中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】来年の2月になれば、母親は解放されますよね?

生徒のお母さま方と長い期間相談をしていると、本音で語ってくれる方もいます。

「先生、もう私は疲れ果てました。でも、あと〇〇日で解放されると思うと、それだけを楽しみにしているのです!」

「子供が中学受験生のお友達と一緒に、受験が終わったら海外旅行に行く計画を立てています」

お気持ちは痛いほどわかります。

ご褒美のハワイ旅行でもパリ旅行でもなんでも行ってきてください。

しかし、ほんとうに解放されるのでしょうか?

子供は急に変われない

中学受験は親の戦いだとは一般に言われますね。半分は事実です。親のバックアップ体制がなければ成立しないのは間違いありませんから。

子供の自主性などにまかせておけないのが中学受験です。

なんといっても小学生では、自立して学習することはほぼ不可能ですし、自己責任論も適用できません。

手取り足取り、親がすべての段取りを整えて勉強させるのが普通でしょう。

・塾に送るのは母親、お迎えは父親だった

・塾弁当を作るのは母親の仕事だった

・夜は父親が子供の勉強に付き添った

・学校の夏休みの宿題は実は母親が手伝った

これくらいは普通に聞く話です。

 

さて、2月の第一週で、すべてが終わります。

やっと終わるのです。

これで子供の世話から解放される! 

そう思いたい気持ちはわかりますが、現実はそうではありません。よく言われるように、中学進学は、ゴールではなくスタートだからです。

「もう中学生になるのだから、あとは自分でやってほしい」

そう思うでしょうけれど、今までそうした経験がなかった子供が、いきなり自律して行動できるはずがありません。

 

こんな生徒もいました。

「中学受験が終わったとたん、お母さんが勉強について一切言わなくなったんだよ」

「お父さんは?」

「お父さんは、そもそも受験にすら口出ししていなかった」

「その方がよかったんじゃないか」

「その当時はね。中学でも高校でも、赤点をとろうが追試になろうが、一切何も言われなかったから」

「それは君のことを信頼してくれてたんじゃないか?」

「ううん、それとはちょっと違うと思う。どっちかっていうと、自分の遊びに夢中になってたような気がする。ママ友たちと、海外旅行に行ったりゴルフに行ったり、けっこう遊びまわってたよ」

「それは、お母さんだって解放されたかったんだよ」

「そうなんだろうね。でも、それにしてもわが子を見捨てすぎだよ。おかげで・・・」

この後は、親に対する理不尽な愚痴が続きます。親がもう少し中高生時代に自分に目を向けてくれていたら、自分ももう少し違った未来を描けたのではないかと。

単に自分の努力不足だろ! と言うのは簡単ですが、ソフトランディングできなかったのは間違いありません。

 

塾にまかせるのはやめよう

 

勉強=塾

この短絡志向をやめましょう。

たしかに、中学受験は塾がすべてでした。中受の勉強=塾に行くことだったのですね。

(本当は必ずしも塾が必須だったのではないのですが、そのあたりについては拙著をお読みください)

したがって、中学に進学してからも、勉強する=塾に行かせる、と短絡志向する方があまりに多いのです。

◆入試の合格発表直後に鉄緑会へ申し込む

◆塾の中学英語数学入門講座に通わせる

◆とりあえずSEGの数学にかよわせてみる

◆英語だけは平岡に申し込んだ

 

実によく聞きますね。

まだ中学校が始まってもいないのに、もう子どもを次の塾に押し込むのです。

もちろん、どんな形であれ、勉強することは正義です。鉄であれSEGであれ、通うことで得られるものも大きいのでしょう。

しかし、その延長線上で、定期試験の結果が不振だから塾を探す方が多いのは問題です。こうした中高一貫校生対象の塾は、そこを目的としていません。あくまでも大学実績を出すために存在します。

パラレルで異なる進度・カリキュラム・教え方でもやっていけるほどの学力の余裕がある子でないと、逆効果になる可能性が高いのです。

 

ソフトランディング

 

こんなご家庭もありました。

中学受験のときは、父親が中心となって子供の学習を見ていたのです。

そのため、父親は入試問題を4科目解いていました。子供の躓くところや理解できないところを事前に把握して、的確に機会指導していたのですね。

ここまでくるとプロの塾教師ができるレベルですが、父親曰く、「それくらいは当たり前」なのだとか。頭が下がります。

 

父親の書斎に机を二つ並べて、親子で座ります。中学受験のころは、子供の学習状況を父親が完璧に把握していたそうです。

中学生になっても、スタイルは変わりません。父親は子供の使う教材を自分用にもワンセット購入しています。事前に目を通していますので、すべて教えられる状態です。

「中学受験の内容に比べれば、中学生の内容のほうが教えやすいですね」だそうです。

ただし、指導スタイルは変化しました。

基本的に、子供は自分で勉強し、わからないところだけ父親に質問します。

その間、父親は自分の仕事を隣でやっているのです。

ただし、中1最初の定期試験については、全面的に関わったそうです。ここでの高得点は今後の中高生活に大きな意味を持ちますので、正解です。

中2の途中からは、すっかり親の手を離れてしまいました。ほぼ自力で学習し、質問される回数もめっきり減ってしまいました。

たまに、「どうだ?」と声掛けしても、「あ、大丈夫だから」と言われるのだとか。

大学入試まで並走する気満々だった父親としては寂しいそうですが、これでいいのです。

 

だいたい1年計画くらいのつもりで、少しずつ距離をとっていきましょう。

 

そもそも中学受験は、4つのエンジンを積んで飛んでいたようなものです。

父親・母親・塾、そして本人です。

この4つのエンジンが目標に向かって飛ぶ、それも高度を上げながら飛ぶ推進力を生みだしていました。

もちろんエンジンの大きさは家庭によって様々です。

だいたいは、子ども本人のエンジンの出力が最も小さいですね。

 

さてそれを、いきなり3つのエンジンを取り去って、「これからは自分のエンジンだけで飛ぶのよ」と言ったらどうなるでしょうか。

 

失速必至ですね。

そこであわてて「塾」というエンジンを積もうとするのでしょうけれど、残念ながらこの塾エンジン、重量ばかり嵩むわりには推力は不安定で、しかも方向性が違います。今必要なのはこのエンジンではないのです。

例外として、個別指導・家庭教師というエンジン、しかも優秀なエンジンなら良いかもしれません。子どもの飛行を上手にサポートしながら、少しずつ子どものエンジン性能を上げるような指導をしてくれます。

もちろんこうしたエンジンは高価で稀少でなかなか手に入りません。

 

いきなり離脱するのではなく、子どものエンジン性能を少しずつあげながら徐々に出力を控えていく、そうしたやり方が必要なのです。

 

50日間の重要性

 

「50日間」というのは、入試の合格発表から入学式までの日数です。

中学受験勉強が終わり、あらたな中学生活が始まるまでの50日間をどう過ごすのかで、その後が大きく変わります。

申し訳ありませんが、お友達と海外旅行に行っている場合ではありません。お子さんとしっかり向かって、今後の中学校で幸先良いスタートを切れるようにしなければなりません。

もちろん、塾に行かせるのではありません。勉強をすべて教え込むのでもありません。

中学生になって学ぶべき内容を先取りできるようアシストするイメージでしょうか。

 

まずはこの50日間、お子さんのエンジン性能の出力を向上させるつもりで、自立飛行が可能なようにしてあげましょう。

 

さらに詳しく知りたいかたは、ぜひ拙著をお読みください。