
わが子には本好きになってほしい。
親ならだれもがそう考えます。
しかし現実は厳しいですね。私が教えてきた子でも、本が好きな生徒は1割もいたでしょうか。休み時間に本を広げている子はそれくらいしか見かけたことがありません。
今回は、子どもが本を好きになるためにはどうしたらよいのか考えてみます。
1.親が本を読む
子どもが親から受ける影響はとても大きいのです。遺伝はもちろんのこと、その後の全てにおいて、子どもたちの最も身近なお手本は親ですから。
その親が本好きかどうか。まずここから考えましょう。
最近一か月に、本を何冊(親が)読みましたか?
そう聞かれるとどきっとしますね。忙しさにかまけて本を読まなくなってはいませんか?
たとえば、音楽に全く興味が無い親が子どもにピアノを習わせているとしましょう。ピアノ教室に連れて行きはするものの、子どもが習っている間は、待合室で親はスマホをいじっています。どんな曲をどう習っているのかに興味が無いからです。子どものためには、電子ピアノを買いました。防音もしっかりした家でしたので、普通のアップライトピアノも買えたはずなのですが、何せ親に興味がありませんので、「どうせすぐに弾かなくなるだろうから、安い電子ピアノでいいだろう」と考えたのです。子どもが何を練習しているのかは知りません。発表会の曲目を聞いたところで、音源を調べることもしません。
こんな環境で、「音楽好き」「ピアノ好き」の子が育つと思いますか?
本も同様です。
A:親も子どものころから本好きだった。今でも良く読んでいる。家にたくさんの本がある。
B:親は本を全く読まない。暇な時間はスマホをいじっている。
AとBの家庭で、どちらが子どもが「本好き」になるのかは言うまでもありません。
もし、親が本を読んでこなかった(好きでない)のなら、今から親が本好きになりましょう。それができないのなら、子どもを「本好き」にすることはあきらめましょう。
親が「読書」に価値を認めていないのに、子どもにだけ読書を強要するのは無理があります。
私が教えている「本好き」な子の家では、たまに親が子どもと一緒に近所のBOOKOFFに行くそうです。二人でかごをもって、好きな本を買いまくるのだそうです。最近本の価格は高いですからね。ブックオフというのは良い作戦です。家に帰ってから、親子で何を買ったのか見せあうのだとか。すばらしい家庭です。
「本好きにさせる」のではありません。「本好きになる」ことを考えましょう。
2.読み聞かせはしない
巷では、「幼少期からの読み聞かせ」がとても有効だとされています。児童心理学や脳生理学の専門家もそうおっしゃっていますので、そうなのでしょう。
ただし、私はそうは思っていません。「読み聞かせ」によって本好きになったという実例を知らないからです。
本好きの子がたまたま幼少期に「読み聞かせ」されていた、ただそういうことなのだと思っています。
厳しい言い方をしてしまうと、「読み聞かせ」は親の自己満足なのではないのだろうか? そう思ってしまうのです。
親は朗読の素人です。親の読み聞かせは、物語世界をさらに豊かに膨らませるものではないのです。
私は「プロによる朗読」は否定しません。親の拙い「読み聞かせ」の効能を疑っているのです。
みなさんにも、幼少期に何回も何十回も読みなおした「愛読書」があったことと思います。ページのイラストのところで止まって空想をめぐらせたり、背景を想像したり。時には物語の中に自分も入り込んだような気になる。そうした読書体験ってありましたよね。その物語を親に「読み聞かせ」してほしいと思いますか?
読書の醍醐味である、「立ち止まる」「振り返る」と言うことが読み聞かせではできないのです。
ただし、私は「読み聞かせ」そのものを否定しているのではありません。幼稚園に上がる前くらいの年代で、親子で絵本を一緒に開き、親が読み聞かせる、そうした親子のコミュニケーションもいいものです。あるいは、寝る前にベッドでお気に入りの本を読んでもらいたがる子ども。微笑ましくていいですね。
しかし、本好きに育つのとは別次元の効果なのだと思います。
文字を読めるようになったら、自立した「読書」にするべきでしょう。
3.幼稚な本を与えない
児童書選びは難しいものです。それでもいくつかの基準はあります。
◆名著の簡略版は避ける
例えば女子なら誰もが読む「赤毛のアン」。シリーズ第一作だけでも、原著の翻訳だと文庫本の活字サイズで600ページほどです。これが「児童用」の簡略版だと、大きな活字とイラストがたくさん入って360ページです。おそらく内容は1/3程度に圧縮されているのだと思います。原著は、作者のL.M.モンゴメリが牧師夫人だったこともあって、聖書やシェイクスピアの引用も多いのですが、そうしたものが見事にカットされています。大人向けの文学作品の「簡略版」は避けたほうがよいでしょう。
また、最初から児童向けの本でも、「あらすじ本」があるので要注意です。たとえば「不思議の国のアリス」。もともと幼い親戚の子に読み聞かせる目的で書かれたので原著も平易ですが、これも文庫本では190ページほどのものが、「子ども向け簡易版」では内容が半減しています。
タイトルに惹かれずに、内容をチェックする必要がありますね。
◆最近の新刊児童書は避ける
毎年、様々な児童書が出版されています。もちろん内容も素晴らしいのでしょう。ただし、これらの本が、本当に子どもに読ませるべき本なのかはわかりません。今どきの内容・文体であることも多いからです。
そこで、こう考えてください。「この本は、50年後、100年後にまで読み継がれる本なのだろうか」
時間の洗礼を潜り抜けた本のほうが信頼できると思います。
◆ライトノベルには手を出さない
私自身は一切読まないため、ライトノベル事情には疎いのですが、それでもタイトルを見ただけでも子どもに読ませていいとは思えません。
「路地裏で拾った女の子がバッドエンド後の乙女ゲームのヒロインだった件3」
「転生特典のスキル《剣豪覚醒》で異世界を無双したい」
「独身おじさんの異世界ライフ ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~」
こんなタイトルが溢れています。これ、子どもに読ませたいですか?
