
以前も同様の記事を書いた記憶はあるのですが、ブログの混沌の中に埋没して再発見できませんでした。そこでもう一度書くことにします。
地理からはじまる社会科学習
どの塾のカリキュラムでも、社会科の学習の順番は決まっています。
地理→歴史→公民→問題演習
小学校でのカリキュラムも同様なのですが、本格的な地理学習に入る前に、自分たちの住む地域について学ぶ過程が入っています。
文科省の資料から抜粋引用します。
3・4年
・自分たちの住んでいる身近な地域や市区町村
・地域の人々の生産や販売
・地域の人々の生活
・地域社会における災害及び事故の防止
・地域の人々の生活
・都道府県の様子
5年
・我が国の国土の自然などの様子
・我が国の農業や水産業
・我が国の工業生産
・我が国の情報産業や情報化した社会の様子
6年
・我が国の歴史上の主な事象
・我が国の政治の動き
・世界の中の日本の役割
どうやら、5年生からの内容が、塾で扱う地理分野の学習ですね。塾では4年生から入りますので、ちょうど1年遅れているスピードです。
それにしても、3・4年生の2年間も使って、地域の様子だけというのも、なかなか濃いというか、しつこいというか。もちろん大切な内容であることはわかりますが、中学受験を考えると、ここまでの密度は不要です。
※一時期、開成の社会科で、関西からの合格実績稼ぎ遠征受験組排除の目的で、東京に住んでいなければ解けないタイプの出題がみられましたが、これは例外です。もっとも東京問題の出題理由は私(および塾屋)の邪推にすぎません。
気になると思うので、小学校の3・4年生の学習内容をもう少し詳しく紹介します。
(1) 自分たちの住んでいる身近な地域や市(区,町,村)
ア 身近な地域や市(区,町,村)の特色ある地形,土地利用の様子,主な公共施設などの場所と働き,交通の様子,古くから残る建造物など
(2) 地域の人々の生産や販売
ア 生産や販売に関する仕事があり,それらは自分たちの生活を支えていること。
イ 地域の人々の生産や販売に見られる仕事の特色及び国内の他地域などとのかかわり
(3) 地域の人々の生活
ア 飲料水,電気,ガスの確保や廃棄物の処理と自分たちの生活や産業とのかかわり
イ これらの対策や事業は計画的,協力的に進められていること。
(4) 地域社会における災害及び事故の防止
ア 関係機関は地域の人々と協力して,災害や事故の防止に努めていること。
イ 関係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとっていること。
(5) 地域の人々の生活
ア 古くから残る暮らしにかかわる道具,それらを使っていたころの暮らしの様子
イ 地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事
ウ 地域の発展に尽くした先人の具体的事例
(6) 県(都,道,府)の様子
ア 県(都,道,府)内における自分たちの市(区,町,村)及び我が国における自分たちの県(都,道,府)の地理的位置,47 都道府県の名称と位置
イ 県(都,道,府)全体の地形や主な産業の概要,交通網の様子や主な都市の位置
ウ 県(都,道,府)内の特色ある地域の人々の生活
エ 人々の生活や産業と国内の他地域や外国とのかかわり
最後の(6)都道府県の様子の項目を除くと、受験社会ではほとんど扱わない内容ですね。まさに小学校ならではの学習といえます。こうした内容、とくに社会科見学とリンクした学習は塾では不可能なので、小学校でしっかり教えていただけるのは良いことだと思います。
もっとも、私が見学したことのある小学校の授業では、その前の週に社会科見学として訪問したゴミ処理場に関する教師の質問に対して、生徒がとんでもない間違いばかりを答えていました。私が驚いたのは、教師がその生徒の間違いを一切指摘することなく、「うん、そうかもしれないね」とスルーしていたことでした。もういちいち取り上げるのが面倒なのでしょう。しかし、その「お馬鹿な」生徒は自業自得(おそらく社会科見学で遊んでいた)だとしても、それを聞いていた他の真面目な生徒に対する悪影響を考えると、これは「授業」ではありません。
この資料に限らず、文科省の文書では、「日本」ではなく「我が国」を連発しているのが個人的に違和感を感じます。
ちなみに私は授業では「日本」しか使っていないことに今気づきました。
「1902年、日本はイギリスと日英同盟を結び・・・」
「1902年、我が国はイギリスと日英同盟を結び・・・」
「1941年12月8日、日本はハワイの真珠湾を攻撃し・・・」
「1941年12月8日、我が国はハワイの真珠湾を攻撃し・・・」
「日本のGDPは、アメリカ・中国・ドイツ・インドに次ぐ5位に・・・・」
「我が国のGDPは、アメリカ・中国・ドイツ・インドに次ぐ5位に・・・・」
こうして並べてみて、違和感を感じない方ならよいのでしょうけれど。
「家に帰った」
「我が家に帰った」
これならどうでしょう?
