
みなさんは、「20・8・2勉強法」ってご存知ですか?
今回はこれをご紹介しましょう。
「20・8・2勉強法」とは?
こうした「〇〇勉強法」「〇〇メソッド」というものは、だいたい怪しい眉唾物だと私は思っています。アメリカのボーディングスクール発祥の「ハークネスメソッド」なんて、その昔ハークネス先生が大きな楕円テーブルの周りに生徒を座らせて討論スタイルで授業したというだけのものですから。そのテーブルを「ハークネステーブル」と呼ぶのだそうです。
さて、この「20・8・2勉強法」も怪しいのでは?
この勉強法は、コーネル大学経済学部教授のアラン・ヘッジ氏が推奨しているやり方だそうです。
コーネル大学! 名門ですね。アイビーリーグの一画を占めるこの大学は、先日発表されたTHE世界大学ランキングで16位でした。ちなみに東大は26位です。
そんな押しも押されもせぬ有名大学の教授が推奨しているのだから・・・。
はい、これがいわゆる「権威者への盲従」というやつですね。心理学で有名な「ミルグラム実験」というものがあります。別名「アイヒマン実験」とも呼ばれますが、簡単にいうと、人間がいかに「権威」に弱いかを証明した実験として知られています。
例えば、皆さんは「ポーリング博士」をご存知でしょうか?
分子生物学者の博士は、ノーベル化学賞と、核廃絶運動によりノーベル平和賞の両方を受賞しています。
そんなポーリング博士が推奨したのが、「1日3000ミリグラムのビタミンCの摂取」をすすめる健康法でした。
3000ミリグラムといえば、人の一日摂取量として推奨されている量の30倍!にもなります。いくらビタミンCが水溶性で尿として排出されるからといっても、そんなに摂取して大丈夫なのか? そもそも尿として排出されるだけなら効果はないのでは?
ポーリング博士によると、大量のビタミンCの服用によって風邪をひかなくなったそうです。また血液中に大量に投与することで癌にも効果があるのだとか。
実は、これは科学的には全く根拠が無いそうですね。むしろ弊害が指摘されています。
十分なビタミンCを摂取することは大切ですが、過剰な摂取には意味がない、というのが現代の医学的な判断だそうです。
しかし、一旦ポーリング博士ほどの「権威」が発信してしまうと、こうした情報は根強く広がるのです。
さて、「20・8・2勉強法」について無条件に信じ込む前に、まずはアラン・ヘッジ氏が何者かを確認しましょう。
アラン・ヘッジ博士は、コーネル大学のデザイン・環境分析学科を率いているそうで、いわゆる「人間工学」の専門家なのだそうです。別の資料では「経済学部経営学」とありましたが、そのあたりはよくわかりません。
博士の研究成果としては、自然光や室内温度、さらに座る姿勢による仕事効率についてのものがあるようです。いろいろ調べてみたのですが、「20度よりも25度のほうがタイプミスが44%減少」とか、「自然光が入る環境のほうが仕事効率が上がる」とか、そうしたものがあります。
正直いって、当たり前すぎる結論で驚きはないですね。
興味のある方は、Ergonomics International Journal に発表された博士の論文のリンクを貼っておきますのでお読みください。PDFで12ページあります。
「Worker Reactions to Electrochromic and Low e Glass Office Windows」
https://medwinpublishers.com/EOIJ/EOIJ16000166.pdf
概要はこうなっています。
電気色調変化ガラスを採用した5棟のオフィスビル(n=268)と低放射ガラスを採用した2棟のオフィスビル(n=44)において、自然光と視覚環境が業務、満足度、健康、ウェルビーイングに及ぼす影響に関する居住者調査を実施した。オンライン調査はボランティア参加者に実施された。結果、眼精疲労、頭痛、照明品質満足度、窓ガラス照明品質、覚醒度に関する主観的報告は、電気色調変化ガラス採用ビルで有意に良好であった。自然光グレア、自然光品質、気分、エネルギーレベル、健康とウェルビーイング、自己評価生産性、作業品質については、ビルタイプ間の有意差は認められなかった。本知見は、電気色調変化ガラスが室内光質を改善し、居住者の快適性と健康増進に寄与し得ることを示している。
「20・8・2勉強法」の実践
さて、この勉強法の実践は簡単です。
◆座って20分勉強する
◆立って8分勉強する
◆2分間歩く
このサイクルをひたすら繰り返すのだとか。
こうすることで脳血流も向上し、頭がよく働くようになるのだそうです。
すいません、期待外れでしたね。
さぞかし画期的な勉強法かと思いきや、どうってことのない勉強法でした。
誰しも、試験前の徹夜勉強で、眠気と戦いながら実践してきた方法です。
座ったまま勉強していると寝ますので。そこで立ってうろうろしながら単語帳をめくった、そんな経験ありますよね?
まあこれを、きちんと時間を測って計画的に実践するところがポイントなのでしょうか。
立つ勉強法
実は私は、何年も前から「立って仕事をする」を実践しています。
仕事場には、普通のデスクに加えてスタンディングデスクを置いています。
これは、自分の身長と好みに合わせて自作しました。スタンディングデスクにもモニターをモニタースタンドで設置してありますので、座って行うPC作業をそのまま立って継続できる環境を整えています。
まあ、座っているのに飽きたら立って仕事する、というだけの話です。
最近は、「スタンディングデスク」を設置するオフィスも増えていると聞きますね。普段座って使っているデスクを、そのままスタンディング仕様にできる高さ調節式のデスクなどというものが、オフィス家具カタログでも見かけられます。
このスタンデングスタイルで仕事に取り組むと、けっこうはかどるのです。じっくりと沈思黙考するような作業には不向きですが、手早く何かを片づけるときには有効です。
例としてどうかと思いますが、お酒を飲むシチュエーションでも、座っての集まりよりも、立ち飲みバーって会話が弾みませんか?
もしかしてそれも脳の血流のせい? それとも単なるアルコール効果?
実は、そのうち教室環境を全てスタンディングにしようと以前から考えています。
生徒からブーイングの嵐になること間違いなしなので、まだその勇気はないのですが。
