
「うちは下の子がまだ小さくて・・・」
面談をしていると、言い訳のようにしてよく聞くセリフです。
「下の子がまだ小さくて手がかかるので、上の子に構っている暇がない」という意なのでしょう。
それでは、兄弟がいると中学入試に不利なのでしょうか?
今回はそんな疑問に向き合ってみたいと思います。
1.兄・姉がいる場合
この仕事を長年していると、兄弟・姉妹を指導することはたくさんあります。(中には親子を指導した場合すら)
兄・姉が中学受験をした家庭の弟・妹の場合、どんな影響が生じるのでしょうか?
プラスポイントを青字、マイナスポイントを赤字で表記します。
〇上の子の受験のときに、学校見学はたくさんしたので、学校情報を親が持っている
これは大きいですね。学校選びの精度は、学校訪問数に比例するのは事実です。もちろん最初から、「この学校!」と決めている場合もあります。親がその学校の出身である場合等ですね。しかし、これは要注意な選び方です。学校をめぐる環境は大きく変化しているからです。これが通用するのは、100年以上にわたり変わることのない教育を実践し評価されている伝統校の場合だけです。そこで、偏差値にこだわらず幅広く学校を見にいかなくてはならないのですが、実はこれがなかなか困難なのです。まず、夫婦で手分けがしづらい。受験は夫婦の意見が一致することが必須ですので、同じ学校を二人で見ていないと議論にもなりません。そうなると、1年間で行くことのできる学校数が限られるのです。
しかし、兄(姉)のときにかなりの学校を見に行っていれば、弟(妹)の学校選びは各段に楽になるはずです。これは大きなメリットといえるでしょう。
〇上の子が進学している学校を下の子が目指すときはさらに情報が多い
こうしたケースも多くみられます。何より弟(妹)が最も身近に知っている学校ですから、本人が「お兄ちゃん(お姉ちゃん)と同じ学校に行きたい」と思う場合が多いのです。お兄ちゃん(お姉ちゃん)が楽しそうに学校に行っている姿を身近に見ていますし、文化祭にも何度も行ったことがありますので。
もちろん親としても安心ですね。学校の様子について内部から知っていますから。
×下の子に合う学校を探さない
兄弟といえどもDNAは同じではありません。兄弟間のDNA一致率は50%です。両親から50%ずつランダムに受け継ぐからですね。さらに、顔立ちや体形のような外面的なものならいざしらず、性格や学力のような複雑な要素の一致率はさらに低いと考えるべきでしょう。つまり、兄弟・姉妹といえども別人格と考えるべきなのです。
それなのに、「お姉ちゃんが通っている学校だから妹もそこに」といった安易な学校選びをするのは果たしてベストな学校選びといえるのでしょうか。
×上の子の成功体験に引きずられる
これが最大のマイナスポイントです。
上の子の中学受験で成功しました。親がすっかりその成功体験に毒されて?しまうのですね。
まず、中学受験に向き合う姿勢が変わります。
「この時期ならこれくらいやれば十分」
「お兄ちゃんの時もそれはやらなかったけど受かったから」
「塾の先生が勧める教材だけど、上の子のときも一度も開かなかったよね」
「習い事を辞めろというけれど、上の子は続けていても受かったし」
たった一人の成功体験が、まるで受験のベテランになったかのような錯覚を与えてしまうのです。
でも、冷静に考えてみてください。もし、「受験指導経験は1名です!」という家庭教師がいたら、お子さんを預ける気がするでしょうか?
