中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】無料模試・無料体験講座・特待生・入塾金免除に注意しよう

世の中には、無料模試や無料講座が溢れています。

今回はそうしたものへの警鐘として書きました。

ある塾の嘆き

 知人が関西エリアで小さな塾をやっています。関西といえば、首都圏以上に中学受験の競争が厳しいエリアです。学校の選択肢が首都圏よりもだいぶ少ないため、一部の人気校に受験生が集中する傾向があるからです。

そのため、塾の競争も激化します。

一人でも多く合格させるために努力するのはどこの塾でも同じですが、関西の塾はそれが徹底しています。毎日夜遅くまで拘束するのは当たり前として、さらにそれ以上の「何か」を付け加えようとすると、精神論に傾く塾もあるのです。これを「ハチマキ塾」と私は名付けましたが、入試当日の灘中学の校門前でハチマキで気勢をあげている塾がたくさんありますね。

生徒獲得競争も激化します。

本来なら、その指導内容を評価されるよう努力すべきなのですが、こうしたものはなかなか外にアピールしづらいのです。そこで最も手っ取り早いのが、「無料」作戦です。無料テストは当たり前として、無料体験講座を充実させることで、一名でも多くの生徒を集めようとします。

 

さて、知人はそうした方針をとっていません。むしろ嫌いです。

「きちんとしたサービスを提供するので、きちんと支払っていただく」としごく真っ当な方針です。「タダにつられて集まるような生徒は、やはりそれなり」と手厳しいことを言っていました。

しかしそうした方針が、集客にはマイナスとなっているのだとか。「テスト、タダとちゃうん?」と言われることが多いそうです。

 

塾の生き残り競争が厳しいのは首都圏も同じです。

「無料」作戦が横行しています。

 

無料テストの正体

 

テストの作成・運営・分析には多くのマンパワー、つまりコストがかかります。

そのコストがどれくらいかかるのかは、ちょっと計算できませんね。

参考までに、テスト屋の「首都圏模試」を見て見ました。首都圏模試は、塾がやっているテストではなく、テスト専業企業が運営しています。つまりテストだけで収益をあげているのです。

「合判模試」5940円となっていました。

「首都圏模試」は規模の大きなテストです。1回の模試で2万人以上を集めています。それだけの規模で実施しても、これだけの金額をとっているのです。また、この模試は、中小塾が多く参加しており、おそらくはそうした塾からも会費を徴収していると思われます。

たとえば、受験生が5000人ほど(それでも規模は大きい)のテストだとして、赤字を出さないためには、6000円では無理でしょう。10000円でも赤字になりそうです。

 

それだけのコストがかかるテストを「無料」にするからには、塾は別の「利益」を狙っているのは誰でもわかりますね。

 

(1)生徒獲得

(2)個人情報の収集

(3)成績データの蓄積

(4)合格実績獲得

 

(1)の生徒獲得目的が一番わかりやすいと思います。まずは無料テストを受験してもらい、気に入ってくれたら入塾していただく、そういう作戦です。

ある塾では、テストは郵送返却せずに、「返却面談」を必ず実施するそうです。直接保護者に塾まで足を運ばせ、「苦手分野の学習アドバイスをする」という名目ですが、もちろん違います。あの手この手で、テスト受験者を勧誘するのが目的なのです。

ある塾では、テストを気に入ってもらえるよう努力するそうです。「テストを受けるだけで、この塾で勉強したい」と思わせるのが目的だそうですが、これは難しそうですね。

ある塾では、ライバル塾の生徒が解けない問題(未修の分野)をわざと出題するそうです。「僕の知らない知識、解けない問題ばかりだった」と焦らせるのが目的です。実に姑息ですね。

もちろん主流は、電話による勧誘でしょう。

これにも2つのやり方があります。優秀なことを褒めて勧誘する場合と、成績不振を強調して焦らせて勧誘する場合です。塾も必死だということです。

 

(2)の個人情報収集については、テストを実施すれば、氏名・住所・電話番号・在籍小学校・志望校・成績、これらの情報を集められます。塾にとっては「プラチナデータ」ですね。一般的には、この後の勧誘につなげます。定期的なDMが普通です。

 

(3)塾にとっては、成績データの蓄積は生命線です。多くの生徒の成績情報と、その後の成績推移、そして合否実績をリンクさせたいのです。

低学年のときに一度だけテストを受けた塾から、入試終了後に電話があって合否を聞かれた、そんなことは普通です。

 

(4)の合格実績獲得には2つのやり方があります。

・成績優秀者のみを取り込む

・合格実績だけを取り込む

 

どちらも塾のとってはメリット絶大です。以前は、たった1回の無料テストを受験しただけなのに、合否の確認電話があり、そのまま塾の実績としてカウントするような阿漕な塾もありました。さすがにSNSの発達により、そうした作戦はやりづらくなったのでしょう、今では、成績優秀者を勧誘して、何とか数回の格安講座を取らせるようですね。数回でも「在籍」実績をつくれば、堂々と「当塾に入塾手続きをして継続して授業を受けた生徒のみの実績です」と合格実績にうたうことができますので。

私の指導していた生徒にもそういうケースはありました。たった1回の無料テストを受けてしまったために、執拗な勧誘が続いたそうです。「優秀な〇〇さんの合格を支援するために、当塾のベテラン講師を集めた専属のタスクフォースを作り、ご自宅もよりの校舎で格安個別指導を実施します」と言われたそうですね。姑息を通り越して「さもしい」としか言いようがありません。そうまでしないと「合格実績」をあげられないレベルの教師達の直前講座など、受けないほうがいいに決まっています。

