中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

もし500万円あったら? 大学生の答は・・・・

生徒や卒業生たちと話をしていて、ずっと気になっていることがあります。

子どもたちの「金銭感覚」についてです。

今回はそうした話題です。

お米の価格はいくら?

小学生~中学生、大学生になった子にも、この質問をしてみます。

「今お米の価格っていくらくらいか知ってる?」

即答できた子は一人もいません。

「全く見当もつかない」

これが答です。

その理由は3つあります。

(1)買い物に行かない

(2)ニュースを見ない

(3)家で話さない

 

そもそも、スーパーに行く子が少ないのです。そういえば、スーパーで子どもを見かけなくなりましたね。幼稚園以下の子を連れている母親などはよく見かけますが、小学生以上の子が単独で買い物している姿、ほとんど見ない気がします。彼らはせいぜいコンビニくらいしか行ったことがないのです。大学生になっても、一人暮らしをしていなければ、そうした買い物に行きません。服を買いにはいっても、お米なんか買ったこともないのでしょう。

 

たとえ買い物に行かなかったとしても、「令和のコメ騒動」がこれだけニュースになっているのです。ちょっとテレビをつければ、新聞を開けば、毎日のようにコメ価格が報道されています。1年で2倍になりましたね。しかもまだ続いています。

ちなみに、1918の「米騒動」のときには、半年で1.7倍に高騰したことがきっかけでした。つまり、世が世なら、「暴動」が起きるレベルの高騰です。

それを「知らない」とは。おそらく興味が無いのですね。なぜならご飯は、何も言わなくても毎日食卓に出てくるものだからです。自分でコメを買いにいかないのなら、「他人事」なのでしょう。

 

こうした、異常なコメ高騰について、家庭でどれくらい話題になっているのかが気になります。単なる異常気象では片づけられないほど複雑な背景がからんでいます。まさに「情報分析・考察」を実践する社会科教育の宝庫です。そうした教育的意義は脇に置いておいても、食卓で話題に上らないのでしょうか。

 

塾の月謝はいくらだった?

 

大学生になった彼らにいつも聞くのです。

「小学生の塾の月謝って、毎月いくら引き落とされていたか知ってる?」

これに即答でき子は皆無です。

「まったくわからない」

としか返ってきません。

「それでは、だいたいいくらくらいだったと思う?」

この質問に対しては、3万円~30万円まで答が散らばります。

30万円! 個別指導ではなく、普通の集団指導塾の価格がこれだそうです。

子どもたちは、家計について無知すぎます。

 

もし500万円あったら何につかう?

この「500万円」の根拠は、中学受験をした彼らが、小学生時代に親に出してもらった教育費というほどの意味です。もちろん家庭によってはもっと高かった場合もあるでしょう。もっと低かった方もいるかもしれません。まあ、難関校に進学するご家庭では、500万円くらいは普通にかかったと思います。

 

「今、君の目の前に500万円が積まれているんだ。ちなみに100万円で厚さが1cmだから、5cm、目の前に積まれている。これを、君の好きに使っていいよ、と言われたら、何に使いたい?」

 

「車を買いたい」

「免許をとりたいです」

まあ、この2つは想定内です。ただし、この意見を出す子は極めて少数です。最近若者が車離れしていることが話題になっています。それは本当なんだなあ、と実感します。

 

「趣味に使いたいです」

「趣味って?」

「自分、音楽やってるんで、ギターとか買いたいです」

「私は、新しいピアノが欲しいな」

いいですね。いかにも若者らしくって。

 

「大学の学費にします」

過去に1名だけこう答えた子がいました。偉い! 偉すぎます。さぞかししっかりしたご家庭で育ったのだろう、そう思います。

 

「旅行に行きたいです」

「例えばどこに?」

「ヨーロッパかな」

これも想定内ですね。大学生ですから、見聞を広めてもらいたいと私も思います。小田実が「何でも見てやろう」を書いたのは1961年です。それから長い間若者のバイブル的な本でしたが、今の大学生は知らないでしょうね。

沢木耕太郎の「深夜特急」は1986年の著作です。これも実に面白かったですね。

これらの本のように、貧乏旅行をしないまでも、やはり大学生時代には少しでも見聞を広めるべきだと思うのです。

個人的には、「世界一周」などしてもらいたいですね。「ワンワールド」や「スターアライアンス」といった航空連合が販売している「世界一周チケット」、1年間有効で36万円です。

しかし、この「海外旅行」と答える子もけっこういるものの、最多ではないのです。

最も多い答はこの2つです。

 

「貯金します」

まあ、貯金はわかります。でも、あくまでも架空の話なのですから、夢が無さすぎですね。これは、堅実というよりは、「別に欲しいものもないし、やりたいこともない」ことを意味しているのでしょう。

 

そして、最多の答はこれでした。

「投資します」

みなさん、どう思われますか?

もしわが子が、こう答えていたとしたら。

「うん、さすがわが子、しっかり育ったな」と思うのでしょうか。

 

古来より、金融業は忌み嫌われる職業とされていました。イスラム世界では金利をとることが禁止されています。もっとも別の形の「イスラム金融」の仕組みはあって、これはこれで興味深いのですが、ここでは触れません。また、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」で、契約履行を求めただけなのに財産没収&改宗までさせられた「シャイロック」はユダヤ人の金貸しでした。ドストエフスキーの「罪と罰」で、大学生ラスコーリニコフに殺された老婆も高利貸しでした。日本でも、儒教道徳の影響なのか、武士は金勘定に疎いのが「美徳」でしたね。

古今東西、「額に汗して働く」ことで対価を得ることが貴ばれ、お金を右から左に動かすだけで利益をあげることが蔑まれたのでしょう。

さすがに現代社会では事情は異なります。

しかし、18歳の若者の夢として、「500万円あったら投資します」。はたしてよいものなのでしょうか?

そこには、「自分の身体を動かさずに、上手に金儲けをしたい」というさもしい世相が見えるようで、嫌なのです。

 

そういえば、1948年に起きた「光クラブ事件」、現役東大生だった山崎 晃嗣が、闇金融業で、数か月で今のお金で数十億円という大金を手にするも、1年もたたずに逮捕され、巨額の負債をかかえて自殺するという事件でした。これを題材とした小説に、「青の時代」(三島由紀夫)があります。