中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】「すべり止め」の落とし穴?併願パターン成功例・失敗例から学ぶ親の戦略

今回の記事は、中学受験の併願戦略についてまとめてみます。

もし、保護者の皆さまが高校受験経験者(中受未経験者)であるなら、この記事はとても参考になるはずです。

もし、保護者の皆さまが中学受験経験者であるなら、やはりこの記事は参考になるはずです。なぜなら皆さまが受験した頃とは、中学受験の状況は大きく変わっているからです。

※この記事は、東京・神奈川エリアからの受験生対象です。また、帰国生入試は考慮していません。

※この記事で紹介する実例は、実話に基づきますが、個人情報保護の観点から翻案して紹介しています。

 

なぜ併願パターンが重要なのか

◆5日間+アルファ

 中学受験は一発勝負、一日だけの勝負ではありません。5日間+αの日程で戦われる「連戦」なのです。

 この「連戦」をどう戦い抜いて勝利を掴むのか、緻密な戦略が必要となるのです。

2月1日からの5日間が入試の本番です。これに、1月校の受験を組み合わせる場合もありますね。東京・神奈川の入試解禁日は2月1日で、多くの難関校・人気校がこの日に受験を実施します。千葉・埼玉等の東京・神奈川以外の学校では1月から入試が始まりますが、学校数が圧倒的に少なく、また実際に通学エリア外からの受験生が多いという特徴があります。

「連戦」ですから、1勝を確実にあげることが絶対条件です。1勝もあげられなければ「公立中学」進学が確定するからです。

「勝たなければ意味がない戦い」であることを前提に併願パターンを組みましょう。

 

◆志望順位や試験日程の組み合わせ次第で結果が大きく変わる

 例えば、豊島岡第一志望の女子を考えてみます。女子校希望です。

豊島岡の受験日は、2/2・2/3・2/4の3日間です。第一志望ですから、この3日間の受験は当然するつもりです。

豊島岡は人気の難関校です。サピックス偏差値では62~63となっています。コンスタントに65くらいの偏差値を出している生徒ならともかく、なかなか安心して合格できるとは言い難い学校の一つです。この生徒の場合なら、2/1の受験校選びが最重要となってきます。この生徒の学力でも確実に合格が見込める学校を受験する必要があるからです。学習院女子・フェリス・鴎友・頌栄女子等、魅力的な学校がたくさんありますね。

もしここで、「2/1は桜蔭(or女子学院or渋谷渋谷)」としてしまったらどうでしょう?

豊島岡3回の合格発表は当日の2/4 19:00です。その段階から受験できる学校はこれしかありません。

渋谷渋谷(63)

広尾学園(57)

頌栄女子(52)

大妻(48)

女子校希望のこの生徒の場合なら、選択肢は頌栄と大妻にしぼられるでしょう。学力的にいえば頌栄は順当といいたいところなのですが、洗足が2/5の試験を取りやめてしまいましたからね。おそらく「どこにも合格できなかった」受験生が集中すると思われます。もともとこの日の頌栄の受験は厳しいのです。

今でも覚えている光景があります。私の指導していた生徒が、どこにも合格できずに、この5日の頌栄を最後の砦として受験したのです。早朝の校門前で私はその生徒を待っていました。受験前にせめて一声声援を送りたくて。すると、時間ぎりぎりになって坂の下から、子どもの手を引いて必死の形相のお母さまがやってきました。子どもは手を引きずられています。「〇〇さん!」私の声かけはお母さまの耳には届かず、子どももそのまま引きずられて試験会場に消えていきました。

もう、私の呼びかけなど聞こえないほど、冷静さを失っているのです。

4日連続の不合格はこたえます。平常心を保てというほうが無理なのです。

 

この生徒なら、2月1日は鴎友かフェリス、合格をとってから安心して豊島岡三連戦というのが王道でした。もし鴎友やフェリスが不合格なら、正直言って豊島岡の合格はほぼ無理という判断になります。その場合は、2日・3日・4日のいずれかの日程で豊島岡の受験をとりやめ、合格が見込める学校を受けるというのが妥当です。

