
私は夫婦関係のカウンセラーではありません。しかし、そんな私から見て、「これは中学受験でもうまくいきそうだな」「これはちょっと」と思われる夫婦関係があります。
今回は、そんな私の「ごく狭い」見聞からいくつかの実例をご紹介します。
※プライバシー保護の観点から当事者が見ても自分のこととわからぬレベルまで変更していますが、内容は事実です。
「お前が馬鹿だから」
これは母親から直接聞きました。
父親は開業医で、母親は元看護士です。
子どもが悪い成績をとってくるたびに、父親がこういうのだそうです。
「お前が馬鹿だから、タロウの成績がこんななんだ!」
「まったく、タロウは誰に似たんだ!」
涙ながらにそう訴える母親にかける言葉はありません。
これが事実なら、即離婚案件ですね。
たしかに、遺伝の影響は大きいのでしょう。しかし、それを口にしてしまえば、すべての努力は無駄になります。教育は成立しません。
顔立ちや体格といった要素ならともかく、頭の働きのような複雑なものを単純な遺伝だけで語ることはできません。さらに、頭の良さ(これも曖昧な言い方ですね)と学歴は完全に比例しませんから。指導した生徒の中にも、両親ともに高学歴とはいえない(むしろ低い)にもかかわらず、抜群に優秀だった子がいましたね。そんな例はいくらでもあげられます。
この夫婦の場合、おそらく子どもの前でも同様の言葉を父親が言っていることは容易に想像できます。それが子どもに「良い影響」をもたらすはずがないのです。
「パパは凄いのよ」
常日頃から、母親は父親を尊敬していることを隠しません。尊敬といった大げさなことでなくても、例えば調子の悪くなった電気製品の修理であるとか、自分が留守のときの食事の支度であるとか、そういう日常のちょっとしたことでも、「パパは器用だね」「パパは料理も上手だね」と褒めるのです。海外に家族旅行に行けば、「パパが頑張ってくれているから旅行に来られたね」と口にします。
中学受験のときには、母親は完全に裏方に回りました。「何でもできる」父親に勉強もまかせたのです。おかげで、子どもは母親に逆らうことはあったとしても、父親の言うことには素直に従う子に育ちました。
母親が言うには、自分はわざと父親を持ち上げているのではなく、本当に尊敬しているのだそうです。
これは受験だって上手くいくにきまっていますね。とても素敵な夫婦関係だと思います。
「俺は忙しい」
中学受験世代の子の親は、働き盛りの世代です。いくら「ワークライフバランス」が常識となったといっても、ビジネスの世界はそんな「ぬるい」世界でないことは皆さんよくご存知のとおりです。
単身赴任であったり、国内外を出張で飛び歩いていたり、会社近くのホテルが定宿であったり、そんな話は当たり前です。
そこで、子どもの中学受験については全て母親に丸投げされるのです。
「俺は忙しい!」
こう言って、日ごろの勉強から塾への送迎、学習相談や学校説明会の参加など、全て母親が負担することになります。
子どもの教育や学校選び等について、本音で相談できる相手がいないのはつらいですね。だから私のような者に相談されるのだと思います。
なんだか昭和の話のようですが、今でもよく聞く話です。
「君は黙っていなさい」
この現場に居合わせた私はびっくりしました。今どきこんな言葉を妻に投げかける夫が生き残っていたとは。
ご夫婦と面談した時の話です。日ごろは母親が子どもの勉強に付き添い、私との相談も母親がやってくるご家庭でした。志望校についても、母親と相談してある程度固まってきていたのです。しかし、受験も近づいてきたある日、父親が母親を付き従えて乗り込んできました。乗り込んでくるとは大仰な表現ですが、そんなイメージだったのです。子どもの成績や志望校、全てについて気に入らないご様子でした。そして、いわゆる「ちゃぶ台返し」となったのです。母親と私で綿密に組み立てていた受験戦略も、その対策も、全てがひっくりかえされました。横にひかえていた母親が、見るに見かねたのか、意を決したように何度も口を出そうとするのですが、その都度「君は黙っていなさい」の一言で封じられます。見ているこちらがいたたまれなくなりましたね。