 

無料講座の正体

 

無料講座にも2種類あります。

生徒獲得の目的で実施する、外部の生徒だけを対象とした「特別」講座があります。これは、厚化粧&着飾った授業だと思ってください。生徒にアピールすることだけが目的で、それに長けた教師が実施しますが、それが普段の授業のクオリティとイコールかどうかは不明です。

また、「〇〇理科実験教室」「プログラミング講座」といった、いかにも子ども心をくすぐる設えの無料講座も要注意ですね。そんな講座では、その塾の力量は測れませんので。

 

もう一つ、その塾の普段の授業に無料で参加させてくれるケースも多いですね。

これは、その塾の普段着の授業が体験できるということでは魅力的です。しかし、いざその塾に入ると、意見は180度変わります。

通塾生以外の外部の生徒の存在は、塾の授業にとっては「ノイズ」以外の何物でもないのです。教師は外部生に気をつかいます。その分、通塾生への注意が削がれます。授業のペースや内容も外部生に遠慮せざるを得ません。それは、通塾生にとってマイナスでしかないのです。しかも、自分たちは授業料を払って受けているのです。

つまり、無料体験授業を実施するということは、そのコストを通塾している生徒たちが負担しているということになります。塾の目線がどちらを向いているのかは明らかですね。

今通ってくれている生徒を一番大切に考えない塾は選ぶ価値がありません。

 

入塾金無料の正体

これは簡単です。焦らせるのが目的です。

「今なら入塾金免除です」となっていますね。まさか、「1年365日、いつでも入塾金は免除です」はあり得ません。それでは最初から入塾金が存在しないことを意味しますので。そもそも公取委が黙ってはいないでしょう。

普段は徴収している入塾金が、今ならタダですよ! こう焦らせる作戦です。

スーパーのタイムセールやテレビショッピングと同じです。そんなものには踊らされず、じっくりと検討するべきでしょう。

 

特待生の正体

これも簡単です。成績優秀者の獲得が目的です。とくに、他塾で鍛えられた優秀者を横取りできたら最高ですね。それで難関中の合格実績を横取りできるのなら、授業料免除など安い出費です。

そう考える塾が行うのが「特待」制度なのです。

しかしそう言ってしまうと身もふたもない。そこで、理念らしきもので武装します。

〇〇塾は「未来」をリードしていく役割を担う、向学心の高い子どもたちの「いま」の学びを支援することを通じ、社会貢献に寄与することを目的として・・・・・。

この制度は、高い学力の資質を有し、確かな学習意欲と目的意識を持つ子どもたちとその保護者に対して、・・・・費用すべてを支援するものです。

これは首都圏のとある塾のHPにあった文言です。これを見て、「社会貢献に寄与するなんて、なんて崇高な目的をかかげた塾なんだ!」と思われるかどうかはご自由です。

 

自分の支払った授業料が、一部の「合格実績稼ぎ」の生徒のために使われることを気にしない方ならよいのでしょう。

あるいは、「優秀なわが子の塾代が節約できてラッキー!」としか思われない方ならよいのでしょう。

 

ざっと調べてみたところ、特待生制度を設けている塾はけっこうありますね。

 

特待生制度あり・・・早稲田アカデミー・日能研・湘南ゼミナール・臨海セミナー・TOMAS・栄光ゼミナール

特待生制度なし・・・SAPIX・グノーブル・STEP

 

なんとなく塾の姿勢・実績・方針を反映していておもしろいですね。

ちなみにSTEPのHPにはこう書かれていました。

ステップでは、「内申点」や「偏差値」に基づく成績上位生を対象とした、授業料の割引等の特待生制度は実施していません。特待生として授業料を減免する生徒がいるということは、他の生徒がその費用を負担するということになります。私たちは、勉強が得意な生徒にも、あまり得意でない生徒にも、ベストを尽くして指導にあたります。

これが「見識」というものでしょう。

もっとも、それに続いて書かれていた内容が気になります。

また、友人をステップに連れて来たら、ギフトカード等の金品をプレゼントするような紹介制度は行っていません。「勉強するために通塾している生徒を、目的外の営業活動に巻き込むことは責任ある社会人として行うべきではない」と考えるからです。

中学受験の世界の住人には「?」ですが、これは高校受験の話です。

2020年に、臨海セミナーの集客方法に対して、STEPをはじめとする神奈川エリアの塾19社が公式に「抗議」したニュースがありました。それに関連する告知なのでしょう。

 

ちなみに、私立中高にも「特待生」制度を設けている学校がありますね。

私の知る限り、上位校・人気校にはありません。不人気校には多くみられます。学校法人である学校であっても、「特待生」制度によって成績優秀者を集めたい意図が見え透いています。

 

 

タダほど怖い物はなし

 

アメリカ英語の言い回しに、こうしたアクロニムがあります。

TANSTAAFL

 "There ain't nsuch things aa free lunch" 

ここに出てくる「フリーランチ」とは、19世紀にシカゴに集った労働者たちが、1杯5セントのビールを飲みにいくと出された無料ランチのことだそうです。ソーセージとパンとスープ程度の質素なものだったそうですが、店としては「フリーランチ」に惹かれて集客が見込め、たちまち拡がったとか。

「無料ランチなんてものは無い」

→「タダで手に入る物なんて無い」

→「タダほど怖い物は無し」という意味ですね。

 

無料の模試・講座を受ける前に、一考することをおすすめしたいです。

 

peter-lws.net