
来年4年生になる方に向けた記事になります。
来年あたりから塾に通ってみよう、そう考えている方へのアドバイス、社会科の学習法について書きたいと思います。
1.親が地理が苦手
高学年のお子さんの親から、よく相談されるのです。
「先生、うちの子は社会、とくに地理が苦手で。どうしたらいいのでしょう?」
ああ、この質問、もっと早く、例えば3年生か4年生の最初にしてほしかった。5年生や6年生になってからされても、正直だいぶ手遅れなのです。
「もしかしてお母さまが社会科が不得意ではなかったですか?」
「そうなんです! よくわかりますね! 日本史はまだよかったのですが、公民や地理は本当に苦手でした」
「子は親の鏡」とはよく言ったものですね。1950年代のアメリカの教育学者の言葉だそうですが、日本にも「親の背を見て子は育つ」という諺があります。
子どもにとって、最も身近なロールモデルが親なのですから、親の影響力が絶大なのは当然です。
親が地理が苦手なのに、子どもだけ地理が得意になるというのは虫が良過ぎる話なのかもしれません。
2.地理が苦手の正体
一言で「地理が苦手」といいますが、それはどういう事象なのでしょう?
私は、2つの側面をあげたいと思います。
◆平面と立体の行き来
◆周囲への関心
まずわかりづらい「平面と立体の行き来」について説明します。
簡単にいうと、地図で得た情報を実際の光景に当てはめる能力、またその逆ができる能力のことです。
例えば、初めてでかける場所があったとしましょう。その際は
〇行き方を調べる人
〇行き方を調べない人
の2種類にはっきりわかれるのです。
私は前者です。
(1)住所を検索し、Googleマップに★印を保存
(2)マップ上で最寄り駅を調べ、そこまでの乗換ルートを確認
(3)駅構内図を参照し、最寄りの出口を確認
(4)マップ上で目的地までのルートを確認
(5)Googleストリートビューで、目的地の外観を確認
ここまでが、事前に家を出る前にすます準備です。普通PCを使って調べます。
当日は、現地最寄り駅を出たとき、道に確信が無いときだけ、立ち止まってGoogleマップを確認します。その際、地図は北固定が鉄則です。実際の周囲の目標物と地図を照らし合わせて、目的地までの道を確認します。
さて、私の家人は、行き方を調べない人間です。そのやり方はこんなかんじですね。
(1)目的地名称から、最寄り駅を調べる
(2)最寄り駅についたら、駅員に行き方を尋ねる
(3)Googleマップのナビゲーションを起動し、その指示にしたがって歩く
目的地に到達するというミッションは、どちらのやり方でもクリアできます。むしろGoogleナビにしたがってほうが楽に速く到達できるでしょう。
ただし、このやり方をする限り、一向に地図も道も覚えません。
海外に行っても同じですね。
ロンドンやパリを歩く際でも、あらかじめ地図で確認してから、だいたいの道筋や方向、さらに距離感もつかんでから出かけるようにしているので、今やなんとなくパリやロンドンの「土地勘」ができつつあります。
Googleマップにしても紙の地図にしても、平面に情報が記載されています。それを見ながら実際の道筋とリンクさせられるかどうか、この差は大きいと思います。
地形図問題で、川の流れる方向を聞くと、間違える生徒が多いのもそれが理由なのでしょう。
次に、周囲への関心について考えます。
私はこれを、「ホームズ的観察」と命名しました。ホームズ、もちろんシャーロックホームズのことです。
作品を読んだことがあればわかりますがホームズは散歩が大好きです。よくワトソンを伴ってロンドンの街中を散歩するのです。
そうして散歩しながら、街の様子や行きかう人について推理を働かせ、ワトソンを驚かせています。
たしか「ボヘミアの醜聞」に、「You see, but you do not observe. The distinction is clear. 」というホームズのセリフがあります。見ることと観察することは大違いだ、ということですね。
例えば東海道新幹線に乗っているとき。静岡から浜松あたりにかけて、茶畑が広がる光景が見えます。茶畑の中には、ところどころに支柱に扇風機のような羽がついたものが立っています。これは、霜がつかないよう風を送るためなのですね。
興味が無い人は、おそらくそんなことも気づかないのでしょう。
3.今すぐやるべきは
