
先日、知人から相談されました。
「うちの子は今幼稚園の年長なんだけど、そろそろ中学受験塾を探そうと思って。どこがいいかな?」
「幼稚園なのにもう中学受験準備!」
と驚くわけにはまいりません。現実として、こうして準備を始めようとするする親もたくさんいるのですから。
今回の記事では、幼稚園から取り組む中学受験についてまとめてみたいと思います。
「中学受験はいつから考えるべきか」「幼児期の習い事」「準備でやるべきこと・やらなくていいこと」について、具体的に解説します。
- 1. 中学受験は「いつから」始めるのが一般的?
- 2.中学受験塾サイドからみた、幼少期から準備しておいてほしいこと
- 3.読書習慣を身につける
- 4.集中して机に向かう時間を少しずつ作る
- 5.「なぜ?」「どうして?」に答えてあげる
- 6. 習い事はどう選ぶ?
- 7. 志望校を考えるのは「早すぎ」じゃない?
- 8. 幼稚園期にやりがちな失敗と注意点
- 9.よくある質問(FAQ)
1. 中学受験は「いつから」始めるのが一般的?
多くのご家庭では、本格的に塾に通い始めるのは小3〜4年が目安です。
塾の受験に向けたカリキュラムは、4年生の最初(4月)からとなっています。
しかし、中学受験が2月の初めに終わるため、塾の学年は、小学校より前倒しされて、2月から「新学年」扱いとなっています。
「新4年生」のカリキュラムスタートは2月、つまり小学3年生の3学期の2月に始まるのですね。
ただし、この時期には、まだご家庭も塾を迷っていたり選んでいたりする方が多いのです。いきなり2月から本格カリキュラムをスタートさせてしまうと、途中から入りにくくなってしまい、集客に悪影響となります。
そこで、2月~春期講習までは、「小3総復習」「小4準備」といった位置づけでのスロースタートとするのが通例です。
したがって、新小4の4月までに塾に入っておく、というのが王道となるのです。
それでは、小1~小3までは、いったい塾で何をやるのでしょうか?
その目的は3つに集約されます。
・学習習慣を身に着ける
・基礎学力を身に着ける
・塾の授業を楽しませる
3つめの目的は若干姑息なのですが、大切な目的です。
小学生、まして低学年で、自分から塾に行きたがる子はいません。それはそうですね、塾は厳しく勉強をさせるところですから。
そんな低学年の子に、「どうだい、塾の勉強って楽しいだろ?」とばかりに、あの手この手をくりだし、塾に行くことに前向きになってもらうことは、塾にとって大切なのです。つまり集客が目的です。
もっともこのことは、家庭の要望とも一致します。
「塾、どうだった?」
「うん、すごく楽しかった!」
こう言ってもらいたいですからね。
さらに大切なのは、小4から受験勉強が本格化するための前段階として、基礎学力や学習習慣を整えることになります。
それでは、「中学受験準備」は、せいぜい小3くらいからで間に合うのではないか、と思われますよね。
その答えは、YES&NOです。
たしかに、「本格的な中学受験の準備として、塾通いに慣れるのなら、小3からの1年もあれば十分」には違いありません。
それでは、小1から、あるいは幼稚園から準備をする必要などあるのでしょうか?
これを、「中学受験のための準備」ととらえるのではないのです。
「幼少期からやらねばならないこと」「やるのが当たり前のこと」ととらえてほしいのです。
2.中学受験塾サイドからみた、幼少期から準備しておいてほしいこと
(1)家庭の意志統一
ここでは家庭と書きましたが、正しくは「夫婦の意志統一」になります。
◆中学受験をするのか?
◆どこの学校を目指すのか
◆そもそも家庭の教育方針はどうなっているのか?
この3点は最も大切なことなのです。
ここがぶれると、いざ本格的な受験勉強が始まり、志望校を決める段階になってから揉めるケースが多いのですね。
とくに家庭の教育方針は大切です。
将来どのような大人になってほしいのか、そのためにはどのような中高大学に進んでほしいのか。じっくりと夫婦で話しあって欲しいと思います。
(2)親と子どもの関わり方を作る
親子関係なんて自然に出来上がっていくものには違いありません。しかし、本当にそれでよいのでしょうか?
