
ここのところ、続けざまに受験生を持つ保護者の方から相談を受けました。普段私が指導している生徒だけではなく、他塾で指導されている生徒の保護者からもです。
そこで気になった注意事項を一気にまとめてみたいと思います。
- 1.塾の思惑に踊らされるな
- 2.万が一の万が一まで想定する
- 3.出願状況は絶対に見ない
- 4.最初に計画した受験の組み立てを守る
- 5.プロの意見に耳を傾ける
- 6.良い方に考えすぎない
- 7.前半に合格をとる
- 8.午後受験は抑える
- 9.見たこともない学校は受験しない
- 10.それでも第一志望校はあきらめない
1.塾の思惑に踊らされるな
大半の塾の教師は、特に現場で日々生徒に接している教師は、真剣に生徒の行く末を案じているものです。その生徒に合った学校、合格できる学校を提案してくれていることと思います。
しかし、塾の経営の立場からいうと、それは少々異なるのです。より高い偏差値の学校に一人でも多く合格してくれることが、営業戦略上とても重要なのですね。
多くの場合、生徒と塾の利害は一致しますが、それが乖離したときが要注意です。
◆偏差値上位の志望校を押し付けようとする
たとえば、駒東を第一志望と考えている生徒がいたとしましょう。三軒茶屋に住んでいるので、駒東ならとても通いやすいのです。家が近くということもあって、昔から憧れの学校でした。
1日午後には世田谷学園の算数入試を受験するつもりです。この学校なら歩いて通えるからです。もし万が一世田谷学園が×だった場合は、2日はもう一度午前に世田谷学園の4科目を受験します。模試の成績は常に駒東は80%ですし、これで受験は終了予定でした。
それなのに、塾からこう言われてしまったらどうでしょう。
「お子さんの学力では駒東ではもったいない。1日は開成、2日は聖光、3日は筑駒にしましょう! 世田谷学園なら4日でじゅうぶんですよ!」
塾の立場からすればそうでしょうね。せっかく開成の合格を1名とれそうなのに、それを逃がすわけにはいかないのです。筑駒については、ダメ元で受けさせようとしています。さらにこうも言われてしまいました。
「開成が嫌なら、1日はせめて麻布を受けてください」
何としても最難関校の合格者をほしい塾の気持ちが透けています。
たとえば、開成中を考えている生徒がいたとしましょう。もしその生徒(保護者)がこうしたことを言い出したとしたらどうでしょうか。
「うちの子は、筑駒が本当の志望校ですので、1日は開成から駒東に下げようと思います」
「うちの子は聖光を希望してるのです。だから、1日は開成ではなくて広尾学園で押さえて、2日の聖光に臨みたいのです」
「最後の模試でも開成の可能性は20%しか出なかったのです。もうあきらめて海城を受験します」
おそらく、塾の教師は全力で説得しようとすることでしょう。
その理由としては、「頑張ることに意味がある」「受かる可能性はまだある」「せっかく開成に手が届きそうなのにもったいない」など様々です。そしてそれは本当だと思います。ですが、そこに塾の経営戦略が影を落としていないとは言い切れないのです。
◆通学不可能な1月校の受験を勧めてくる
例えば千葉の渋谷幕張。いい学校です。人気校ですし魅力のある実力校です。しかし、例えば神奈川エリアからの通学を考えると、ほとんど通学が不可能な人も多いでしょう。
もし塾が、半ば強引に「1月校は絶対に受けるべき!お子さんなら渋幕にチャレンジしたほうがいい。開成(桜蔭)に合格する子は皆受けました」などと言い始めたら要注意ですね。塾の実績稼ぎの可能性が濃厚です。
毎年、開成や麻布の入試会場に、塾教師に引率された関西の塾の生徒達が集団で受験にやってくるのを見かけます。灘(あるいは甲陽?)にすでに合格した子たちです。それなのになぜわざわざ開成を受験するのでしょう? おそらくは合格しても進学するつもりはないのです。家族で引っ越す必要がありますので。これは、塾の合格実績稼ぎに利用されているのでしょうね。
東京の塾の中にも、交通費や宿泊費を塾が負担して灘を受験させているところがあります。もちろん合格実績稼ぎが目的です。しかし、1月18・19日に灘を受験して、その10日後に開成を受験するのは体力的に疑問です。(もちろん進学予定なら何の問題もありません)
そういう姑息な塾があることは知っておくべきでしょう。
◆受験を反対される
