
今回は、親から言われたくない言葉について、子どもの気持ちになって考えてみます。
生徒たちから良く聞く話をまとめてみました。
- 「あなたはやれば出来る子でしょ」
- 「早く勉強しなさい!」
- 「なんでこんなミスしたの!」
- 「私たちの子だからねえ」
- 「こんなんじゃ、どこにも受からないでしょ!」
- 「そんなに嫌なら受験しなくてもいいのよ」
- 「〇〇中学(近所の公立中)でいいの?」
- 「あなたが受験したいっていったんでしょ」
「あなたはやれば出来る子でしょ」
これは意外でした。A子曰く、落としてから持ち上げて、さらに落とされる言葉なのだそうです。
「何でこんな点数なの! そう言ってまず怒るわけ。そりゃあ私だって、点数が悪いことに落ち込んでるから、さらにそれを指摘されればますます落ち込むよ。何でこんな点数取っちゃったんだろうって。そうやって徹底的に落ち込まされた後に『あなたはやれば出来る子なんだから』って言われると、『ああ、こんなダメな私でも、お母さんはまだ評価しようとしてくれている。その期待に応えられない私って、なんてダメな子なんだろう』って、救いようのない気持ちになるんだよ。涙だって出てくるよ」
「俺はちょっと違うかな」と言うのはB太。
「母親に、『あなたはやれば出来る子でしょ』って言われると、なんかイラっとするんだよね。『俺はやったって出来ない子なんだよ!』ってさ。まさか口にはしないけれど。俺だって一生懸命勉強してるんだぜ。それなのに、やってもやってもできるようにならないんだよ。もうどうしたらいいかわからなくなってるんだ。そこに、『あなたはやれば出来る子でしょ』って言われても、『お母さんは何もわかってないくせに!』って言いたくなるよ。口にはしないけどさ』
過度な期待・根拠の無い期待は意味がないのですね。
実は、私の立場では、別の意味で嫌いな言葉です。
「先生、うちの子はやれば出来る子なんです」
そう言われても、私には「出来ていない」という客観的事実しか見えていませんので。
「やることができないから今できていない」
「仮にやったとしてもおそらくできない」
「やったら出来る子かもしれないが、そんなのはわからない」
こうとしか言えません。
まずは「やって」から、その結果という客観的事実を元に相談しましょう。
「早く勉強しなさい!」
これはわかります。おそらく親が一番口にする言葉ですね。しかし生徒は大嫌いな声掛けなのです。
「僕が勉強しようと思っている時に限って言われるんだよね」
「そうそう。『今やろうと思ってたのに!』って思うよね」
「これ言われると、一気にやる気がなくなるんだよな」
子どもたちだってわかっているのです。遊んでいる場合ではないことくらい。勉強に取り掛かるべきであることくらい。それでも子どものことですから、何となくダラダラと過ごしてしまうのです。「そろそろやらなくちゃ」と重い腰を上げて、自ら勉強を始めようとするタイミングでのこの言葉。「いつまでそうやっているの! 早く勉強しなさい!」
この言葉には反発しか覚えません。
『今やろうとしてたんだよ!』
「なんでこんなミスしたの!」
これもついつい口にしてしまいますね。
「僕だってミスしたくてしているわけじゃないんだよ。ちゃんと解いたつもりだったんだ。それなのに×になってるから、『うわ、また計算ミスしちゃった!』『ええっ! 正しいものを選ぶんじゃなかったの?』ってショックを受けてるんだよ。そこに畳みかけるようにして『なんでこんなミスしたの!』って言われてもさ。それは僕だって知りたいさ」
子どもはミスをする生き物です。それも何度も何度も懲りずに同じミスをするのです。そして自分のミスの原因が自分でもよくわかっていないのです。まるで「狐狸の類に化かされた」ような心境でしょう。そこに対して「なぜこんなミスをした!」と怒っても、逆効果でしかないのです。
怒るくらいなら、どうしたらミスをなくせるのかの具体的な対処法を提示するべきでしょう。
