中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【入試問題研究】2026 渋谷教育学園幕張中 1次 社会科

先日行われた、2026渋谷幕張中 1次 社会科の問題を見て見ます。

「研究」というより「雑感」です。

大問1 祝日問題

 祝日をネタとしたリード文、それに基づく総合的な出題でした。

祝日問題の定番といえば、由来から日本の伝統文化につなげるものが多いのですが、さてこの問題はどうだったでしょうか?

 

リード文はなかなか読み応えのある内容です。祝日の一覧表があり、祝日法の話題、建国記念の日が祝日法では定まらずに政令で日が決まったこと、さらにそれが「紀元節」であったことが書かれています。この話題、なぜ祝日法で定められなかったのかなど考えさせると面白いのですが、さすがにそこまでは問題にされていませんでした。また、海外との比較も書かれています。実は日本はG7最多の祝日数となっているのです。それなのに、有給休暇取得率は低いのですね。このあたりも思考力系の論述問題のよいネタですが、そこも出題にはなっていませんでした。

問1は有給休暇を答えさせる問題です。こういった常識問題、実は参考書には書かれていないので要注意ですね。実は私のっ講義では普通に教えています。もちろん「有給休暇」という語句を覚えさせることが主眼なのではなく、「なぜ日本では取得率が低いのか」について考えさせるのです。主要国の大半が9割前後、国によっては100%を超えているのに、日本は63%ですから。ここから、首相の「働く×5」発言が引き起こした波紋や、ワークライフバランスについて考える授業を展開するのです。

問2は教科書検定についての問題でした。教科書流通の流れ図が出ています。私なら、一般書籍の流通との違いとその理由を考えさせたいところですが、さすがに難しすぎるかな。ただし、教科書検定の問題について答えさせる記述が出されていたのは評価ポイントです。通常なら、教科書検定の問題点=憲法で禁止されている検閲にあたる、という議論について書かせるところです。しかし、この問題は逆でした。

「・・・『教科書検定は検閲に該当し、憲法に反する』という意見があります。この意見に対して、国側の反論として考えられることを、答えなさい」

なるほど。そう来ましたか。一般に教科書検定問題については、執筆者側に名を連ねることの多い学校の先生の立場としては、どうしても批判的になりがちです。家永教科書裁判の原告にも学校の先生方が名を連ねていました。しかし国側の反論を考えさせるという着眼点は面白いですね。

問4は、春分・秋分に関して、都市によって日付が異なり理由の記述です。これ、思い切り理科ですね。

問8は、祝日問題の定番、日本の伝統行事に関し、5節句で行う内容の正誤問題です。実は子どもたちが最も苦手とする分野です。そもそも五節句をきちんと言える子も少ないのです。人日の節句・上巳の節句・端午の節句・七夕(しちせき)の節句・長陽の節句、この語句すらまともに答えられません。まして、その意味や由来、行事の内容など怪しいものですね。こうしたことは、塾や参考書で学ぶべきことではありません。

とはいうものの、現代社会のライフスタイルとは乖離しているのも事実です。マンションでは門松やイワシの頭など飾れませんし、豆まきもままならないでしょう。

そこでお勧めなのが、この絵本です。柴犬が伝統行事や和風のくらしについていろいろ教えてくれる内容です。絵柄が何ともほんわかしてなごみます。本当は幼稚園~小学低学年対象なのですが、別に高学年で見ても悪いことはありません。シリーズでいろいろ出ていますが、まずはこの1冊を見てください。

問11は、生産年齢人口減少のグラフと、労働力人口増加のグラフを見て、外国人労働者の増加以外の要因を2点挙げさせる問題でした。これはなかなか考えさせますね。これも普通なら、「不足する労働力を補うため外国人労働者を積極的に雇用する必要がある」と書かせるタイプの記述か、あるいは問題点を答えさせる、そうしたタイプの出題になりがちです。どうも渋幕の傾向としては、「自分の視点をしっかり定めて意見を持つ」より、「分析・把握」段階までを書かせるほうを優先しているのではないでしょうか。

 

大問2 歴史総合

問5は、稲荷山古墳の鉄剣に見られる人名表記の特徴を答えさせる記述問題でした。着眼点がおもしろいですね。

問10は、岡山藩主の系図や徳川家の系図を見て、江戸時代の将軍家や大名家の当主の人名に共通する特徴を説明させる問題でした。これは簡単です。

問11では、さらに発展させています。江戸時代初期の大名配置図を見て、大名の名前の特徴を60字以内で答えるという記述です。親藩・譜代・外様の配置と縁戚関係をからめてまとめるというものですね。面白い出題ですが、少々くどいかな。問11があるなら問10は不要だったと思うのですが。

 

大問3 地理総合

 問3では、全国・大阪府・京都府・滋賀県・兵庫県における一戸建て住宅と共同住宅の割合のグラフからの出題でした。滋賀県のものを選ぶだけなので難しくはないですが、これは惜しいですね。ここから住宅問題、とくに最近のマンション価格の高騰やその原因に展開させられるネタです。 これも渋幕らしく、そいういう方向にはいかないのでしょう。

(2)で、京都市が景観規制を緩和したことに関連する記述です。緩和した規制の内容とその目的を書かせます。これも、今まで多くの学校で出題されてきたのは、例えば京都市のコンビニの写真などを出して、どうしてこのような外観となっているのかを答えさせる問題が主流でしたので、一ひねりしてあるということでしょうか。

問5 最後の記述は、都心5区の人口推移のグラフ、オフィスの空室率のグラフから、オフィスの空室率が上昇した理由についての問題です。「2020年以降の社会的状況を踏まえて」とありますので、書く内容は決まります。

 

今回は、渋幕らしい良い問題でしたね。

教科書を超えた知識、複眼的な視野、ただし自分の考えは出さない、このあたりが特徴的な問題でした。

渋幕というと、リベラルなイメージがあるのですが、案外そうでもないのかな、というのはこの入試問題を見た感想です。