塾の立場としては、全力でアドバイスをしますが、できるのはそこまでです。最終的に受験校を決定するのはご家庭ですから。
それなのに、「〇〇中は受かりっこないから絶対受けないように!」などと言われたら、その塾・教師は信用できません。
実は過去にあったケースなのです。
その塾の合格実績は、「合格率100%」を売り物にしていました。ここでいう合格率とは、受験者に占める合格者の割合ですね。そもそもこの「合格率」はいくらでも操作が可能な数字ですから、まともな塾なら宣伝に使いません。だって、受かりそうもない生徒を受験させない、つまり分母を減らすことで高くすることが可能ですから。
私がご相談を受けたその生徒は、通っていた塾から「〇〇中は受けるな」と言われてしまったのですね。酷い塾もあったものです。結局12月にその塾を退塾したその子は、みごと志望校に合格しましたが。
◆安全校ばかりすすめられる
これは塾の方針というより、現場の教師の問題でしょう。とくに経験が浅い教師ほど、合否の見極めができないため、必要以上に低い受験校ばかり進めてくる傾向があるのです。誰だって、教え子が不合格になるのは嫌ですから。
もちろんそうして勧められた学校が「行きたい」学校である場合は問題ありません。何も偏差値ばかりが学校の価値ではないですからね。でも、不本意なレベルの学校ばかり進めてくるようなら要注意です。
通う気のない学校は受験しない。この当たり前のことを再認識してください。
2.万が一の万が一まで想定する
受験は想定どおりには進みません。我々プロとしても、「なんであの子が落ちた?」と最後まで理由がわからないことなどたくさんあるのです。その反面「なんであの子が受かった?」というケースは少ないものなのです。
だからこそ、受験校には、安全校として合格が確実に見込めそうな学校を複数用意しなくてはなりません。もしかして受ける必要がなくなる(そのほうが嬉しいですね)かもしれませんが、願書や写真等を準備しておくことは大切なのです。
そうした安心をつくるからこそ、チャレンジが可能になるということなのです。
3.出願状況は絶対に見ない
出願が始まると、ネット情報や塾情報として、日々増えていく出願者数のデータが公表されてきます。これは絶対に見てはいけません。出願者が多くなったから難易度が上がる、少なくなったから入りやすくなるなどといった単純な問題ではないからです。つまらぬデータに踊らされてはいけません。
4.最初に計画した受験の組み立てを守る
途中でうろたえて受験校を変えてうまくいったケースはほとんどありません。綿密に組み立てた受験校の組み立てどおりに予定にしたがって受験しましょう。
よくある作戦としては、1日に受験した学校の合否結果によって、2日、あるいは3日の受験校を変えるという戦略がありますね。
【親の最初のプラン】
1月 渋谷幕張・市川
2/1 駒東
2/2 聖光1回
2/3 筑駒
2/4 聖光2回
2/5 渋谷渋谷3回
この生徒は駒東も危ういレベルですが、聖光が第一志望なのですね。これはチャレンジです。このプランがうまくいくためには、駒東の合格が必須です。ちなみに渋幕も市川も進学するつもりはありません(遠すぎる)
そこで、塾はこういうプランを考えました。
【塾のプラン】
1月 受験しない
2/1 サレジオ
2/2 聖光1回
2/3 浅野 → 都市大付属
2/4 聖光2回 →サレジオ
2/5 都市大付属
1日にサレジオで合格をとってから、あとは聖光にチャレンジ、間に浅野を入れるというプランです。
しかし、1日のサレジオが不合格だった場合、聖光はもちろんのこと、浅野もレベル的に厳しい(受からない)でしょう。そこで、3日は都市大付属、4日はもう一度サレジオを受験というプランに切り替えることをすすめてきたのです。
妥当なプランですね。
話し合いの結果、こういう受験の組み立てとなりました。
【最終プラン】
2/1 駒東 、PM世田谷学園(算数)
2/2 聖光
2/3 筑駒 or 浅野
2/4 聖光2回 or サレジオ
2/5 渋谷渋谷 or 都市大付
これは、駒東の合否がポイントです。押さえとしては世田谷学園がありますので、そこが受かれば、「全滅」は回避できます。
また、聖光2回をあきらめるというのもポイントですね。
しかし実際には、こうした受験となりました。
【実際】
2/1 駒東(×)
2/2 聖光1回(×)