上の子の成功体験が、かえって下の子に向き合う姿勢に悪影響を及ぼすのです。
×兄弟を比較する
「お兄ちゃんは優秀だったのに、弟のあなたは・・・・」
「こんな問題、お兄ちゃんは一度も間違えなかったのに・・・」
「こんな成績、お姉ちゃんの時はありえなかった!」
兄弟・姉妹を比較するのは禁忌です。
それなのについ比較してしまう。気持ちはわかりますが、絶対にやってはいけないのです。
こうして比較され続けることで、下の子の成績が伸びるとはとても思えませんね。
×兄・姉が受験で忙しい間、弟・妹は放置される
例えば2歳離れている兄弟・姉妹の場合。上の子が受験学年のとき、下の子は4年生ですね。受験勉強が本格化する大事な時期なのに、放置されています。上の子の受験がやっと終わりました。下の子が5年生になります。親は疲れはてていて、まだまだ下の子に向き合う気力がわきません。それより、夏のご褒美家族旅行、どこに行きましょうか。
さて、やっと下の子の勉強に向き合おうとしたのが5年生の秋です。ずっと放置されていた子の成績がどんな状況か、予想がつくというものですね。
このケース、とても多いのです。みなさん、「上の子にかまっていて、この子の勉強は見てあげていなくて」と悪びれずに語ります。
「下の子」が可哀そうすぎます。
2.弟・妹がいる場合
〇親の注意が分散される
え?これがプラスポイント?
そう思われますよね。でも、両親があまりに一人の子どもに注力しすぎることは、時にマイナスとなる場合もあるのです。早い話、子どもの息が詰まるのですね。
弟・妹の存在が適度な緩衝材となって、子どものメンタルを救います。
×親の注意が分散される
もちろんこれはマイナスポイントでもあります。単純に親が忙しくて、上の子に構う時間が不足するのです。たとえば食事の支度だって塾の送り迎えだって、時間との戦いになりますので。
×親があきらめる
これが一番大きなマイナスポイントだと思います。「下の子がいるからしかたがない」というちょうどよい言い訳ができてしまうのですね。
×うるさい
すいません、単純な事実です。弟・妹が家の中にいるだけで、うるさいですし、勉強の集中力を阻害します。例えばテレビだって、自分は我慢しているのに弟・妹が見ている、そんな場合もあるでしょう。
3.一人っ子の場合
〇親の時間を独り占めできる
これが最大のメリットですね。中学受験は時間との戦いです。小学校生活を送りながら、隙間の時間で中学受験のための勉強に取り組まなくてはならないのですから。しかもその勉強量が凄まじい量なのです。
夏休みの宿題は全て母親が片づけた、そんな話も聞こえてくるほどです。
そんなのおかしい!と思う方は、はっきりいって中学受験の現実をご存じないのでしょう。それほど過酷な世界なのです。
×親の過干渉
基本的に小学生は親の監督下で勉強をしていきます。子ども本人の自主性にまかせることはありません。「放っておいても子どもが一人で勉強して最難関中学に合格した」などという話もありますが、はっきりいって都市伝説レベルです。
しかし、親が子どもに関わり過ぎることが、時に過干渉の弊害をもたらすのです。
子どもにとっての「社会」は3つしかありません。小学校・塾、そして家庭の3か所です。そのうち最も大切な「家庭」が、息詰まるような場所だとしたら。 子どもが可哀そうですね。
結論
どちらかが有利ということはないが、一人っ子のほうが少しだけ有利
つまらない結論で恐縮です。
やはり、時間の問題が大きいのです。売れっ子のタレントをかかえるマネージャーをイメージしてください。タレントのスケジュール管理や準備等の仕事をマネージャーが行います。タレントに最大のパフォーマンスを発揮させるのが仕事なのです。一人のタレントを抱えるのと、二人以上のタレントを抱えるのと、どちらがよりよいマネージメントができるのかは明らかですね。
受験勉強もそうです。子どもに最大のパフォーマンスを発揮させるべく、家庭生活や勉強についてマネージメントするのが親の最大の役割となります。複数より一人に集中できるほうが有利だろうことは容易に想像できると思います。
もし兄弟・姉妹がいる場合、とくに二人目のお子さんの受験に向き合う場合のアドバイスがあります。
その子が一人目のつもりで接する
思い出してください。一人目の中学受験の時のことを。未知の世界で右往左往しながら必死で走りましたよね。その気持ちで二人目・三人目のお子さんにも接してほしいのです。それができれば、上の子がいることのメリットが最大限に生かせるようになるでしょう。
中学受験についての入門書を書いています。
ぜひご一読ください。
