
今回は、中高大生の時期の海外留学について考えてみます。
すでに何回も留学している、あるいは海外に何かの縁がある(父親が赴任中、親戚が住んでいる、幼少期にそこで育った等)方に向けた記事ではありません。海外に縁もゆかりもないご家庭の子どもが初めて留学する時期について考えてみたいのです。
学校行事としての「海外研修」と「留学」の違い
私立の学校では、中学生の段階から、「海外研修」をプログラムに入れているところが多いですね。しかし、この「海外研修」と「留学」は似て非なるものです。
ある「国際」を校名に冠する学校のプログラムを見てみましょう。
◆オーストラリア研修(10日間)・・・高2
◆台湾/カンボジア/フィンランド研修(6日間)・・・高2
◆シンガポール研修(6日間)・・・高2
◆オーストラリア留学(3か月)・・・中3
◆ニュージーランド留学(8カ月)・・・中3~高1
◆カリフォルニア短期留学(10日間)・・・高校生
◆アメリカ/カナダ/イギリス留学(10か月)・・・高1~高2
なかなか充実したプログラムですね。
しかし、さすがに10日間程度では「留学」にはならないでしょう。最低でも3か月、できれば1年間は行かないと、「学び」は得られません。
こうした学校が用意している留学プログラムのメリットは、「復学」にあります。3か月以上も学校を休めば、出席日数が不足し、下手をすれば「留年」させられます。学校によっては、一旦除籍される場合もあるのです。それが簡単に元の学年に復帰できるのが最大のメリットですね。
次に、学校が用意しているものではない、自分で探す「留学」について考えてみます。
中1・中2での留学
この時期の「留学」は、正直に言って、あまりお勧めできません。すでに相当な英語力がある生徒をのぞき、大多数の生徒が、中学に入ってから本格的に英語を学び始めたと思います。そこで留学先は英語圏になるでしょう。例えば中2の夏休みに英語圏に行くとして、十分な英語力は身についていますか?
◆現地の学校の授業が理解できますか?
◆見知らぬ異国で単独行動ができるでしょうか?
◆トラブルを自己解決できる英語力はあるでしょうか?
おそらく、どれも不足していると思います。
ということは、この時期の「留学」は、真の意味の「留学」というよりは、「留学風旅行」になる可能性が高いのです。
中3・高1での留学
おそらくは、中高一貫校のメリットを活かし、この時期に留学を考えるご家庭が多いと思います。しかし、3か月以上もの留学ともなると、学校の出席日数が不足します。留年覚悟ならともかく、そうでないのなら、夏休みの短期留学しかチャンスはありません。
しかし、学校によっては、夏休み中に行事や補習が組まれていたり、あるいは部活の練習があったりと、夏休みをフルに留学にあてることはできないでしょう。
となると、せいぜい2週間程度の「留学」に行かせるのが限界となります。
実際に教え子に聞いても、この時期にカナダ・ニュージーランド・イギリスなどに10日~2週間程度で「留学」する子はよくいます。
「どうだった?」と聞いても、だいたいの答は「楽しかった!」ですね。
「すごく勉強になった!」「いろんなことを学べた!」という声はあまり聞かないような。 もしかしてみんな謙虚なのか?
