、以下のような内容がすぐに思いつくでしょう。

◆経済成長の停滞: GDP成長率が低迷し、世界経済における日本の存在感が低下した

◆デフレの長期化: 1990年代後半から物価が上がらない、あるいは下がり続けるデフレに陥り、個人の消費意欲が減退した。

◆賃金の横ばい: 企業の利益は増えても、将来への不安から内部留保に回され、給料がほぼ上がらない状態が続いた。

◆資産価格の下落: バブル崩壊により、日経平均株価や地価がピーク時から大幅に下落し、回復に30年以上を要した。

 

事象については、こんなところでしょうか。とくに庶民目線でいうと、給与水準が上がらないことが大きいですね。この30年で、ヨーロッパ先進国は給与水準が2倍以上、アメリカは3倍以上に増えていますが、日本はほぼ横ばいなのです。

海外旅行に行くと、「ちょっとランチを食べただけで5000円!」と目が飛び出る思いですが、現地の人からすると、日本人にとっての1500円のランチの感覚ということなのでしょう。日本はすでにGDPでもインドに抜かれて5位のようですが、日本の一人当たりGNI(国民総所得)ランキングは、韓国や台湾に抜かれ、22位(別の資料では46位!)です。もはや「先進国」と胸を張ることができなくなっているのです。

 

その原因も複雑な要因が絡み合っています。

◆バブル崩壊と不良債権処理の遅れ・・・1990年代の不動産・株バブルが弾けた際、金融機関が抱えた膨大な借金(不良債権)の処理を先送りしたため、経済の活力が奪われた。

◆産業構造の転換失敗・・・世界がIT革命やデジタル化に進む中、日本は「古い成功モデル」に執着し、新産業への投資や新陳代謝が遅れた。
◆少子高齢化の進行・・・生産年齢人口(働く世代)が減少し、市場の縮小や供給力の低下を招いた。また社会保障費の負担が増えた。

◆企業の過剰貯蓄・・・過去の負債の教訓から、企業が設備投資や人材投資を抑え、現金を貯め込む傾向(デレバレッジ)が強まった。

◆政策の失敗・・・公共投資を増やすことで国の借金が増え、消費税増税により消費意欲が減少した。いわばアクセルとブレーキを同時に踏む政策が続いた。

◆国内消費行動の低下・・・「不景気感」が続くため、将来に対する不安から消費者の支出が抑えられた。

◆政治への不信感・・・社会保障制度、とくに年金保険は、政府に対する信頼が前提の制度である。たとえ税金や保険料が高かったとしても、自分の老後が安泰なら、人々は安心して消費行動をとれるが、そうでないのなら、自己防衛で貯蓄するほかなくなる。2019年に金融庁が、「老後には2000万円の貯蓄が必要」と公表して騒動となったように、老後資金のための貯蓄が、経済活動の低迷につながっている。

 

これくらいの材料があって、はじめて料理にとりかかれます。

 

まずは、ロジカルライティングに取り組む前提として、知識が重要である、つまりは知識のインプットが大切であるといえるのです。