◆子供向け人気シリーズ本には注意
ファンタジーの翻訳者として知られるノートルダム清心女子大学名誉教授の脇明子先生の著書「読む力は生きる力」によると、「人気シリーズ」は子供に悪影響があるそうです。
脇先生曰く、「変な主人公が、変な人たちと出会い、変な出来事が起き、よくわからないうちに大団円、神経がまひしてきそうな」話だそうです。
小学生に大人気のシリーズがいくつかあるそうなのですが、私もよくわからないので小6男子に聞いてみたところ、「かいけつゾロリとか?」と教えてくれました。
何人かの小学生にリサーチしたところ、「ぞくぞく村のミイラのラムさん」だとか、「おばけマンション」だとか言った名前があがりました。小学生低学年のときに夢中になる子が多いそうです。
残念ながら(幸いにして)私は読んだことが無いのでコメントする立場にはありませんが、脇明子先生の言葉を借りると、「子どもたちの想像力、読書力をどんどん低下させて」いくそうです。
◆大人向け児童書は与えない
例としては、「銀河鉄道の夜」「星の王子様」「かもめのジョナサン」あたりでしょうか。
いずれも「名著」とされています。しかし、これはあきらかに大人向けの本です。大人が「良い児童書」と考える本が、必ずしも子ども向けとは限らないのです。
どうせ読むなら、ミヒャエル・エンデ、ケストナー、C.S.ルイス、J・R・R・トールキンあたりをお勧めします。ルイスのナルニア国シリーズとトールキンの指輪物語、どちらも宗教をバックボーンとした壮大なファンタジーです。ファンタジー物もこれくらいのスケールならいいですね。
小牛学生で読むべき(読まないべき)本はこちらで紹介しています。
4.早い段階で漢字を教える
読書は自分で読むものです。読めない漢字があると、それだけで大きなハードルになってしまいます。早い段階で、漢字も教えておくべきでしょう。
5.多種多様な本を積む
子どもがどんな種類の本に食いつくのかは予測できません。今まで見向きもしなかった本を急に読み進めることもあるでしょう。
そこで、家に多種多様な本を積んでください。お子さんが興味を持ったものがあれば、同系統の本をさらに増やせばよいのです。
6.感想を求めない
読書は極めてパーソナルな体験です。感想も千差万別です。それを、「どうだった?」「感動した?」「この描写がスゴイよね!」「主人公って可哀そうだと思わなかった?」などと感想を強要することは無意味なばかりか弊害ばかりです。
まして「感想文」を書かせるのなどもってのほか。
本は楽しく読めばそれでいいのです。そこから「何かの教訓」や「学び」を得ようとする読書はつまらないですから。
7.ゲームは与えない
これが最重要です。ゲームの世界は子どもにとって魅力的すぎます。その吸引力はすさまじいのです。私はゲームは麻薬と同じだと思っています。一度与えたら引き返せなくなりますね。
渋谷あたりを歩いていると、「ピカチュー」の着ぐるみを来た外国人や、マリオの着ぐるみでマリオカートに乗って走っている外国人観光客もよく見かけますね。大人にもなって「恥ずかしい」という概念が消滅するほどの魔力なのでしょう。
私の生徒で本を良く読む子が言っていました。学校の友達が家に遊びに来てこう言われることがよくあるのだそうです。「〇〇ちゃんの家って、ゲームが無いからつまんない!」
逆に言えば、どの家にもゲームがあり、子どもたちが集まってもゲームばかりしているということなのでしょう。
こうして私が「アンチゲーム派」の主張をしていると、大人から反論されることがあります。
「今どきはゲームをしないと話題についていけずに仲間はずれになって可哀そう」
そんな仲間外れなら大歓迎ですね。ゲームでしか繋がれない人間関係に価値はないですから。もっとも中学受験のための塾に通うようになると、ゲームなどしている時間はなくなります。
「私はゲームから友情や仲間の大切さを学んだ」
ゲームを知らない私にはよく理解できません。本当でしょうか? 友情や仲間の大切さは、現実世界や、読書から学ぶものだと思っていたのですが。
「最近のゲームはクオリティや世界観がスゴイから」
これもよくわかりません。むしろそれだから「怖い」のです。
「大人になってから子ども時代の話をするとき共通の話題がなくて困る」
これもよくわかりません。そうなのですか? さほど困るとは思えないのですが。
8.kindleも悪くない
電子書籍専用機の「kindle」、少々高価ですが、本の魅力にはまってきた子どもに与えるのは良いと思います。なんといっても、大量の本を持ち歩ける醍醐味は格別ですから。また、「夏目漱石全集」「芥川龍之介全集」「太宰治全集」などが、格安で電子書籍で入手できます。99円で夏目漱石の全作品が読めるなんて! これは著作権切れだからですね。
kindleにはカラー版もあるのですが、漫画を与えないことを考えると一番シンプルな白黒版が良いと思います。それでも2万円もします。