2/3 筑駒(×)
2/4 聖光2回(×)
2/5 渋谷渋谷(×)
あんなに何時間も相談して綿密に組み立てた受験プランをことごとく無視して、強気の受験となったのです。結果は全滅です。
なぜこんな強気受験となったのか。
それは、親が「学校のネームバリュー」にこだわったからです。サレジオや世田谷学園や浅野には納得がいかなかったのでしょう。そして子どもはそうした親の気持ちを察します。だから、入試が終わるたびに、「今日はできたよ!受かったと思う!」「明日の受験は自信があるんだ」と、根拠のない自信を披露しつづけたのです。
それでも1日午後に世田谷学園の算数を受験していればよかったのですが、「今日の駒東は受かってたと思うよ」の一言で、せっかく用意していた世田谷の受験票を使いませんでした。
子どもの「出来たと思う」ほど当てにならないものはありません。
最初に考えた受験プランを守ることは大切です。
5.プロの意見に耳を傾ける
前述した内容と真逆になりますが、塾は受験のプロです。そのプロの意見に耳を傾けることは大切です。
よくあるケースとしては、「この学校以下の学校でしたら行かせる気はありません! 公立中で十分です!」というものですね。
もちろんそれもご家庭の方針ですから異をとなえるつもりはありませんが、その根拠が、「自分も〇〇中高出身だが、△△中に行かせるくらいなら公立のほうがまし」という古いイメージである場合は問題です。変わらない学校もある一方、大きく変革している学校もたくさんありますので。
6.良い方に考えすぎない
お子さんの模試の結果を見る時は、最新3回の模試の偏差値を平均した値を参考にすることをお勧めします。とくに4科目の総合偏差値を参考にしてください。
「今回は算数が足を引っ張ってしまったけれど、前回は算数はもっと高かった」
といった具合に、各回の4科目の一番良かった数字を参考にするのはやめましょう。
本来なら、各回の模試の4科目の一番低かった数字を参考にするくらいでよいのです。
「できたはず」→「できるはず」という思考は、前向きでよいのですが、現実を反映しません。入試本番では、お子さんの弱点がことごとく顕在化するものなのです。
7.前半に合格をとる
不合格が続くのは精神的にこたえます。安全校を最後にもってくる受験パターンは、相当な精神力を必要とするのです。
子ども本人もそうですが、親の心が折れてしまいます。
だいぶ以前のことですが、私は2月5日早朝、品川の坂の上にある女子校の校門前で教え子を待っていました。ここまで一つも合格が出ていないこの生徒の最後の頼みの綱の受験です。せめて入試前に一声かけて励まそうと思って待っていました。5日にもなると、受験生の数は減っています。ぱらぱらとやってくる受験生親子の中に、母親に手を引きずられるようにして坂を上がってくる生徒の顔を見つけました。
「〇〇さん!」
私がそう声をかけても、子ども本人も母親も全く気が付きません。必死な形相で歩く母親と、うつろな表情で引きずられていく子。
これでは本来の実力など発揮できるはずもありません。
8.午後受験は抑える
午後入試を実施する学校が増えてきました。受験生にとってはありがたいことですが、子どもの気力と体力を考えてあげましょう。連日のように午前・午後の受験を続けるのは無謀です。受けるとしても1校程度にしておくことを強くお勧めします。
9.見たこともない学校は受験しない
とくに、安全校・押さえの学校として考えている学校にありがちです。
「まさかこの学校までは受験することはないだろう」
「どうせ受けないだろうし」
そう安易に考え、形式的な志望校とする方は多いのです。
しかし、実際にはその学校を受験することになるケースも多いのです。
子どもが一度も見たことも無い学校を受けさせられるのは悲劇です。
また、親ですら説明会に行ったことが無い学校を受験するのは無謀です。
どの学校も、「合格したら進学する」つもりの学校です。きちんと訪問して慎重に選んだ学校だけを受けるのが筋というものですね。
10.それでも第一志望校はあきらめない
受験が近づくにつれ、弱気になってきます。
ついに、あんなに憧れていた第一志望校すらあきらめる、そういう方もいます。
それが冷徹なプロの判断ならまだしも、感情に流されたのなら問題です。
第一志望はあきらめず、その代わりに他の受験校で「安全」を確保するのが王道です。