
昨年末の記事「【記述】書けない子、書き出せない子」で、「インプットを増やすことが大切」だと書きました。
今回はそれについての記事となります。
情報がないと何も書けない
例えばこう考えてみましょう。
我々大人は、文章を書くことに習熟しています。たいがいの文章なら苦もなく書くことができるだけのトレーニングを積んできているのです。したがって、とくに自分にとって興味関心が無い話題についてでも、何かしら書くことはできるのです。
「EUは2035年のエンジン車新車販売原則禁止の方針を撤回し、代わりに「走行中のCO2排出量を2021年比で90%削減」という新基準を導入、条件付きでエンジン車(HV含む)の販売を認める方針を発表しました」
これは、昨年末のニュースです。
そこで、このような問題を考えてみます。
「EUがエンジン車禁止の方針を撤回した理由について説明せよ」
それに対する答の「材料」はこんなものがすぐに思い浮かぶでしょう。
・欧州車メーカーのEVシフトが遅れている
・中国製EVとの競争
・EVの普及が遅れている
・きっとドイツが反対したのだろう
そこで、これらの材料に基づいて、こんな記述解答を書くことができます。
「欧州においてはEV車の普及が進んでおらず、充電インフラの整備も遅れている。また、ドイツをはじめとした欧州自動車メーカーでは、エンジン車からEV車への生産シフトも遅れているため、このままエンジン車を禁止すると中国製EVが欧州の車市場を席捲することが考えられる。そこで、エンジン車禁止の時期を後ろにずらすことで、欧州メーカーのEV車開発までの時間を確保しようと考えた。」
この答は、あえて「くどく」書きました。そんなに詳細に語るほどの情報を持っていないため、多少の「水増し」を入れてみたのです。満点ではないものの、合格点を狙いに行く記述というところですね。
それでは、この記述問題はどうでしょう?
「オランダは、アメリカに次ぐ世界第二位の農産物輸出国だが、オランダの農業が持つ強みと弱みについて論ぜよ」
さて。オランダの農業についていったいどれくらいの知識があるのか、頭の引き出しをひっくり返してみましょう。
・チューリップ
・干拓地・・・ボルダー
・・・・・・
これで止まってしまいました。私もオランダには何度も行ったことがありますが、農業について気づいたことはありません。
いくらなんでもチューリップの輸出だけで世界第二位になっているはずもないですし・・・。
ここで、ペンが止まったままうなることになるのです。
情報が無ければ、何も書くことはできません。
当たり前のことですね。
情報を増やす=インプットを増やす
単純な話です。
頭の中の情報量を増やすのです。
そのためには、ひたすらインプットを増やしましょう。
例えば、オランダの農業について調べてみると、いろいろな情報が出てきます。
・輸出相手国・・・ドイツ・ベルギー・イギリス・フランス・イタリア・スペイン
なるほど。陸続きの隣国が主要輸出相手国なのですね。
・国土面積・・・41,864km²
これは九州とだいたい同じ面積です。
我々日本人は、「日本は狭い島国」という固定観念を持っていますが、実は世界ランキングでは61位です。上からかぞえて1/3以内に位置していますので、意外に「広くて大きな」国なのです。
さて、九州と同じ面積だとしても、オランダは「干拓地」が1/4を占めますので、農地として使える平地が多いことは日本と異なる条件ですね。それにしても、アメリカに次ぐ第二位の輸出額ということは、おそらくそうとう効率的な農業をやっていることが予想されます。
・輸出品目・・・花き・牛肉・酪農品・鳥卵・天然はちみつ・葉野菜・飲料・アルコール・飼料・カカオ加工品・果実・ナッツ・ナッツ加工品・シリアル・乳加工品・マーガリン・バター
なるほど。「加工」食品の輸出が多いことがうかがえます。また畜産・酪農がさかんなようですね。
これらは「付加価値」が高いため、狭い国土の農業でも輸出額を押し上げているのでしょう。
・選択と集中
オランダでは、国が総力をあげて農業の発展に努めました。高収益の作物や加工に力を入れ、高付加価値の品目に注力したのです。
・スマート農業=施設園芸
農業の近代化にも力を入れました。たとえばトマト生産では、単位面積当たりの収量はヨーロッパ最大であり、日本の8倍にも達しています。
せめてこれくらいの情報がインプットされていないと、「何も書けない」のです。
アウトプットはテクニックではない
小中学生の段階の学習は「インプット」中心です。したがって、記述問題も、「どれくらいの知識を系統だてて学んできたのか」を確認する問題が中心であり、麻布・武蔵・鷗友・海城のような一部の学校の社会科記述問題でのみ、「その場で情報を読み解き記述する」ことや、「自分のもっている情報に基づいて思考する」ことまでを求めているのです。
幅広い情報の蓄積が、やがて「足腰の強い」記述力へとつながります。