「私たちの子だからねえ」
自分たちの子どもだから、このあたりが限界だろう。やっぱり蛙の子は蛙ってことだよな。
さすがに子どもに面と向かってこの言葉を発する親はいないと言いたいところですが、実際にそう言われたという生徒に聞きました。
「国語でひどい点を取ったんだよ。そうしたらそれを見たお父さんがこう言ったんだ。『ま、俺の子だからな。俺も昔から国語は苦手だった。俺に似たんだな』
これ言われると、『努力しても無駄だ』って言われているみたいで、すごく嫌なんだよね」
親が子どもに「遺伝の呪縛」をかけてどうするのでしょう。
また、子どもがいないところで夫婦だけで話をするのもNGです。子どもたちは、大人の話を聞いています。聞かれていないと油断してはなりません。
「こんなんじゃ、どこにも受からないでしょ!」
これも「まさか」ですね。でも、これを言われた生徒はたくさんいます。
・勉強をさぼってしまった時
・つまらないミスで点数を落としてしまった時
・塾のクラスが下がった時
・集中できなかった時
こうしたタイミングで、この「キラーワード」が飛び出すのだそうです。
「私だって自覚してるんだよ。このままじゃ〇〇中学には受からないし、△△中学だって危ないかもしれないって。そこにさらに母親から『こんなんじゃどこにも受からないでしょ!』って言われると、もうどうしていいかわからなくなるだけなんだよ」
これはおそらく、母親が自分の不安を子どもにぶつけているだけなのでしょうね。絶対に言ってはならない言葉の一つです。
「そんなに嫌なら受験しなくてもいいのよ」
ああ、これを言ってしまいましたか。
「勉強に気が乗らない時ってあるじゃない? 成績が悪くなる時だってあるよね? そうすると、『そんなに勉強が嫌なら別に中学受験しなくていいのよ』ってお母さんが言うんだよ。そういうお母さんの表情がすごく怖いんだ。まさか『うん、それなら受験止める』なんて言えるわけないよ。そもそも最初に中学受験しなさいって言い始めたのはお母さんじゃないか。それなのにどうしてこういうこと言うのかなあ」
いかにも選択肢を挙げて自由意志で受験をさせようとしているかのように見せかけているだけで、子どもは親の本心などわかっています。脅しにもならない、嫌な言葉かけです。
「〇〇中学(近所の公立中)でいいの?」
「学校で仲良くしている友達が大勢〇〇中学に進学するんだよ。僕は私立中に進学しても、あいつらとはずっと友達でいたいって思ってるんだ。それなのに、〇〇中学を馬鹿にしたような言い方をされると、友達を馬鹿にされているみたいで凄く嫌な気分になるんだよ」
もっともですね。これは大人としては絶対に口にしてはならない言葉です。これも夫婦だけでひっそりと会話していたつもりでも、子どもにはいつのまにか伝わってしまうものです。気を付けましょう。
「あなたが受験したいっていったんでしょ」
これを言われる子が最近増えてきました。親からもよく聞きます。
「うちの子が中学受験したいって言いだして。それで始めたんですけど」
こういうご家庭は、何かにつけて子どもの意志を尊重します。中学校も子どもに選ばせるのだそうです。
しかし、ちょっと待ってください。例えば小4から塾に通うとして、9歳です。9歳の子どもが、中学受験についていったい何を知っているというのでしょうか。
もしかして小学校の友達が、中学受験塾に行き始めて、それで自分も、と思ったのかもしれません。せいぜいその程度の貧弱な動機です。
もっと多いのは、親から「言わされて」いる場合です。
結局のところ、子は親の考えを映し出す鏡のようなものです。中高生くらいになればともかくとしても、小学生、まして9歳程度の子どもが、「自分の意志で」「情報を集め」「中学受験と高校受験の是非を判断し」「能動的に」「中学受験をしたいと決断する」ことなどあり得ません。
一見子どもの意志を尊重しているように見えますが、これは子どもに責任を丸投げしているだけなのです。
子どもに言ってよい言葉ではありません。