 

◆「受験スケジュールの無理」が原因で失敗するケースも多い

偏差値表を穴の開くほど見つめて受験スケジュールを立てますね。しかしそこで、3つの大切な要因を考慮しない方が多いのです。

1:子どもの体力・精神力がもたない

2:親の体力・精神力がもたない

3:アクシデントが起こる

 

例えば、こんな受験スケジュールはどうでしょうか

1/12 栄東東大特待

1/18・19 灘

1/20 市川

1/21 東邦大東邦

1/22 渋谷幕張

2/1AM 開成

2/1PM 広尾学園

2/2AM 聖光

2/2PM 広尾学園医進サイエンス

2/3AM 筑駒

2/3PM 広尾学園小石川

2/4AM 聖光

2/5AM 渋谷渋谷

2/6PM 広尾学園小石川

 

とりあえず受験可能な難関校を並べてみました。

まず1月が忙し過ぎます。本気で灘に進学したいのならともかく、2月本番直前の灘受験は、体力的にもきついですし、何よりインフルエンザ等の感染リスクが増大します。

また、合格しても進学する気もない学校を受けすぎです。

2/1以降については、本気で開成・聖光・筑駒の合格を狙えるレベルの受験生なら、広尾学園の受験は不要でした。たしかに1日の開成の試験は14時に終わります。そして広尾学園の午後入試は15時半からです。しかも遅刻者は16時からの試験に切り替えてもらえます。そして翌日は聖光ですか。どう考えても体力的に無謀でしょうね。

 

この時期は、親の体力と精神力も要求されます。もしかして子ども以上に消耗するのです。早朝子どもを試験会場の学校に送り、試験終了まで近くで待機。さらに合格発表と手続きの締め切りも把握しながら次の受験戦略を確認します。これが連日続くのです。子どもにはいらついた顔一つ見せずに。

 

また、アクシデントは当然考慮すべきです。最近は雪が降らなくなりましたが、かつては大雪による電車遅延で試験時間が大幅に変更されたケースもありました。また、本人が入試直前に高熱を出して保健室受験という話もそう珍しくはないのです。

 

よくある併願パターンの組み方

◆第1志望を中心にすべり止め・実力相応校を組み合わせる

※「すべり止め」という表現は嫌な表現ですね。そもそも学校に対して失礼極まりない。普通ならせめて「押さえの学校」という言い方を私もしています。ただ、この記事についてだけは、「すべり止め」という表現を使うことにします。その方が現実に即していますので。

 

基本の考え方です。受験校を3つのブロックに分けるのです。

【第1志望】・・・場合によっては2校が並列して第一志望ということもあるでしょう。それでも、必ず志望順位をつけてください。「どうせ筑駒なんて無理だから。だから第一志望は開成」と思っていたら、両方合格してしまった。どっちにしよう! そんな相談(羨ましい相談ですが)が毎年あるのです。最初から志望順位を確定しておくことはとても大切です。

【第2志望】 ・・・これは複数ある場合が普通でしょう。これらの学校ならどこに進学しても嬉しい。そう思える学校のことです。これが「実力相応校」ということになります。それにしてもやはり志望順位を確定しておかなくてはなりません。そうしないと無駄な入学金を支払うことになりかねませんので。

【すべり止め】 ・・・残念ながら、受験は思い通りにはいきません。「奇跡の合格」が稀なのに対し、「まさかの不合格」は多いのです。そのために考えなくてはならないのが「すべり止め」の学校です。この学校については、何があっても確実に合格が見込める学校でなければ意味はありません。もちろんその際には進学するのに納得できる学校を選びましょう。「どうせここまで受けるはめにはならないだろうから」などと楽観的に考えて、見にも行っていない学校をあわてて受ける生徒が毎年必ずいるのです。

 