2週間程度の「留学」は、前述したようにただの「留学風旅行」にすぎません。それでも観光地をめぐる旅行とは異なり、ホームステイ体験や、現地の学生との交流体験などがあるので、よい経験にはなると思います。
また、夏休み中には現地の学校が「閉まって」いることを考えなくてはなりません。留学業者のプログラムを見て見ると、どうやら現地の学校の教室を「借りて」の語学研修プログラムであったり、あるいは現地の語学学校での授業であったりするようですので、わざわざ海外に行って得られる語学の学びではないのです。なぜなら、そうした学校に集っているのは、「英語ネィティブではない」他国の子どもたちです。中国人や韓国人やブラジル人たちと「英語」でコミュニケーションをとることも楽しそうですが、英語の学びに利するレベルにはなりません。
つまりこの時期の「短期留学」は、親元を離れての異文化体験だと割り切ることが必要ですね。
もちろん、親元を離れて異国での体験は、たとえ1週間であっても強烈な刺激となって子どもの自立や成長につながることは間違いありません。
高2・高3での留学
大学附属校でないのなら、非現実的です。大学入試を捨てる結果になりかねません。高2の夏休みに10日程度なら支障はないかもしれませんが、わざわざ海外に「異文化体験」をしにいく時期ではないと思います。
大学での留学
今回一番お勧めしたいのが、大学に入学してからの「交換留学」です。
どの大学も、海外の様々な大学と提携して、互いの生徒を受け入れる「交換留学」を制度化しています。期間は、1学期~1年です。
この「大学の交換留学」のメリットは5つあります。
◆費用が安い
日本の大学に学費を納入していれば、現地の大学への授業料は不要です。海外大学、それも私立ともなれば学費は日本の学費の比ではないのです。とくに留学生は驚くような高額を請求されます。それが不要で、日本の大学への学費で留学できる、これが最大のメリットです。
◆日本の大学の単位になる場合も多い
1年間海外の大学で学んだ単位が、日本の大学でも認められる場合も多いのです。これを活用すれば、留年しなくてすみます。
◆海外難関大に通える
普通に進学しようと思うとハードルが高い大学の多くが交換留学プログラムに参加しています。
◆学びになる
海外の大学で1年間学ぶのです。異文化体験や語学留学レベルではない「専門的な学び」があるはずです。
◆大人である
大学生は18歳以上ですから「成人」です。自分で自分のことを決断することができるはずです。
大学交換留学の注意点
実際に卒業生から聞いた話にこんなものがあります。
◆英語圏は激戦
大学の交換留学には審査があります。北米・イギリスといった英語圏は大人気で激戦だそうです。「帰国生じゃないと通らないよ」とは、この審査に落ちた子の言い分でした。この子も英語は決して苦手ではない、むしろ得意なのですが、さすがにネイティブの生徒と競って勝てるはずはないそうです。
ちなみに、交換留学とはいえ、普通に海外大学に留学するのと同等の英語力が必要なのは言うまでもありません。TOEFLやIELTSのハイスコアを取っておきましょう。
いったいどれくらいの英語力が必要なのか、ネットで検索すると、「英検2級程度でも大丈夫」「英検準1級レベル」「中学校から高校1年で習った英語力で十分」といった情報がヒットしますが、信じてはいけません。こうした情報のほとんどが、「海外留学斡旋業者」が発信しているからです。ハードルを低く宣伝しないと集客できませんからね。また、「私は英語が苦手だったけれど何とかなった」という体験談もよく見かけますが、これも信じるのは愚かです。現地に行けばわかりますが、めちゃくちゃな文法・語彙力なのに、「厚顔無恥」を武器として積極的に現地に溶け込んでコミュニケーションをとっている日本人をよく見かけます。謙虚な私からすれば実に羨ましいのですが、「大学における専門的な講義を理解し議論できる語学力」とは別物です。
◆寮に入れないと悲惨
いくら学費が不要(日本の大学へ払う分だけ)といっても、生活費は別です。欧米の大学生は、高校を卒業すると実家を離れて大学の寮に入るのが普通です。その寮を中心としたコミュニティが形成されるのです。教え子の一人は、初動に遅れて寮に入れず、高額なアパートを借りることになったとか。とくにアメリカの大学の多くは「田舎」にあります。大学の寮に入り、キャンパス内で生活全てが完結できるようになっていますので注意が必要です。
また、中高生の留学で人気の「ホームステイ」については、大学生は利用しないことをおすすめします。たとえばアメリカの場合、ホームステイのホストファミリーには2種類います。「ボランティアホストファミリー」と「ビジネスホストファミリー」です。ボランティアホストファミリーは、文字通りボランティアですので、生活に余裕のある中流以上の家庭が行っているケースが多いのです。しかしビジネスの場合は、文字通り「金儲け」を目的としていますので、当たり外れがある、というより、外ればかりです。そもそも、英語も不十分なアジアからの留学生を家庭内に受け入れることで金を儲けようとするご家庭がどういったものなのかを考えればわかります。「家畜のえさのような食事だった」「召使のようにこき使われた」「セクハラされた」などといった声も直接聞いたことがあります。
◆非英語圏を狙う
英語圏が激戦ということは、非英語圏を選ぶと選抜されやすいということですね。国によっては(オランダ・スウェーデン等)、英語で実施される講義が豊富な大学もあり、授業を英語で受けることが可能です。
戦略的な留学
あるご家庭は、大学でヨーロッパのある国への交換留学を予定していました。そのために、中学生のうちから、毎年夏休みにはその国の大学のある町へ、短期留学(研修旅行)に行かせたのです。そして大学生になってから1年の交換留学に行きました。
これだけ情報に国境がなくなった現在でも、「百聞は一見にしかず」は真理です。何度も訪れて様子がわかっている町への留学ならハードルが下がりますね。