中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【ロジカルライティング】コンビニについて考える その2

 

私:みんな前回の宿題はやってきたか?

タロウ:宿題?

私:コンビニにいって疑問を見つけてくるという宿題だ!

タロウ:うそうそ、ちゃんと行ってきたよ。

ワタル:ねえ、そのやりとりって必要?

タロウ:お約束だからね。

私:それではタロウ、発表してくれ。

タロウ:「最近のコンビニは、お惣菜やお弁当が充実しているのは何故だろう」

私:ほお。良い着眼点だな。それで?

タロウ:それでって、これだけだよ。

私:まさかと思うが、疑問を見つけただけなのか?

タロウ:だって先生、宿題は疑問を見つけることだって言ってたよ。

ゲンタ:うん、僕もそう思ってた。

ワタル:僕たち先生の指示に従ったまでだし。

私:あのなあ。この講座はロジカルライティングだぞ? 疑問を持ったなら、その理由について考えることまでがワンセットに決まってるだろ! 今から考えて書きなさい!

 

疑問の理由

タロウ:できたよ。「最近のコンビニでは、お惣菜やお弁当が充実しており、また良く売れている。これは、近くのお弁当屋さんの客を奪って儲けを独占することと、お弁当を買いにきた客に、ついでに他の商品を売りつけてより儲けを増やそうとするコンビニの作戦なのである。」

ワタル:なるほどなあ。たしかに僕のおうちの近くにあった持ち帰り弁当屋さん、いつのまにかなくなってたってお母さんがぼやいてたよ。お昼ご飯を自分で作るのが面倒なときに愛用してたんだって。

ゲンタ:コンビニに行くと、買うつもりもない物をつい買っちゃうことってあるよね。僕もコンビニのお菓子コーナーはよくチェックするよ。

タロウ:先生、これは満点だよね?

私:7点だ。

タロウ:何で?

私:内容は間違ってはいない。ただし、書き方を工夫しないとな。このままだと、コンビニに対する悪意を感じるぞ。

タロウ:そうなの? 僕のコンビニ愛、伝わらなかった?

私:伝わらないな。

タロウ:それならこう書き直したらどうかな?

「最近のコンビニでは、お惣菜やお弁当が充実しており、また良く売れている。これは、スーパーや持ち帰り弁当店の需要を取り込み、また弁当やお惣菜以外の商品の売り上げを伸ばし、利益を増やすことが目的だからである。」

ワタル:あ、全然変わった。何か大人っぽい。

私:うん、これなら満点あげられたな。需要とか利益とか、知っている単語なんだからきちんと使わないと。内容も悪くない。たしかに最近のコンビニでは、お弁当やお惣菜に力を入れている。

ゲンタ:焼き鳥とか、おでんとかまで売ってるよね。

タロウ:お惣菜もおいしそうだったよ。

私:その理由について、タロウが考えたこと以外にも何か思いつくかな?

ワタル:それはただ単に、売れているからってことじゃダメなの? ほら、需要と供給ってやつ。需要があるんだから供給して儲けるのは普通だと思うけど。

私:その通りだ。では、なぜ需要があるんだ?

ゲンタ:それは美味しいし、食べたい人がいるってことだよ。

私:もちろんそうだが。そもそもそうしたお弁当やお惣菜を買う人ってどんな人達なんだろう?

ゲンタ:食べたい人達。

私:こら、脊髄反射で答えるのはやめなさい。少し考えてごらん。

タロウ:自分で作るのが面倒な人たち。僕のお母さんみたいな。

ワタル:タロウのお母さんは普段料理はしないの?

タロウ:そんなことないよ。お母さんの作ってくれる料理って美味しいんだ。

ワタル:それなのにお弁当を買ってくるのは?

タロウ:だから、作るのが面倒だったり時間がなかったりするんじゃないかな。あと、洗い物が面倒だってのもあると思う。

ゲンタ:お昼どきだと、近くの会社の人たちが大勢買いにきてたよ。レストランに食べに行く時間がないから、手早くお昼ご飯を食べたいんだね、きっと。

ワタル:さすがコンビニ、時間が無い人の味方だね。

タロウ:う~ん。僕気になってたんだけどさ。忙しそうな人がコンビニでお弁当やお惣菜を買うっていうのはよくわかるんだ。でも、僕がよく行くコンビニって、暇そうな人もよく見かけるんだよね。

私:暇そうな人っていうのも失礼な言い方じゃないか。

タロウ:だってそうなんだもの。もう仕事をしていないお年寄りなんだよ。平日の午後に見かけるってことは、仕事はしてないよね?

ゲンタ:あ、僕もよく見かけるなあ。おばあちゃんがお惣菜をじっくりと選んでるのなんかさ。

ワタル:時間があるんなら、自分で作ったほうが安上がりなのにね。面倒くさいのかな?

私:徐々に真相に近づいてきたようだな。ではここでヒント。みんなの家の冷蔵庫に、使われないまま結局捨てることになる野菜なんか入っていることはないかな?