◆午後受験は1つにする

午前に本命の中学校を真剣に受験すれば、体力・気力も枯渇します。その後で受験する午後入試がいかに負担になることか。「午後入試」なる悪習がいつ頃発生したのかは定かではないですが、いつのまにか増えましたね。もちろん受験生にとっては受験機会が増えることは望ましいですし、併願パターンのバリエーションも増えます。学校にとっても、優秀な生徒の落穂ひろいができるというメリットがあるのです。受験する側・学校側双方にとってのメリットがあるからこそ、午後受験が広がったのですね。

しかしここには、「受験する本人」に対する気遣いはありません。

1日午前に第1志望校を受験し、2日午前に第2志望校を受験した生徒の話を聞きました。2日午後には第4志望の学校の受験を予定していたそうですが、1日に受けた第1志望の難関校の合格発表が2日の昼前にあったのです。ネット発表でそれを確認した両親が、子どもの第2志望校の試験が終わるのを待ちかねるように迎えにいったのですね。「この後は午後受験か」と暗い顔をして試験会場から出てきた子どもに、親は第1志望校の合格を告げたのでした。それを聞いた子どもの第一声はこれでした。

「それじゃあ、この後〇〇中学の試験を受けにいかなくていいの?」

「もちろん!」

「やったあ!」

そうです。後で子ども本人に聞いたところ、第1志望の中学に合格した喜びよりも、午後受験をしなくて済んだ喜びのほうが大きかったそうです。

入試は大人が思う以上に子どもに負荷をかけているのです。1日に2回もその負荷をかけることの是非を十分考慮してください。

「午後入試は1回だけ」

これが私の推奨する受け方です。

 

受験の流れの3パターン

1.挑戦校→挑戦校→挑戦校

 たとえば前述した、桜蔭→豊島岡→豊島岡→豊島岡といったパターンです。男子なら、渋谷幕張→開成→聖光→筑駒→聖光 というパターンですね。

「実力は届いていないけれど、3回も受ければ、1回くらいは引っ掛かるのでは?」という安易な発想です。

そうです、安易な発想です。

実力不足の学校は、何度受験しても合格確率は上がりません。そんな受験の仕方で、貴重な受験日を浪費することはやめましょう。

 

※例外

 この作戦にも例外はあります。

2/1 開成or駒東

2/2 聖光or栄光

2/3 筑駒(第一志望)

こうしたケースです。

2/1の開成の合格発表は2/3で、駒東の発表は2/2です。栄光と聖光は翌日発表ですね。

もし1日に開成を受験すると、最難関の筑駒を受けに行くときに、まだ一つも合格が出ていない状態でのチャレンジとなります。しかし、駒東を1日受ければ、2日駒東の発表を見てから3日の筑駒チャレンジとなるのです。

どう考えても後者のほうが賢いと思えますね。前者は心臓に悪過ぎます。

このように考えて、学力が達しているのに開成を駒東に「下げる」受験生が毎年必ずいるのです。

しかし残念なことに、そうした生徒は筑駒は受かりません。

厳密なデータをとったわけではありませんが、筑駒の合格可能性が同じ生徒の集団がいたとして、一方は駒東を、一方は開成を受験した場合、どちらの集団のほうが筑駒の合格率が高いかわかりますか? それは開成受験グループなのです。全く同じ学力だったとしても、そうしたことになるのです。考えられる原因としては、前日に駒東の合格をみて「安心」してしまった精神状態での筑駒受験がいけないのでしょうね。高得点のせめぎ合いになる筑駒の受験は、「背水の陣」で臨む必要があるのです。

 

2.すべり止め校→実力相応校→本命挑戦校

まずは確実に合格をとった上で、本命の第一志望校に挑戦するという作戦です。一番のおすすめパターンです。なんといっても、1校でも合格をとることが、どれだけ親子の精神に安定をもたらすことか。とくに本命挑戦校の合格可能性が低い場合には、この受験パターンが絶対です。

 