子どもの教育にノータッチの父親がいます。それなのに、受験間際になって急に干渉しようとする。以前はこのケースが多かったのです。最近は、両親がそろって前のめりになっているケースが増えました。
子どもの学びに、父親と母親はどう役割分担して関わっていくのか。この基本を子どもの成長を見守りながらじっくりと構築できるのも、幼稚園くらいの余裕のある時期だからこそだと思います。
(3)言語能力の向上
低学年のうちは、大人である教師とまともにコミュニケーションが取れない子も多いのです。はっきりいって、それでは授業になりません。この言語能力は、放っておいても自然には育ちません。意図的に家で構築すべき能力です。
(4)躾
きちんと椅子に座っていられない、身の回りを片付けることもできない、そんな子どもも大勢いますね。塾は託児所ではありません。最低限の社会上のルールを守れるような躾は、幼少期からの習慣です。
3.読書習慣を身につける
子どもたちを見ていると、「本を読む子」と「本を読まない子」の2種類にはっきりと分かれます。なぜかその中間はいないのです。
「本を読まない子」というのは、「本を読む習慣を作れなかった」のですね。そして、この読書習慣は、完全に親の環境づくりに由来するのです。
・外遊びしかさせてこなかった
・ゲームを与えていた
・動画を見せてばかりいた
・習い事で時間を埋め尽くしていた
・そもそも親が本を読む習慣がない=本の大切さをわかっていない
まずはここからチェックしましょう。
「うちの子は本を読むのが嫌いなので。すぐ飽きて放り出してしまうのです」
そうおっしゃる方はとても多いですね。これは明らかに、幼少期に本の楽しさを子どもに伝えることができなかったのが原因です。
世の中には「良書」が溢れています。しかも、そうした「良書」と出会うチャンスも増えました。今こそ、幼稚園の学びの基本を「読書」に据えてほしいのです。
本であふれている書棚。そこには、親が現在読んでいる本から幼い頃に読んでいた本まで、上の子が読んでいた本までいっぱい詰まっています。
そうした本棚がある環境を作って欲しいと思います。
4.集中して机に向かう時間を少しずつ作る
勉強は、机に向かってするものです。幼稚園生なら、リビングのテーブルでよいのです。それでも、「勉強をする時間」「勉強に向かう場所」をきちんと意識づけていきましょう。
こたつで、ソファで、寝そべってやるのは「勉強ではない」とはっきりとさせるのが大切です。
余談ですが、私が最近嫌いなテレビCMにこんなものがあります。小学生くらいの男の子がベッドに寝そべってタブレットPCで遊んでいます。そこにこんなコメントが入るのです。「彼は今遊んでいるのではない。プログラミングを学んでいる」
どうやら、アプリでアニメキャラを動かすことを「プログラミングを学ぶ」と称しているようですね。そのやり方の是非はともかくとして、姿勢がダメダメです。
「正しい学びは正しい姿勢から」というのは真実であることを、私は経験上知っています。
5.「なぜ?」「どうして?」に答えてあげる
幼稚園の子どもにとって、親が最良の教師です。
子どもの疑問に正面から向き合い、真剣に答えてあてげください。
さすがに幼稚園生の疑問には即答できないことはないでしょう。それでも、「これをどう説明したらこの子にはわかってもらえるだろうか」と考えて、きちんとわかるまで説明してほしいのです。
これを続けることで、子どもに考える習慣がつくのも大切なのですが、実はもっと大きな効果があります。
「親は何でも知っている、何でも答えてくれる頼もしい先生」であると、子どもが認識してくれることなのです。
こうした親子関係が一度構築されると、中学受験までスムーズに進むのです。
「親は頼れない」
「親は信用できない」
「親には教えてもらえない」
「親は矛盾することばかり言う」
そう思うから、つまらぬことで反発し、「反抗期」と呼ばれるようになるのだと思います。
6. 習い事はどう選ぶ?
習い事なんて、子どもが興味を持つことをやらせればいい。
正論です。
しかし、あえて言うと、「中学受験に向けて」有利な習い事、不利な習い事もあるのです。
「そんな、習い事くらい子どもの好きにさせてあげたいよ。中学受験に有利か不利かで考えるなんて、あまりにも歪んでいる」
そう考える方は、そもそもこの記事を読まないほうがよかったですね。
この記事は、「中学受験のために」どう過ごすべきかを考えていますので。
◆中学受験に不利な習い事
・団体競技
・家でできないもの
例えば、サッカー・野球・バレエ、新体操、ダンスのような習い事です。
これらは、家ではできません。一人ではできません。常に、どこかに行って学ぶ・練習をする必要がある習い事です。
中学受験のために、かならず習い事を辞めねばならない時がきます。物理的に時間がなくなるからです。その時に、「だってもうすぐ大会だから」「今抜けたらみんなに迷惑がかかる」「発表会に出たいから辞めたくない」となったとき、どうするのでしょう?