両親の意志がそろわない受験は不幸です。
良い結果となるはずもないのです。
「誰がそれをやると思ってるの」
学習相談に初めて私のところにやってきたご夫婦は、一見仲がよさそうに見受けられました。まだ幼稚園の一人っ子の中学受験を考えたのだが、二人とも地方出身のため中学受験の世界が全くわからないというご相談だったのです。私はお子さんを知らないので、一般的な話しかできません。それでも、受験勉強を始める時期や塾の選び方、さらに学校の選び方や情報の取捨選択方法等について、基本的なことからご説明しました。中学受験については、家庭の比重が高いことはご存じの通りです。ご家庭でやらねばならないことについても丁寧にお話しました。父親は論理的な方で、疑問点を一つ一つ確認しながら私のアドバイスを聞いて納得してくださいました。しかし、横から母親がことごとく父親の意見を否定しにかかるのです。二言目には「誰がそれをやると思ってるの」です。たしかに仕事で忙しい父親は戦力になってくれないという不満があるのかもしれません。子育てについて全てを自分に押し付けられているという被害者意識があるのかもしれません。しかし、それを初対面である他人の私の前で披露しなくても、と思いますね。
何より怖いのは、子どもの前でも同じようやり取りをしているのではないか、ということですね。
円滑でない夫婦関係は、子どもに良い影響はもたらしません。
「パパは黙ってて」
娘が3人の家庭です。女4人に男1人、なかなか大変ですね。
母娘は仲良しです。買い物や「推しのライブ?」にも一緒に行く仲なのだそうです。旅行も母娘だけで行くことも多いのだとか。完全に蚊帳の外にいる父親に同情します。
まあそこまではありがちな話ですが、まずいのは、女4人で父親を見下すことにありました。それがジョークレベルならともかく、子どもにはそのあたりの機微はわかりませんので。父親が何か言おうとしても、「パパは黙ってて」が口癖になってしまいました。
もちろん元凶は母親にあります。娘たちと結託して父親を仲間外れにし過ぎたのですね。それがライブくらいならよかったのですが、勉強や受験についても同様の態度をとる娘にしてしまったのです。
ただでさえ思春期の娘と父親の関係は難しいものです。
しかし、私立中高に進学した教え子の女子に聞くと、自分も含めて周囲の多くは父親と仲が良いのだそうです。
中学受験の経験が父娘関係を良好にしたのか、父娘関係が良好だから受験もうまくいったのか。
そういえば、中学受験でうまくいった子たちに「反抗期」が無い子が多いのもそういうことなのでしょうか。
受験はチーム戦
中学受験は「家族」というチームの戦いです。父親と母親、どちらが主導権をとっても、対等な立場であっても、どう役割分担をしてもかまいませんが、この二人の関係が良好でないと、子どものパフォーマンスが発揮されないのは当たり前ですね。
教え子の母親から「離婚相談」をされたことがあります。それも1度ではありません。なぜ私ごときに相談? と思いますが、関係者以外で頼れそうな人という白羽の矢が立ったのかもしれません。もちろん私には、「中学受験」に関連したアドバイスしかできません。あとはお話を聞くだけです。
あるご夫婦は、家庭内別居状態を数年続けた後、子どもの受験直前に離婚されました。
あるご夫婦は、子どもの受験終了直後に離婚されました。
当事者の繊細な問題に外部の私が何もコメントすることはありません。
ただし、中学入試にしぼっていうと、子どもの受験はどちらも失敗に終わりました。
私の本音としては、「なぜ子どもの人生にとって大きな試練の前に揉めるのかなあ」です。
「夫婦円満が合格の秘訣」です。