中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

高校受験を目指す前に親がやっておくべきこと

この記事を読んでいる方は、中学受験を考えている方ばかりだと思います。

しかし、中学受験から撤退を考えている方もいると思いますので、今回は高校受験の準備のファーストステップについて書いてみることにします。

高校入試問題を解こう

実は今回のアドバイスは、これだけです。

ただし、問題を解くのは子どもではありません。親が解くのです。

 

中学入試の準備でも、私はいつも同じことを言ってきました。

「まずは親が中学入試問題を解いてみましょう!」

私がこれを発言した瞬間、聞いていた保護者のみなさんの空気が、さあっと「引いていく」のが目にみえるようでしたね。

子どもに、「勉強しなさい!」と言う前に、親が問題を解いておくことなど常識だと思っていたのですが。

 

これは高校受験についても全く同じことが言えるのです。

親のみなさんが、まずは高校入試問題を解くのです。

全てはそこから始まります。

 

都立高校の入試問題

最初に解くべきなのは、都立高校の入試問題です。

私がこれをお勧めする理由は2点あります。

 

その1 大人が解きやすい

 英語は、所詮中学生英語の世界ですから楽勝でしょう。たとえ現在英語を仕事で使う環境に無いとしても、中高大と10年にわたって英語は学んできましたから。

 数学は、方程式の基礎の基礎が中心です。方程式を使わない「特殊算」を「特殊な方法」で解かなくてはならない中学受験算数とは違い、大人にとって解きやすい世界です。

 理科は、これも中学生の範囲です。高校以降で学んだ物理・化学・生物・地学が苦手だった人でも、懐かしい内容ですので何とかなるでしょう。

 社会は、これも中学生の範囲です。思い出しながら解きましょう。

 国語は、さすがに大人である親なら楽勝のはずです。

 

その2 入手しやすい

 書店にいかなくても、東京都教育委員会のHPで、過去6年分の問題・模範解答・解答用紙が公開されています。さらに出題の基本方針や記述の採点ポイントまで公開されているのです。

 残念ながら、英語のリスニング問題については、台本は公開されていますが、音源はありません。

しかし、神奈川県の県立高校の入試問題では、音源のMP3ファイルまでダウンロードできますので、こちらを利用するとよいでしょう。

 神奈川県は、1年分しか公開していないのが残念ですね。埼玉県では3年分、音源まで合わせて公開されていました。

他府県の入試問題でも良さそうですが、東京都や神奈川県あたりの問題のほうが、「土地勘」ならぬ「学校勘」が働きやすいので、地方の入試問題より適しています。

 

現実を知る

 

さて、問題を解いてみた感想はいかがでしたでしょうか?

 

驚きましたよね?

 

簡単すぎます。

 

こんなレベルの問題を解くために、中学3年間も費やすのか!

 

そうです。これが、中学入試と高校入試の最大の違いなのです。

 

都立高校の入試問題は、本当に易しいのです。私立中学最難関校を目指す小学生なら、だれでも合格点が取れるレベルです。

 

こんな易しい問題を解くために、中学3年間を費やすことになるのです。

実は、多くの公立中学の生徒たちは、高校入試を目指して3年間も費やしません。普通に学校生活を送りながら、塾に「のんびりと」通うのが普通です。内申がありますので、学校の定期テストの高得点を取ることが重要だからです。

そして部活にも力を注ぎます。お近くの公立中学を見に行ってください。校舎の外壁に、「〇〇部、全国大会出場!」なんていう垂れ幕がかかっていませんか?

こうした垂れ幕、難関私立中高ではまず見かけません。そこを教育目標にしていないからです。

 

そういえば以前、あるスポーツの全国大会に出場が決まった私立中高一貫校の教頭先生とお話する機会があったとき、その先生がこんなことをおっしゃっていました。

「たしかに全国大会出場は快挙なのですが、ここだけの話、私個人はあまり嬉しくはないのです。うちの学校にスポーツ学校のイメージがつきますから」

大学実績を伸ばすためにあれこれ工夫している学校でしたので、テレビ中継されるようなスポーツ大会に出場することで、世間から「勉強よりスポーツ」と思われてしまうことは避けたいという本音だったのでしょう。

 

公立中学生活において、部活もまた重要な要素として学校も力を入れているのですね。

そして、中3の夏の大会で部活を卒業します。

それからの半年間で受験勉強に注力するのです。

 

最初にその話を高校受験専門塾の先生から聞いたときには信じられませんでした。

「小学生だって最低でも3年間は、あらゆることを犠牲にして受験勉強するのに、たった半年?」

「仮に失敗しても中学生になれる中学受験と違い、高校入試に失敗したら後は無いのに?」

しかし、入試問題を解けばわかるように、半年の特訓でも何とかなるレベルです。

それでも都立高校入試なら5科目ですが、私立高校入試なら、英数国、たったの3科目です。

 

高校受験に切り替えるということは、中学受験とは異なる価値観の世界に飛び込むことだと私は思っています。

そこで大切なのは、以下の3点です。

 

◆公立中学校の学習をパーフェクトにする

 定期試験では常に満点を基本としましょう。主要教科だけでなく副教科にも手を抜いてはいけません。これは何も内申点を上げるというような姑息な目標ではないのです。せっかく中学校でいろいろな教育を受けるのですから、せめてそれをパーフェクトにこなすことを目指すべきだと思うからです。

 中学校で学ぶことは、いわば大人になる準備としての「基礎教養」を身に着けることなのです。ここをきちんと学ぶことは大きな意味があると思います。くれぐれも、学校の授業をおろそかにしてまで、部活に時間を捧げたり、塾の勉強を優先させることのないようにしましょう。

 

◆目標を高校進学後に置く

 まずは高校に合格しなければ何も始まらない。普通はそう考えるでしょうけれど、実は違います。

たとえば開成高校。おそらく男子が挑む高校入試では最高峰の学校です。ここを上回るレベルの高校は筑駒しかありません。日比谷高校も最難関校ですが、私立と公立、中高一貫校と高校のみ、男子校と共学校、と全くジャンルが異なります。

この開成高校に入学直後には、学内模試の結果で、成績上位100人中の半分を高校入試組が占めますが、3年後にはそれが半減するのです。このことは、開成高校合格だけを目標とした勉強では通用しないということを意味していると思います。

 

数学を例にとりましょう。

中高一貫校の多くは、進度が速いことはご存知でしょう。高2までで全カリキュラムを終わらせて、高3の1年間は大学受験勉強に費やすのが一般的です。

数学では、中2までに、中学生範囲を終わらせるのが普通です。早い学校ではその倍速で進みます。

中3になると、数1・Aの範囲に突入します。高1では、それに加えて数2・Bの範囲を学びます。

高校入試を目標として中学数学で足踏みしている場合ではないのです。

 

◆今すぐスタートを切る

 高校受験を目標とした学習のスタートは、小学生である今から始めましょう。

英語については、いくら勉強してもし過ぎることはありません。継続と蓄積が重要な教科です。すぐに取り掛かるべきですね。

また、理科・社会も重要です。中学入試の理科・社会は、ちょうど公立中学校で学ぶ範囲やレベルとほぼイコールです。そして進学予定の公立中学校には、中学受験残念組の子も何人もいると思います。そうした子たちと同じ土俵に立つためには、せめて中学生範囲の理科・社会は学んでおくべきなのです。そこで生まれた余力を、通学や英語に費やすことができます。

 

高校受験問題を解くことで、様々な現実が見えてきます。

そこがスタートです。