
帰国生入試は早いタイミングで実施されます。
国内入試なら、11月下旬から始まりますね。
今回は、そうした帰国生の方への真摯なアドバイスです。
耳の痛い話だと覚悟してお読みください。
帰国生は特別扱いされない
ああ、いきなりこれを言ってしまいましたね。
「いやいや、特別扱いの入試があるじゃないか」
そう思われるかもしれません。
たしかに、帰国生は、英語力だけで合格ができたり、早いタイミングで合格を確保できるという大きなメリットがあります。一般生入試よりも合格しやすい場合がほとんどです。
しかし、それは「入試における」特別扱いにすぎません。
進学後には、特別扱いは無いと考えてください。
実例をあげましょう。
A君は、幼少期から英語圏の国で育った、生粋?の帰国生です。現地の学校に通っていましたので、語学力は、英語>日本語 でした。
現地の小学校では、「目立った」生徒だったそうです。少なくとも母親はそう言っていました。制作発表や課外活動などに積極的だったようですね。
さて、A君は得意の英語力を生かして、ある難関校に帰国生入試で合格しました。この学校は国内の受験生にも人気の難関校です。また帰国生も憧れる学校ですので、合格したときには親子でとても嬉しかったのはわかりますね。
しかし、A君の中学校生活は灰色になりました。
学校の授業に全くついていけないのです。
ほとんどの科目で完全に落ちこぼれてしまいました。
英語だけはかろうじて得意ですが、それだって一番というわけではありません。同じように英語ネイティブの帰国生たちがいますし、一般入試で入学してきた生徒達の中にも、5年生の途中まで英語圏で生活し、帰国後に塾で4科目を鍛えてきたような「隠れ帰国生」たちが何人もいるのです。
自他ともに「優秀」だと思っていたわが子の凋落に親もうろたえます。子ども本人も落ち込みます。
そこで、高校は外へ出る決断をしました。
もっともA君の学力では、日本の高校入試に太刀打ちできません。狙ったのは海外のボーディングスクールだったのです。
しかし、エントリーした全てのボーディングスクールは不合格となりました。
一般に、名門ボーディングスクールでは以下の要素を見られるといわれています。
・英語力
・課外活動実績
・エッセイ
・学校からの推薦状
・学業成績
まず、英語力については問題ありません。しかしそれも、英語圏の普通の中学生と同等かそれを下回るレベルにすぎません。
課外活動実績については、何もありませんでした。日本の中学校ではそうした活動に積極的ではないからです。それでも早い段階からボーディングスクールを目指して活動実績を積んでいればよかったのですが、決断が遅かったのです。
エッセイについては、A君が作成した英文エッセイを拝見しましたが、最悪でした。英語については問題はないのですが、内容がダメだったのです。日本と海外の学校教育の違いについて述べたものでしたが、それは日本の学校教育に対する呪詛に満ちていたのです。おかれた環境で努力できない学生を欲しがる学校はありません。
学校からの推薦状については、どこまで良く書いていただけたかはわかりませんが、そんなに高評価はつけてもらえなかったことでしょう。
そして最大の問題は、学業成績にあったのです。
中学校の成績をそのまま提出しなくてはなりません。これが問題でした。
ここで紹介したA君の話は実話です。もちろん、個人情報保護の観点から、複数名のエピソードを混ぜる形で創作しましたが、内容は事実です。
A君の悲劇の原因は、いずれ日本に戻ることを考えていなかったことにあります。
日本の教育のやり方や目指す方向と、海外の教育のやり方・目標は当然異なります。
海外から日本に帰国して日本の学校に進学するということは、いわば異なるスピードで異なる乗客を乗せて異なる方向に走っている列車から列車に飛び移るようなものなのですね。
その際の乗換切符が「英語力」です。しかしこれはあくまでも乗換のための切符にすぎず、その後まで保証してくれるものではありません。
