
今回は早稲田大学に直結する学校について書いてみます.
附属校と系属校
ご存知のように、早稲田大学の付属校・系属校にはこんな学校があります。
【附属校】
◆早稲田大学高等学院・高等学院中学部(男子校)
◆早稲田大学本庄高等学院(男女共学)
この2校のみが、学校法人早稲田大学の経営です。いわゆる本当の附属校ですね。したがって、卒業生全員が原則として早稲田大学に進学できます。
【系属校】
◆早稲田実業学校 初等部・中等部・高等部(男女共学)
早実は、100%の大学推薦枠を持っています。したがって、世間的には早稲田の附属とみなされていますね。
◆早稲田中学校・高等学校(男子校)
もともとは早稲田大学とは別に作られた学校でした。1882年創立の「東京専門学校」が「早稲田大学」の名称となったのは1902年です。早稲田中高は、1895年の創立当初から「早稲田」の名を冠しています。このことが自慢のようですね。「うちは早稲田大学より昔から早稲田ですから」という文言を学校関係者から何度も聞きました。HPにもそう謳っています。もっとも、東京専門学校関係者や大隈周辺の人物が創立に関わっていますので、早稲田大学と大いに関係がある学校です。ここが早稲田大学の系属校になったのは1979年です。大学への推薦率は50%です。早稲田中高の大学実績を見るとわかりますが、東大30名、科学大20名をはじめとして、かなりの実績を誇っています。
「推薦で早稲田大学にも行けるが、もっと上を目指す」進学校の側面も持っていることが人気の理由でしょう。
◆早稲田渋谷シンガポール校(男女共学)
ここは複雑です。もともとは渋谷教育学園が渋谷幕張シンガポールとして運営していた学校に早稲田が合弁と言う形で入り、2002年から系属校となりました。シンガポールですが日本語で授業を行う日本人学校の一種です。大学への推薦枠は8割ほどです。
この学校、以前は両親が海外在住の子弟しか受け入れていませんでしたが、2025年からは両親が日本在住の高校生の単身留学生も受け入れるようになりました。ただし「留学」とはいっても、寮生は日本人、授業も日本語、そして日本の高校卒業資格となるので、大学の帰国生枠には該当しないことには注意が必要です。
◆早稲田大阪高等学校(男女共学)
聞きなれない学校名ですが、今年(2025)、早稲田摂陵高等学校から校名が変更されました。2009年から系属校になりましたが、推薦枠は10%しかありません。その他の大学実績を見て見ると、国公立は、阪大や神戸大に1名ずつ、私立は、近畿大学68名、京都産業大学52名、関西大学38名、龍谷大学30名、立命館30名といった数字があがっていました。
◆早稲田佐賀中学校・高等学校(男女共学)
2010年設立の新しい学校です。推薦枠は5割です。その他の大学実績は、九州大に5名が目立ちますが、私学だと立命館11名、同志社8名、青学7名といった数字です。
系属校は、学校名に「早稲田」とつきますが、早稲田大学とは別法人です。したがって、卒業生の早稲田大学への進学割合は、学校によって異なります。
この「系属校」の存在が、早稲田の附属(系属)をわかりにくくしているのですよね。
このあたりが慶應と違うところです。
もっとも慶應も複雑ではあります。小学校から、中学校から、高校から、それぞれ異なるルートが存在しますので。ただし全てが慶應大学の直系附属校です。したがって、慶應義塾高校(男)、慶應義塾志木高校(男)、慶應義塾女子高校(女)、慶應義塾湘南藤沢高等部(共学)、慶應義塾ニューヨーク学院(共学)の5校のいずれかの高校に入れれば、原則として全員が慶應大学へ進学できます。
ちなみに慶應ニューヨークは、ニューヨーク州の認可も受けていますので、日本・アメリカ両方の高卒資格が得られる点は早稲田渋谷シンガポールとは違います。
早稲田大学への道
大学附属を受験するということは、大学受験を回避することとイコールですね。本来なら、大学受験勉強に追われるよりも、他にやりたいことがあるので大学受験をしない道を選択する、というのが志望理由のはずですが、私の教えてきた生徒にそうした生徒は皆無でした。
もう受験はしたくない!
