中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】受験直前のこの時期の「受験情報」の無意味

受験直前(真っ最中)のこの時期に、ネットに増加するのが「学校情報」「受験情報」です。今回はそうした情報への注意点をまとめます。

「〇〇中学は難化する」

これの逆に、「〇〇中学は今年は狙い目」というものもありますね。

「専門家」の方が詳細にデータを分析しているものも見かけます。

いったい「難化」「狙い目」とは何を根拠としているのでしょうか。

私が見たところ、入試問題の分析により「問題が簡単になる」「難しくなる」ことを論じたものはほとんどありません。それはそうですね。もし受験生全員にとって問題の難易度が「難しく」なれば、平均点が下がるだけですし、その逆は上がるだけです。上から順位がつくだけですから、そこに大きな差は生じないはずです。

よく受験終了後に、「〇〇中学は今年は算数が簡単で差がつかなかったから、算数が得意な生徒には不利だった」「△△中学は、今年は国語が難しかったので受験生全員が苦戦した。したがって国語が得意な生徒も得点できずに不利な入試だった」という分析を「したり顔」で語る専門家が多いのです。

しかし、ある学校の入試問題の難易度が「劇的」に変化することは考えられません。小学校の学校教科書レベルの入試問題しか出題してこなった学校が、突然麻布レベルの長文記述を課すことはありませんし、その逆も無いのです。

 

さて、予想として学校の入りやすさ・入りにくさを論じている際の根拠とされているのは、5つのデータのようです。

◆学校数・募集定員の増減と受験人口の推移

◆ライバル校の動向

◆模試の志願者数データ

◆出願数・受験者数増減の過去データ

◆出願状況

 

東京都、首都圏全体のデータ推移には何の意味もありません。社会情勢を論じるのには有効な数字ですが、子どもの合否には何の関係もありませんので。

 

ライバル校の動向については、とくに今年は「サンデーショック」ということで、これに関連して多くの情報が分析されていました。しかし、これも意味を成しません。「ショック」なのは、例年通りの進路指導が通用しない塾屋の立場にとってであって、受験生本人にとっては、今年の受験だけが全てですので。

サンデーショックは間を空けて訪れます。

1987/1998/2004/2009/2015/2026/2032/2037

的確な進路指導は経験から導かれます。

最低でも3回くらいの「サンデーショック」経験がなければ、適切な指導など無理でしょう。

ということは、2004年当時に、第一線で進路指導を担当していた教師の年齢が35歳と仮定すると、すでに57歳です。大半の塾教師がそれより若いでしょう。もし30代なら、サンデーショック未経験の教師になりますね。だから「ショック」と大げさに騒ぐのでしょう。

もちろん意図的に保護者を煽ることで不安にさせ、塾の利益につなげるという姑息な計算も働いていると思います。ある意味塾屋は「不安醸成型産業」の側面がありますので。

 

多くの分析の元になっているのは、模試の志望者数推移と、過去の受験者数推移です。これにはほとんど意味はありません。模試の志望者数というのは、模試を受験するときに「第一志望~第五志望」くらいまで登録させられる、あのデータのことです。いったいどれくらいの受験生が、真剣かつ正直に登録したのかは不明です。第3志望くらいまでしか確定しておらず、あとは適当に埋めた、そういう方も多いでしょう。

そんな出自の怪しいデータに基づく分析には大した意味はありません。正確なデータ分析には、正確な「元データ」が必要です。そこが曖昧だと、結論も意味をもちません。せいぜい全体の傾向が漠然とつかめる程度です。

過去の受験者数推移に関しては、学校が正確な数字を公表してくれている場合、数字については信頼できます。しかしこれに関しても、「過去の」傾向が分析できるだけで、「だから未来はこうなる」という予測は不正確です。

 

私が今年見た情報には、「麻布は狙い目」というものがありました。

模試データで、麻布志望者が減少傾向だということのようです。

ああ、これはわかります。なにせ麻布という学校、校風にも入試問題にも「癖」がありますからね。「癖」というと語弊があります。唯一無二の「個性」がある学校というべきでしょう。

30年以上前から、「麻布を志望すると潰しが効かない」といって避ける受験生がいました。麻布対策として思考力・記述力に特化しすぎると、第二・第三志望校で苦戦するという意味です。もっとも、その程度で苦戦するようなら、そもそも麻布の高度な思考力・記述力には対応できません。

麻布に限りませんが、個性的な学校を受験する層は、難易度や倍率で学校を選びません。たとえ今年が「狙い目」だからといって、合格しやすくなるわけでは全くないのです。

 

「勢いのあるのは〇〇中学」

これも定番の情報です。

ここで「勢いのある」というのは、最近大学実績が伸びている、出願者数が伸びている、偏差値が上がっているということに加えて、「新しいことをやっている」学校という意味のようですね。

ここで名前が上がる学校は、だいたい同じです。

◆女子校から共学校化した学校

◆名前を変えてリニューアルした学校

◆「国際」「理系」「医学部」に舵を切った学校

◆教育理念に英単語が使われている学校

◆最近よくネットニュース等で名前を見るようになった学校

こんなところでしょうか。

これらの学校が「悪い学校」だとは私も思いません。たしかにある種の「勢い」を感じるのも事実です。目覚ましく大学実績を伸ばしている学校もありますね。

しかし、「勢いがある」ことを理由として学校を選ぶのは愚かです。

これらの学校の多くは、広告宣伝に長けています。それがネットニュースや雑誌特集などに名前が多く上がる理由です。

私立中高の建て直しに特化した「コンサル」も存在します。また、ある「勢いのある」学校では、外資系広告代理店から広報担当者をヘッドハンティングしました。

そうした「厚化粧」の奥にある学校の本質をきちんと見て学校を選ばなくてはなりません。

 

本当は、1月になったら「ネット断ち」をするくらいでちょうどよいのです。