こうした「地理に対する興味」は、一朝一夕には芽生えません。今から新幹線に乗ってむりやり窓の外を見させても無意味です。
興味を持つ→いつのまにか知識が頭に入る
こうした「自然な」過程を待っていても無駄です。
生徒の一人に、地理が苦手な子がいました。ところが聞いてみると、けっこう各地に家族で旅行しているようなのです。旅行の前には、父親が旅行パンフレットを作るそうなので、それを見せていただいたら、感動しました。旅行のルートや行程はもちろん、行く先々で見るべきポイントや、その時代背景や豆知識等が詳細かつカラフルにまとめられているのです。そのまま市販できそうなクオリティでした。これを事前に見てから旅しているはずなのに・・・・。
興味がなければ好きにもなりませんし、好きでなければ興味もわかない。このハードルを越えるのは難題なのです。
知識を頭に入れる→得意になる
こうした「不自然な」やり方しかないと思います。興味の有無を無視して、ともかく必要な知識を入れてしまうことを優先しましょう。
今やるべきは、基礎知識を定着させることです。
まず、白地図を用意し、都道府県名と県庁所在地名を漢字で正確に記入できるようにトレーニングしてください。
これは地理を学ぶ前提として最低限の知識です。
家の壁には、ポスターサイズの日本地図を貼ってください。トイレの壁など有効です。
いろいろな種類があります。ダイソーでも売っています。しかし、私のおすすめはこちらです。
JTBパブリッシング作成です。都道府県の簡単な説明や世界遺産も載っているので、入門地図としては悪くないですね。そしてこのポスター地図最大の特徴は、ユポ紙製ということです。普通の紙ではないので、お風呂の壁に貼れるのです。濡らすと壁に貼りつくので、これは便利ですね。このサイズのポスターを張れる壁ってなかなか無いですから。
ちなみに、このほかにも「キッズレッスン」シリーズとして、歴史年代や世界地図や百人一首や漢字などがお風呂に貼れるポスターとして売られています。そこまでいくと湯あたりしそうです。こういうのって、何となく眺めているうちに頭に入るのが良いと思うのです。その点、世界地図はよいと思います。
お風呂にこの2枚、貼ることをお勧めします。
Amazonでは、日本地図が990円、世界地図が1210円でした。
さて、日本地図については、もう1枚お勧めしたいポスター地図があります。
こちらは、高学年以上向きですね。残念ながらお風呂には貼れませんが、地形・地名がけっこう詳細に書かれています。そして、左に少しだけ、ロシアと朝鮮半島が見えている、これがいいのです。日本と隣国の位置関係がわかりますので。多くの日本人にとって最も身近に感じる外国はアメリカのようですが、実は日本は東アジアの端に位置していることが実感できます。こちらはAmazonでも2480円と少々値がはりますが、大人でも楽しめます。(地図を見ているだけで楽しいと思うのは私だけ?)
次に、各都道府県の大まかな特徴・特色を見ていきましょう。
ここで活躍するのが、写真が豊富な資料集やガイドブック類です。
また、参考書でも良いものが書店で見つかります。
私のおすすめはこれですね。
似たものは各種見つかるのですが、「遊び」に振り過ぎていたり、「マンガ」主体で、どうも幼稚なのです。
こちらの本は、表紙は幼稚に見えますが、中身はサピックスらしく真面目です。入試に対応した真面目な内容をわかりやすくまとめようという意図が感じられるので、きちんと「地理の勉強」になると思います。
各都道府県の特徴が、カード形式でまとめられています。いちおう「カードゲーム」となっていますが、ゲーム色は薄いのがよいですね。ただ、これだけだと情報はまだまだ不十分なので、まずはこれをベースとして、さらに膨らませるような学習が良いと思います。
もう一つお勧めなのがこちらです。
こちらも、地図ポスターと同じ、旅行の総本山?JTBの編集です。
名所や特産品など観光目線が入っているところが楽しめます。また、SAPIX版で不足している、日本全体を概観する視点が入っているところも役立ちます。
これに対応したワークブックもあるのですが、そちらはいらないでしょう。こういうのは、親子で楽しむのが基本ですから。
四年生になるまえに、これくらいの情報をきちんと身に着けておくと、地理の学習が始まったときに相当自信につながると思います。
※ジグソーパズル地図は無駄
こちらもよくみかけるのですが、都道府県の形がデフォルメされているのでお勧めしたくありません。