これが最大の理由です。しかも、本人ばかりか親までもが同意見のケースが多いのです。
気持ちはわかります。
さて、早稲田大学へ直結する学校というと、もう一度整理するとこうなります。
【中学から早稲田大学へ】
◆早稲田大学高等学院(男子)
◆早稲田実業(男女)
男子は2択、女子は1択です。
まず早稲田高等学院中等部から見て見ましょう。
募集人員は120名、合格者は130名程度です。実質倍率は3倍前後で推移していますね。
さすがにここに合格して辞退する人は少ないのでしょう。
募集人員 志願者 受験者 合格者 実質倍率
2025 120 392 366 126 2.90
2024 120 416 380 129 2.95
2023 120 465 433 131 3.31
2022 120 470 438 133 3.29
2021 120 448 407 134 3.04
2020 120 460 430 137 3.14
2019 120 464 429 134 3.20
ところで早稲田高等学院は高校募集も行っています。
募集人員 志願者 受験者 合格者 実質倍率
2025 260 1842 1428 509 2.81
2024 260 1818 1438 522 2.75
2023 260 1800 1410 516 2.73
2022 260 1848 1389 520 2.67
2021 260 1507 1141 497 2.30
これを見ると、260名募集です。
あきらかに高校募集がメインであることがわかりますね。
もともと高校しかなかったところに、中等部を増やした、そういう位置づけなのだと思います。
完全中高一貫校(高校募集無し)や、中学募集がメインの学校と比べると、当然校風にも影響があります。
早稲田実業を見て見ましょう。
中等部で男子70名、女子40名募集となっています。
まだ男子校を引きずっているのでしょうか。人気校なのに女子の募集枠が少なすぎますね。倍率も、男子は4倍ほどですが、女子が5倍となります。
高校からは男女ともに45名ずつの募集枠となっています。
【高校から早稲田へ】
高校からだと、前述した早稲田高等学院と早稲田実業に加えて、早稲田大学本庄高等学院という選択肢が増えます。
ただし早大本庄も、男子100名、女子70名の募集定員となっています。
最近は都立高校も、男女別の募集を取りやめてきていますね。これは、仮に同数だとしても、男子と女子を分けて募集すると、女子に不利になることが批判され続けたからです。どうやら都立高校受験では、女子のほうが男子よりも優秀な子が多いのですね。男子にとっては情けない話ですが、実力勝負の受験で、男女に差を設ける必然性はありません。差別・ジェンダーといった常識の話です。
そう考えると、早稲田実業や早大本庄のように女子の定員を男子よりも減らすことにどのような意義があるのか、学校のお考えを聞きたいところです。
そういえば、慶應中等部も男女比は2:1でしたね。
私は、男子校・女子校の存在は否定しません。そうした学校を選ぶ・選ばない自由がある以上、何も問題はないからです。それぞれ独自の理念に基づいて創立・存続している学校ばかりです。
しかし、「共学校」で男女比を調整している学校は嫌いです。
意味がわからないからです。
本当なら、男女無関係に試験を実施して得点の高い生徒から定員まで合格を出すのが当たり前です。
都立高校がやっと気づいた通りです。
百歩譲って、男女同数の定員とするならまだ理解できます。
それにしたって、同じ教室で学んでいた生徒なのに、あきらかに学力の高い女子が落とされ低い男子が合格となる矛盾に対して、落とされた女子生徒にかける言葉を私は持ち合わせていません。「君が男だったら受かったんだけどね」と言えとでも?
これについては、「大人っぽい女子の元気さに幼い男子が負けて萎縮してしまうから」男女比を調整しているという意見も聞いたことがあります。
何だそれ?
まあ、私学ですから、ジェンダーの匂いが嫌なら受験しなければいい話ですが。
ところで、高校から早稲田を目指す子も多いのですが、なかなか競争が厳しいことは考えなくてはなりません。
知人の娘は、塾に言われるままに早大本庄を受験し合格したものの、毎日暗いうちから片道2時間半かけて通学していました。3年頑張ればそのまま早稲田大学に進学できるのは嬉しいですが、往復5時間の時間を捨てるのはあまりにも厳しいですね。おそらく部活もままならなかったはずです。
大学附属を選ぶ理由の一つに、大学受験に邪魔されずに部活に集中できることもあげられると思います。いくら大学付属だからといって、あまりに遠隔地の進学はやめたほうが良いと老婆心ながら思います。