スポーツでもバレエでも、最後までやり続けて、そして中学受験もうまくいくケースもありますが、そうでないケースもあるのです。
また、芸術系やスポーツ系の習い事の一部には、先生が高圧的で独裁政治?となっているところもありますね。
その習い事で、本格的に社会に出るつもりでないのなら、時間のコントロールが可能な習い事をやらせるべきでしょう。
例えばピアノなら、5年生まで真剣にやると、ある程度のレベルまでは到達します。そこで一旦辞めても、家で自分で好きな曲を練習して弾くことは可能になります。勉強の息抜きにピアノを弾くことができるのです。中学生になって再び本格的なレッスンを再開してもよいですし、あるいは自分で好きな曲を弾く趣味としてもよいですね。
7. 志望校を考えるのは「早すぎ」じゃない?
幼稚園のうちに志望校を決める必要はありません。ですが、学校説明会や文化祭に足を運んでみることはおすすめです。
実際に校舎や雰囲気に触れると、
どんな校風があるのか
子どもに合いそうか
家からの通学手段はどうか
といった具体的なイメージがわきます。
また、夫婦間で「どんな中学に通わせたいか」を話し合うことも、後々の進路選びに役立ちます。
もちろんこれは、子どもを連れていってはいけません。あくまでも親が見に行って、「学校選択眼」を身に着け、わが子にあった学校選びができるようになるのが目的です。
8. 幼稚園期にやりがちな失敗と注意点
中学受験を意識するあまり、幼稚園児に無理な勉強を強いるのは逆効果です。
よくある失敗例
・市販ドリルを毎日大量にやらせて子どもが嫌になる
・習い事を詰め込みすぎて遊ぶ時間がなくなる
・親の焦りが子どもに伝わり、勉強=嫌なものになる
・「お受験系」幼児教室に通わせてしまう
・先取り学習に走り過ぎる
幼児向けの学習教室には、癖の強いものも多いので要注意です。
あくまでも一般論ですが、「〇〇式」「〇〇メソッド」などと謳うものは慎重に見極める必要があると思います。また、「非認知能力」を育てることを売りにしているものも最近増えましたが、これも慎重に選んでください。役立たないものに時間とお金を費やす必要はありません。
この時期は「学ぶ習慣」を作りたいのです。そのためには、「つらい」「つまらない」学習を、いかに習慣化するのかがポイントです。
適度に負荷をかけることが大切ですね。
9.よくある質問(FAQ)
Q1: 中学受験は幼稚園から始めないと遅い?
→ 遅くありません。塾通いは小3〜4年からが一般的。ただし、生活習慣や読書は幼児期から始めると効果的です。たとえば両親とも中学受験経験者で私立中高一貫校出身の場合、子どもが生まれる前から、子どもに中学受験させることが前提となっています。そして、家庭でどう環境を作るのが大切なのかもわかっているのでうまくいくケースが多いのです。
Q2: 幼稚園児に通信教育は必要?
→ 必須ではありません。楽しく学べる教材ならプラスになりますが、強制は避けましょう。ただし、通信教育は、適度なレベルの教材が届くという利点もあります。
「幼稚」「アニメキャラ」「タブレット」といったものを避ければ有効です。中身よりも見せ方に注力しているものは信用できませんね。
Q3: 習い事はどれが一番中学受験に役立ちますか?
→ 「直接役立つ」より「将来の趣味の幅を広げる」ことに役立ちます。個人的なお薦めは、ピアノですね。もちろんヴァイオリンやフルートやクラシックギターでもかまいません。音楽の基礎教養は、幼少期に身に着けることがとても有効だからです。
楽しさ優先で「ヒップホップダンス」を学んでも、将来には役立ちません。
Q4: 幼稚園でできる中学受験対策は何ですか?
→ 読書習慣・生活リズム・好奇心を育てること。無理に先取り学習をさせる必要はありません。とくに読書習慣は大切です。この時期の読書習慣が、一生を左右するといっても過言ではないのです。
Q5: 幼稚園のうちに各地に旅行することは大切ですか?
→ 旅行から得られる刺激は有効ですが、中学受験には役立ちません。何一つ覚えてはいませんので。京都・奈良・平泉といった「中学受験社会」に関わるところに行くよりも、家族で体験を楽しめばよいでしょう。
Q6: 美術館や博物館に連れていくことは大切ですか?
→ 博物館や科学館のような施設は、子どもが興味をもって楽しむなら良いと思います。プラネタリムも素敵ですよね。ただし「子どもが興味を持って」いるのなら、です。私もプラネタリウムは子どものころから大好きなので、今でも行くことはありますが、飽きて騒いでいる子どもを必ず見かけますので。
また、こうした施設は、あくまでも楽しむ場所であって、学ぶ場所にはなってくれないのです。この年代だと、そこから何も学べないからです。
Q7: 小学校受験はしたほうがよいのですか?
→ 小学校受験は中学校受験とは価値観も方法論もまるで違います。もし、質問の趣旨が、「小学校受験経験者のほうが中学受験で有利ですか?」というものなら、答えは、NOです。まったく関係ありません。