タロウ:あ、それよくあるよ! 大根の端っことか、ニンジン1本とか。何か料理を作るために買ってきても、全部をいっぺんに使うわけじゃないよね。だから、いつのまにか残っちゃうんだよ。

ゲンタ:うちもそうだよ。もう何の野菜だかわからなくなったような、野菜のミイラが時々発掘されることがあるよ。

ワタル:あ、そうか! 4人家族の家ですらそうなんだから、ましてお年寄りの一人暮らしだったりすると、料理のために材料を買ってきても、量が多すぎて使いきれないんだよ。

ワタル:なるほどね。だからおじいちゃんとかおばあちゃんが、コンビニのお惣菜を買ってるのか。

タロウ:その方が結果として安上がりなんだね。

私:その通りだ。お年寄りにとって、スーパーよりもコンビニのほうが便利なんだね。

タロウ:それに、遠くのスーパーよりも、近くのコンビニのほうがお年寄りには行きやすいし。

私:では次はゲンタの答えをみてみよう。

ゲンタ:「コンビニでは、店舗面積がそんなに大きくはないのに、僕の欲しい物が多く売られている気がするところに疑問を持った。それは僕と同年代の客が多いため、そうした客が買いそうなものを取り揃えていることが理由だと思う」

タロウ:そうなんだよ! お菓子でもジュースでも、スーパーよりも欲しい物を売ってる気がする。

ワタル:さすがだよね。

私:この着眼点も良かった。

ゲンタ:それじゃあ満点?

私:内容は悪くないが、書き方にもう一工夫してほしかったね。「僕の・・・」という書き方をすると、作文みたいに見えるだろ?

ゲンタ:あ、それ前も言われたことあるよ。それじゃあこれならどう?

「コンビニは、スーパーと比べると店舗の面積が狭いのに、利用客の買いたい物を多く取り揃えている。それは、利用客の需要を的確にとらえているためである。」

私:そうだ、最初からそう書けるようにしなさい。

タロウ:やっぱり需要あるところに供給ありなんだね。

私:それではコンビニはどうやって需要をとらえている、つまり、どうやって客が欲しがる物を取り揃えるんだろうか?

タロウ:それそれ。そこが不思議なんだよね。

ワタル:一応並べておいて、売れる物を重点的に仕入れるとか?

ゲンタ:でもさ、店の場所によっては利用客って違うよね。例えばオフィス街のコンビニと、住宅街のコンビニ、それから巣鴨の商店街のコンビニとか、利用する客が違うと思うんだ。

ワタル:巣鴨? どうして?

ゲンタ:知らない? 巣鴨の商店街って、おばあちゃんの原宿って呼ばれてるんだよ。ね、先生?

私:巣鴨には、とげぬき地蔵尊として知られる高岩寺というお寺があってね。その前にある商店街、地蔵通り商店街は有名だね。江戸時代から、中山道の最初の休憩場所として栄えたんだ。

ワタル:日本橋から巣鴨まで歩いたの?

私:当たり前だ。江戸時代だぞ。日本橋から巣鴨までだったら、7キロちょっとだから、2時間もかからない。それに、今でも地蔵通り商店街は楽しいぞ。おいしい磯揚げとか肉まんとかがあってね。和菓子も充実している。

ゲンタ:さすが先生、食いしん坊だね。

タロウ:つまりさ、会社員が多いコンビニ、お年寄りが多いコンビニ、子供が多くくるコンビニって、店ごとに仕入れる商品を細かく調節してるってことだよね。それって超面倒くさいよ。

ワタル:たしかになあ。いったいどうやってるんだろう?

ゲンタ:きっとAIカメラが店内にあって、どんな人がどんな物を買ってるかチェックしてるんだよ。それを本社のコンピュータが分析してるんだ。

ワタル:なるほど。そうだったのか。

私:いや、まだそこまではいっていない。でも現実になりそうで怖いな。今のところは、レジで商品のバーコードを読みとったときに、売れた商品の情報を本社のコンピューターに送っているんだ。これをPOSレジと呼んでいる。

ワタル:あ、それで僕の疑問の答もわかったよ。

私:ワタルの記述を見せてごらん。

ワタル:「コンビニは、狭い店舗なのに細かく商品を補充している。それは、コンビニの前にいつも配送用のトラックが止まっていることから、おそらくあらゆる商品を詰め込んだトラックが定期的に巡回して商品を配送しているのだと考える」

私:なるほどな。良いところに注目したな。

ワタル:ねえ、書き直してもいい? 僕はてっきりトラックにすべての商品が詰め込んであるんだと思ってたけど、今気が付いたんだ。

「コンビニは、狭い店舗で売れる商品だけを補充するために、POSレジを利用している。どんな商品がどれくらい売れて、何を補充する必要があるのかを本社のコンピューターが瞬時に分析して、すぐに配送トラックを送るシステムとなっている。」

私:その通りだね。コンビニについては、まだまだ考えることがたくさんあるけれど、今日はこれくらいにしておこう。