
2026年の海城中 帰国生入試の英語の問題は、英語の長文読解が2つ、それに自由作文という形式でした。
ここ3年ほどは同様のスタイルですね。
大問1 自由作文
Write about an experience that made you feel you were different from somebody you know. Explain how the experience affected the way you think or act.
最初に字数指定なし(解答用紙1ページ分)の自由作文があるのが特徴です。
今年の課題はこれでした。日本語に直すとこんなかんじです。
知り合いとは自分が違うと感じた経験について書いてください。その経験があなたの考え方や行動にどのような影響を与えたかを説明してください。
これは、海城によらず、帰国生入試の定番のスタイルですね。
◆自分の経験を書く
◆その経験から自分がどのように成長したのかを書く
実はこれは小学生が最も苦手とする出題です。
彼らは、与えられた条件にしたがって記述するトレーニングは積んでいます。国語の長文記述や社会科の記述問題ですね。
しかし、「自分のこと」を書くとなると、とたんにペンが止まるのです。
「自分の経験? いったい何を書けばいいんだろう?」
思考停止に陥ります。
しかし、これは無理もないのです。なぜなら、彼らはあまりにも人生経験が短いのです。しかもそのわずかの人生経験も、浅いのです。
しかも、そうした思考をした経験もありません。学校でも塾でもそんなことは求められたことはありませんでした。
小学生(中学生も)の時期は、インプット主体の時期です。あらゆることを吸収し、自分の血肉としていく時期なのです。したがって、アウトプットよりもインプット優先でかまわないのです。
最近ようやく、「アクティブラーニング」「探求学習」の弊害が話題にのぼるようになりました。
大学生にもなって、ネットで拾ってきたような情報を繋ぎ合わせて文章をでっちあげることしかできない現実が見えてきたのですね。自分で文章をでっちあげるのならまだしも、生成AIに頼り切りの学生も多いのです。彼らはこれを「チャッピーにまかせる」と言っています。ChatGPTはたしかに優れたツールですが。
最初に生徒からこの言葉を聞いたときは何のことかわかりませんでしたね。
「もう、世界史の課題が難しくてさ」
「どんな課題が出たんだ?」
「フランス革命が日本に与えた影響だってさ」
「ほお。なかなかいいところをついてきたな。」
「それは先生は好きかもしれないけど。もう他の生徒達は、チャッピーにたのむしかないって言ってるよ」
「チャッピー? 誰だそれ?」
「知らないの? chatGPTのことだよ」
「はあ」
「でも俺は、そういうの嫌いだからさ。先生、何かヒントちょうだい」
「なんだ、他人に頼るのはOKなんだな」
「お願い」
「そうだな。とりあえず中江兆民あたりを主軸にすえると書きやすいと思うぞ」
「お、兆民ね。サンキュー!」
とまあそんな会話があったのです。
さて、インプット主体の学習をしてきた小学生に、いきなりこの出題、かなりのハードルだと思います。
ここは、目を惹くような体験、採点者をうならせるような内容である必要は全くありません。
もちろん、発展途上国のNPOに参加する親に帯同して、貧しい農村やスラム街で様々な体験をしたのなら別ですが。
大半の帰国生たちは、ニューヨーク・シカゴ・ヒューストン・サンノゼ・ロサンゼルス・ロンドン・パリ・ブリュッセル・アムステルダム・フランクフルト・デュッセルドルフ・シンガポール、そういった先進国・都会に住んでいたと思います。(これらの都市は、日本人駐在員が多いのです)
しかも、日本ほど治安がよくありませんので、自由に外出する機会も多くはありません。そんなに「変わった」経験をするチャンスも多くはなかったはずです。
ここはごくオーソドックスに、「日本人である自分が、周囲の現地の人たちとはここが違っていた。だがそのことでこういうことに気づけ、成長できた」という流れで書けばよいでしょう。
それなら、定番の作文ですので、事前に準備しておけばよいのです。
大問2 長文読解
文章中の空欄に当てはまる短文を選ぶ問題です。
「Before 1920,women in the United States did noto have the right to vote.」
ほお、アメリカの婦人参政権についての文章のようですね。ただしそこには、キルトを縫う写真が載せられています。選挙権の話じゃないのか? もう少し読み進めてみます。
「However,before and after women had the right to vote, many used quilts as a way to share their political beliefs.・・・But with quilts, they could show support for politics and patriotism.」
なぞの展開になってきましたね。キルト(あのキルトです。綿入りの布を縫い合わせた)を作ることで政治信条や愛国心を表す?
「patriotism」、この単語をみんな知ってたかな?
私はこの単語を、高校生の頃「でる単」で覚えた記憶があります。たしかこの単語は最初から4番目、traditionとreligionの間にありました。未だに丸暗記が生き残っているのは、若いころの暗記がいかに大事かということですね。
文章を読むと、どうやらキルトの模様に、たとえば政党のシンボルマークや国旗をデザインすることで、政治信条を表明するようですね。
「Even today, quiltmakers still make quilts to show support for or against politicians, parties, and platforms.」
今日でも、キルト作家たちは政治家や政党、政策への支持や反対を示すためにキルトを作り続けている。
知りませんでした。
キルトにそんな深い意味があったとは。
気になったので少し調べてみると、いろいろ出てきました。
たとえば、黒人奴隷としてアメリカに生まれたハリエット・パワーズという女性は、アフリカや聖書を題材としたキルトを作りました。キルトだけが唯一許されていた「趣味」であり、文字を使えない彼女が表現する唯一の手段であったのだそうです。
南北戦争のキルトや、選挙の投票を促すキルトまであるようですね。
とても興味深い話題なのですが、小学生にどこまで理解できたのでしょうか。
大問3 長文読解
「Think of what you did today. Did you switch on a lamp to do your schoolwork? Perhaps you turned on the tap to brush your teeth. All of these actions involbe using natural resources! Natural resources include things like sunlight, water, and minerals.」
冒頭の1文で、家庭生活に関する文章かな? と思いそうになりましたが、どうやら環境問題につながりそうな雰囲気ですね。
しかしこの後の文章は、銅の性質や特徴、有用性などについて続きます。
いわゆる論説文です。
小学生たちは、銅についてこんなに考えたことも読んだこともないでしょう。
ある意味とても勉強になる文章なのですが、英語だからなあ。
「Copper is an important resource, used for many purposes. One important quality of copper is that it conducts heat and electricity extremely well.」
これ、copperの意味がわからないとお手上げですね。いったい何を言っているのかさっぱりわからないでしょう。途中の文章から推理して、「あ、これって銅?」と気づけばよいのですが。
たとえば、「electricity extremely 」を見て、「ああ電気の伝導性ね」とわかるのかな?
「In other words, these metals rust over time. However, copper is an exception. When ezposed to oxygen, copper develops a protective green layer on its surface. This layer is called patina.」
「つまり、これらの金属は時間の経過とともに錆びます。しかし、銅は例外です。酸素にさらされると、銅の表面には保護層となる緑色の膜が形成されます。この膜は緑青と呼ばれます。」
「patina」なんて単語、知ってるのかな?
問は記号選択ですから何とかなるとしても、難しいですね。
一般入試の問題も、とくに社会科は長文記述問題を出す学校ですが、帰国生入試の英語も一筋縄ではいかない問題です。
「帰国生だから入りやすい」学校では全くありません。
入念な準備が必要です。
英語力というよりは、幅広い知識と教養、そして論理的記述力が必要な問題でした。
過去の出題分析はこちらをお読みください。