3.本命挑戦校→実力相応校→すべり止め校

最も多いのがこのパターンでしょう。なぜなら、本命挑戦校となる難関校の入試が2月1日に集中しているからです。ただし、最後の最後にすべり止め校を持ってくるのはリスキーです。それが可能なのは、本命挑戦校の合格可能性が高く、実力相応校の合格が見込める、そして万が一の場合には公立中進学から高校受験リベンジも考えている、そうした男子生徒だけでしょう。なかには、実力相応校が入っていないケースもあります。例えばこのような受験パターンです。

開成→聖光→筑駒→聖光→本郷

本郷だけが「すべり止め」校となっていますが、正直言って今の本郷の人気と実力を考えると、とても「すべり止め」校とはいえません。サピックス偏差値で5日は60もあるのです。開成が本命挑戦校のこの場合なら、2日の本郷が募集定員が最も多いのでここを受験しましょう。合格発表は試験当日の19時です。その合格を見てから、安心して3日の筑駒でも4日の聖光でもチャレンジすればよいのです。

 

併願パターン成功例


ケース1:安全校を最初に受験して精神的に安定

初日の午前に偏差値的に余裕のある学校を受け、合格を確保

その後、本命校に集中できた

結果:第一志望合格

とくに女子にお勧めのパターンです。男子よりも女子のほうが、受験後半戦で心が折れる子が多いのです。実を言うと折れるのは子どもというより親のほうなのですが。

男子と違って女子は、高校受験の枠はほとんどありません。中高一貫校で高校募集をしている女子校は皆無なのです。慶應女子・お茶大附・日本女子大附・富士見ヶ丘、これだけです。実質上、最上位層女子は慶應女子に集中します。あとは共学や大学附属になりますが、募集定員は中受と比べて多くはありません。本筋は都県立高校になるでしょう。その場合、内申も大きく影響しますので、中受とは全く異なる方法論となることを覚悟しなくてはならないのです。つまり、中学受験で女子は失敗が許されない。だからこそ、早い段階で合格を取りに行く戦略が有効なのです。

 

A子のケースを紹介します。

A子は、大学附属中を希望していました。もう大学入試はしたくない。それが本人及び親の希望です。最初に提出された受験パターンはこうでした。

1月 東邦大東邦

2/1 早稲田実業

2/2 慶應湘南藤沢

2/3 慶應中等部

2/4 慶應湘南藤沢 2次試験

2/5 慶應中等部 2次試験

 

これは、下手すれば全滅パターンです。とくに慶應の2次試験は侮れないのです。1次合格者のうち、およそ半数が落とされます。

例えば、桜蔭の今年の合格率は1.8倍でした。桜蔭受験生のうちの約半数が落とされています。桜蔭を受験するくらいですから、学力がそう低かったとは思いません。それよりも厳しいのが慶應の2次試験だと考えてみてください。慶應の1次試験に合格しただけで「これで2次も通るはず!」と浮かれるということは、桜蔭の願書を出願しただけで「これで桜蔭に受かるはず!」と考えるのと同じということです。

 

※詳しくはこの記事を見てください。

peter-lws.net

まず、1月の東邦大東邦をなぜ選んだのか聞いてみました。

「1月にお試し受験すべきだと塾で言われたから。一応大学附属だし」

そもそも神奈川に住んでいるA子の場合、津田沼からバスを使わなくてはならない東邦大東邦への通学は不可能レベルです。

早稲田と慶應、どちらへのこだわりが強いのか聞いてみると、本当は慶應に行かせたいことがわかりました。そこで新たに組み直した受験パターンがこれです。

1月校 受験しない

2/1 中大横浜

2/2 AM 慶應湘南藤沢or法政二中

  PM 中大横浜or香蘭

2/3 AM 慶應中等部or青山学院

2/4 慶應湘南藤沢2次or法政二中

2/5 慶應中等部2次

 

まずは1日の中大横浜で確実に合格を取りにいきます。中大横浜、人気校ですし、決して「すべり止め」校ではありませんが、A子の実力なら合格がかなりの高確率で見込めました。もし不合格だったら、翌日は午後入試で中大横浜に再チャレンジか、あるいは香蘭を受験する予定です。この両校、法政大学と立教大学のどちらが好きか、さらに共学と女子校とどちらが好きかで選ぶしかありません。

