中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】いつになったら本気になるの?

「先生、うちの子はいつになったら本気を出すのでしょう?」

実によく聞く相談です。

本気にならない子が普通

 

冒頭から身もふたもない結論で恐縮です。

しかし事実です。

 

こんな子がいました。

入試本番前日の1月31日の夜になって、母親から電話があったのです。

「うちの子は、テレビゲームにしがみついて止めようとしないのです。ゲームのやり過ぎで、指の腹が破れて血がにじんでいるのに、それでもコントローラーを手放さなくて・・・・」

泣きながらのお電話でした。

自覚もなければやる気もない、そして母親を泣かせているということにも動じない。

もうこれはどうしようもないですね。

もちろん原因は母親にあります。

そもそもテレビゲームを買い与えたこと、そしてそれを取り上げなかったこと、この2点において、母親がA級戦犯です。

入試前日になっても「本気」が出なかったというケースですね。

 

また、こんな子もいました。

1日に本命の第一志望校を受験、その合格発表は2日の午前中です。

2日は、午前中に第二志望の学校を、午後には別の学校を受験予定でした。

子どもが2日の学校を受験中にネットで第一志望の学校の合格を確認した親が、子どもが試験会場から出てくるのを待ちます。

「〇〇中、合格してたよ!」

「それじゃあ、この後午後受験に行かなくていいの?」

「もちろん」

「やった!」

後で本人から聞きました。合格したのが嬉しかったのではなく、午後受験に行かなくて済んだことのほうが嬉しかったのだと。

どうやらこの生徒は、入試が始まっても、自覚や本気が乏しかったようですね。

 

子どもの本気は自己暗示

 

受験が近づくと、塾の教室の空気が変わる。

 

そんな話を塾教師から聞いたことはありませんか?

 

実は嘘です。

私も長年教えてきましたが、そんな経験は一度もありません。

 

12月になっても1月になっても、子どもたちは相変わらずの様子です。

ではなぜ塾の教師はそんなことを言うのか?

 

自己暗示なのでしょう。

「入試が近づくと生徒も本気だ!」

こう思い込むことで、自分でも信じてしまうのだと思います。

 

営業戦略なのかもしれません。

「うちの塾は、入試直前になっても生徒はにぎやかでゆるい空気です」

「うちの塾は、6年生後半になると生徒はみな真剣で本気です」

どちらの塾に任せたいですか?

 

子どもを無理やり暗示にかける塾も多いですね。

毎回授業の冒頭に説教から入る塾

教師も生徒も全員がハチマキの塾

私の大嫌いな精神論系の塾ですね。そんな精神論で成績が上がるなら苦労はありません。必勝だの神風だのと書かれたハチマキをしめて戦った戦争の例を持ち出すまでもない話です。

もっともこうした精神論、学校教育現場にも生き残っているようです。中1生徒全員が徹夜で山を歩く行事が有名なある学校、この学校では生徒の体験手記を文集としてまとめています。その1冊をいただいたので見てみたのですが、冒頭の1行目を見た瞬間に目が点になりました。

「大和魂! 先生の掛け声で僕たちは歩き始めた・・・・・」

 

合格に本気もやる気も不要

 

火事場の馬鹿力ではないですが、人間が精神状態によって、思わぬ力を発揮することはわかります。「もう無理だ」と思ったところからさらに力を絞り出すためには、気合も重要なのかもしれません。

しかし、高度な頭脳プレーである入試に、そうした精神論は必要なのかな? 私の率直な疑問です。

将棋の藤井聡太氏が、本気ややる気で勝利を得ているとは思えません。常人には理解できない緻密な頭脳を駆使しているのだと思うのです。

教え子に、東大の医学部に進学した女子がいました。大学進学後に話を聞いてみると、中高6年間は、本気で勉強したのだそうです。いったいその「本気」とは具体的にどういうことだったのか聞いてみると、こうでした。

・こういう医者になりたいというビジョンが明確だった

・そのために東大医学部に進学するという目標があった

・そのために、無駄な時間を徹底的に排除して計画的に学習した

 

精神論ではないのです。緻密な計算が引き寄せた合格でした。

また、同じく東大に進学した別の女子生徒は、親に頼んで自宅近所の予備校に籍だけ置いたそうです。授業内容は学校の授業で十分だから、予備校の自習室だけが目当てだったとか。同級生には塾に通う生徒も大勢いたそうですが、学校帰りに塾の時間までをつぶすために、マックやサイゼやスタバに行って「勉強」しているのが無駄にしか思えなかったそうです。自分は一目散に自宅最寄りの予備校自習室に行って勉強する日々を続けたと言っていました。実に合理的かつ賢明な作戦でしたね。

 

子どもの「本気」「やる気」を引き出すために、学校の文化祭やオープンキャンパス等のイベントに子どもを連れていく方も多いですね。

子どもにとって、見知らぬ「初めまして」の受験を避けるためには大切ですが、その学校に憧れたからといって努力に結びつくほど単純な話ではありません。

まして6年生にもなって時間との戦いになっているときに、文化祭に行っているようでは・・・・。

 

「本気」も「やる気」もいりません。

ただただ、無駄な時間を削ぎ落して、必要な勉強を継続することでのみ、合格は近づきます。