もちろん、中高、そして大学にも、「英語さえできれば何とでもなる」学校はたくさんあります。そこが、自分の行きたい学校・進みたい進路であるのなら何も問題はないのです。
しかし、例えば中高で「英語だけできれば」という学校は、やはりそれなりのレベルの学校が多いことはおわかりいただけるでしょう。
国内一般受験生と同等の学力があることが前提
海外の方とお話をしていると、こうおっしゃる方が多いのです。
「英語が大変だから、日本の科目の勉強などする余裕はない」
「そもそも日本人が少なく、日本の塾もない」
「帰国生は英語さえできれば何とかなるのでしょ?」
「算国だけはやらせているけれど、理社は捨てました」
「中学受験のための勉強は無駄にしか思えなくて」
そういう方に対して、私がいつものように4科目の学習の大切さをいくら説いても、まったく響かないのです。
日本の教育システムに戻らないのならばよいのですが、もし日本の中高に進学し、日本の大学に進学する未来を描くのならば、国内にいる一般受験生と同等の4科目の学力をつけることが大切であることに気づいてほしいのです。
そうしないと、A君のように、英語以外で落ちこぼれる不幸な未来が待っています。
5年生以下の方の場合
今や、海外にいても日本と同レベルの情報と教育が手に入る時代になっています。オンライン指導をする塾もたくさんありますし、学校説明会だってオンラインで実施されています。教材も入手は簡単です。
今から、4科目の「日本と同じ受験勉強」をすすめることを強く推奨します。
6年生の場合
まずは帰国生入試で合格を目指しましょう。
そして合格した後、必死で勉強するしかありません。
仮に12月中に合格をとってしまえば100日間、2月の一般入試と同じ日程で合格したとしても、中学校が始まるまで、50日間はあるはずです。そこで、国語・理科・社会を徹底的に勉強しましょう。
算数については捨てましょう。それより、中学生の数学に取り組んだほうが効率的です。多少の数学の先取りはとても有効ですが、今さら算数はやらなくて結構です。ただし、中学受験算数で鍛えられてきた他の生徒は、次の2つの点で優れています。
・計算スピードが速くて正確
・問題の本質(解法)を見抜くのが早い
数学で落ちこぼれないためにも、中学数学の先取り学習をしておくことは大切です。
国語については、読解量が圧倒的に不足しているはずですので、中学入試問題を題材として鍛えるとよいでしょう。とくに帰国生に不足しているのは、語彙力です。語彙力はインプットした文章量に比例します。
理科・社会については、中学生用の教科書を標準レベルの知識ベースとしてマスターしながら、進学予定の学校の過去問で合格点がとれるレベルに仕上げてください。
とくに社会科が苦戦する帰国生が多いのです。それはそうでしょう、日本の地理や歴史について触れる機会が少ない(皆無)だったのですから。
しかし、今後海外、例えばアメリカの大学に進学するとしても、周囲が期待するのは、「アメリカの文化や歴史をよく知っている」学生ではありません。それは常識なのです。それより日本人に期待されるのは、「日本の歴史や文化・伝統や現状について詳しい」ことでしょう。
私も、とあるアメリカの大学で、そこの女子学生が今読んでいる本の内容について質問されたことがあります。その本のタイトルは、たしか「The 47th Samurai」だったと思います。「47番目の侍?」 これでわかりますよね。侍が47人出てくるといえば、赤穂浪士の討ち入りの四十七士ですね。そしてその47番目の侍といえば、討ち入りの後、唯一生き残った寺坂吉右衛門のことです。彼は大石内蔵助から生き延びることを命ぜられたといわれています。自分が歴好きで良かったと思いました。
それにしても日本人だって読まないような本を読むなよ! と思いますね。
まとめ
せっかく海外で得難い経験をしてきたのです。しかしそれを日本で活かすためには、日本の教育もクリアしなくてはなりません。
それがきちんとできれば、英語力を強みとして充実した中学生活を送れると思うのです。