「日本」は国名、記号にすぎませんが、「我が国」には、主観的な帰属意識や感情が入ります。
生徒には外国籍の子もいますし、そもそも地理にしても歴史にしても客観視が大切ですので、やはり「我が国」ではなく「日本」のほうが私はしっくりきます。
地理学習における地図の大切さ
言うまでもなく、地理の学習において最重要なのは、「地理的感覚」です。
例えばテレビのニュースを見ていて、「大分市で大規模火災が・・・・」と聞いたときに、頭の中にある日本地図の大分市のところが点滅していないといけません。
「ねぷた祭り」と聞いて、弘前市が点滅しないといけません。
ちなみに、青森市は「ねぶた」、弘前市は「ねぷた」です。
この地理的感覚を身に着けるためには、地図を眺めるしかありません。
そこで用意いただきたいのが、ポスターサイズの地図なのです。
いくつかの種類が出ていますが、お薦めのものを紹介します。
◆都道府県名・県庁所在地名をマスターする地図
まず用意するのは、この最も単純な地図です。
少し調べるとたくさん見つかるのですが、大事な条件があります。
(1)デフォルメされていないこと
幼児用と銘打って、デフォルメされている地図がいくつもあるのですが、決して手を出してはいけません。理由は言うまでもないですね。
(2)北が上
横長の地図にするために、日本列島を寝かせて表記しているものがいくつかありますが、決して手を出してはいけません。理由は言うまでもないですね。
(3)北海道が分離していないこと
日本は細長いので、北海道だけ分離してスペースを節約しようとする地図もよく見かけますが決して手を出してはいけません。日本列島の全体像を頭に焼き付けるのが目的ですので。まあ沖縄はあきらめるとしても。
(4)漢字で表記されていること
ひらがなで覚えても役にたちません。
(5)余計な情報が載っていないこと
特産品のイラストが載っているような地図はやめましょう。マスターしたいのは、都道府県名と位置・県庁所在地と位置、そして日本のシルエットです。
最初の段階では他の情報は不要です。ノイズとなって記憶の定着を妨げるからです。
つまり、シンプルな地図を探してほしいのです。
しかし、こんな単純な地図なのに、探すのには苦労しました。やっと見つけたのは、「くもん」の出しているこれです。右隅に載っている都道府県の主な生産物の表が不要ですが、これは無視しましょう。何なら紙を貼って隠してしまえばいいのです。
◆もう少し詳しい地図
都道府県と日本のフォルムを完全に頭に入れたなら、次のステップにすすみます。
新しいポスター地図を入手してください。
今度は、基本地名が書かれているものを探します。
2つ見つけました。
まずは、昭文社のこの地図。昭文社といえば地図専門会社ですので信頼がおけますね。
値段も1200円程度です。これは、「ワイド版」と「普及版」があって、普及版のほうが少し小さいのです。100円しか違いませんし、ここは「ワイド版」を強くお勧めします。私が買ったのもこちらです。タテ122cmヨコ87cmとなかなかのサイズ感ですが、眺めているだけで時間を忘れます(私だけ?)。一つだけ残念な点をあげるとすると、経線が少しだけ傾いているのです。私は少しだけ斜めに貼ることで修正していますが、四角いポスターが斜めに貼られているのは違和感がありますね。私にとっては日本列島が傾いているほうが気持ち悪いのでそうしています。
もう一つ良さそうなものを見つけました。
価格は2400円ちょっとと、昭文社のものの倍というのがひっかかりますが、色がきれいです。地形も見やすいですね。なんといっても、中国大陸と朝鮮半島が少し見えているのが素晴らしい。日本の隣国との位置関係が把握できます。
もう貼る壁が無いので私は買えないのが残念です。
番外編ですが、こんなものを見つけてしまいました。日本の地形が立体的になっているものです。これは面白いですね。九州最高峰が屋久島の宮之浦岳であることも一目でわかります。
とても欲しいのですが、4000円近くするのがネックです。しかも不要なカレンダーがついています。なんでこんな余計なものをつけたのかなあ? これでは1年しか貼っておけないではないですか。そう思ったら、商魂たくましいですね。そのカレンダーの上から貼るシールが別売りでした。
このシールをカレンダーの上に貼るのだそうです。これまで購入すると、5000円を超えてしまいます。う~む。
カレンダーを隠す資料は自作するとして、これを教室に貼っておくと生徒は喜びそうですね。
地図帳を用意
さて、ポスター地図を日々眺めているとしても、細かい地名についてはやはり地図帳が必要です。何かあればすぐに地図帳を開く癖をつけてほしいのです。
その時使用する地図帳は、帝国書院の中学生用の地図帳、一択です。
大手塾の中には、オリジナルの地図帳を買わせるところもありますが、中身は帝国書院の物で、オリジナルなのは表紙だけです。
この地図帳、30年以上前から中学受験用地図の定番です。
小学生用のものは小学校で配られたと思いますが、中学入試には情報量が少なすぎて力不足ですので、これを購入しましょう。
もしかして兄弟が使っていたものがあるかもしれませんが、必ず「新しいもの」を購入してください。
この地図帳には、基本的な地理統計資料が載っていて、これがけっこう使えるのです。そのためにも「最新版」を入手する必要があります。
これは中学校でも使用されていますので、学校で「副教材」として生徒に配布されるものと同じです。したがって、4月に新しいものが出ます。もう少し待って購入したほうがよさそうです。
この地図帳がぼろぼろに手擦れしたころには、地理はすっかり得意になっていることでしょう。
※本を上梓しました。
思考力系記述の授業を再現した本になります。ぜひご活用ください。






![帝国書院 令和7年4月新刊 中学教科書 中学校社会科地図 [教番:地図046-72] 帝国書院 令和7年4月新刊 中学教科書 中学校社会科地図 [教番:地図046-72]](https://m.media-amazon.com/images/I/41myTHRIszL._SL500_.jpg)