本当なら、慶應中等部と慶應湘南藤沢のどちらかを取りやめた方が安心なのです。しかし、どうしても慶應に進学したいという意志が強固でしたので、このような受験パターンとなりました。

結果は、中大横浜の合格で安心したのが功を奏し、慶應大学への道を確保できたのです。とくに慶應のように2次面接がある場合、悲壮な顔よりも、余裕をもって面接に臨ませてあげたいですね。

 

ケース2:午後受験を活用して合格切符を増やす

午前に本命、午後に抑えの学校を設定

合格を得て「合格の安心感」が心の支えに

最終的に第2志望進学だが満足度が高い

 

B太は、麻布が本命でした。1日の午後には広尾学園を受験します。なにせ同じ駅、歩いて移動できますので。

2日は栄光を受験。この日の午後に、広尾学園の合格を目にします。3日は海城を受験しました。

結果は、麻布×、広尾〇、栄光〇、海城〇 悩んだ末、通学時間が短い海城に進学します。

繊細なところのあるB太にとって、広尾学園の合格を知ったあとに受験した海城は楽だったのだとか。その割には栄光もきちんと合格していますので、本人の実力通りだと思います。おそらく、栄光の受験の際にも、前日に合格可能性が高い広尾学園を受けておいたことが安心材料になったのでしょう。

ケース3:本命日程を2回以上受けられるよう工夫

同じ学校を2回受ける併願パターンを選択

1回目は不合格でも2回目で合格

精神的にも戦略的にも有利

 

C男は聖光が本命でした。なにせ兄が通っているのです。

1月 市川(お試し、進学する予定無)

1日 駒東(第二志望)

2日 聖光

3日 浅野

4日 聖光(ただし駒東不合格の場合はサレジオ)

実はこの生徒の実力が100%発揮されれば、聖光の合格は十分見込めました。おそらく駒東は外さないだろう、そうした生徒だったのです。ただ懸念材料が一つありました。ものすごく本番に弱い。とにかく緊張するのです。そこで1月は市川を予行演習として受験することにしました。ここで合格をとって、気持ちよく聖光にチャレンジするという作戦です。

結果は予想を裏切りました。市川で不合格、その動揺を引きずったのか駒東も不合格だったのです。それでも何とか3日に浅野を受験しましたが、3日には聖光1回の不合格が出たのです。さすがに浅野は大丈夫だと思いたいですが、何ともいえません。

実は事前にこの状況は想定済でした。その場合は、4日の聖光をあきらめて、サレジオの受験に切り替える予定だったのです。したがって、4日の願書については、準備だけは済ませていましたが、出願はまだでした。

電話がかかってきたのは3日の夕方です。C男本人が、どうしても明日は聖光を受験するといって聞かないのだとか。親の依頼は、何とかしてC男本人に話をして、翌日の聖光をあきらめさせてほしいというものでした。

やってきたC男とじっくりと話をしました。すると、C男の目が違うのです。明日は希望どうり聖光を受験したい。結果はどうあれ、後悔はしない。その意思は揺らぎないものでした。よく子どもたちに見られるような、曖昧で根拠のない主張とは異なったのです。すぐに親に連絡をして、明日の聖光を受験させてほしいと私からもお願いしたのです。親はあわてて願書を準備して、聖光に駆け付けました(そのころはネット出願ではなかったもので)。そして出願した帰り路、携帯電話に、聖光1回の繰り上げ合格の電話がかかってきたのです。

これは珍しいケースです。普通繰り上げ合格は、2回試験終了後にはじまりますので。出願した熱意が評価されのか、兄が在籍したのが功を奏したのか、まったくわかりません。そうとうレアなことだけは間違いありません。

「地獄と天国を見ました」

これが後に聞いたお母さまの偽らざる感想でした。

同じ学校を2回受験する場合、学校によっては「熱意組」として、点数に下駄をはかせる場合もあります。また、同じ点数なら「確実に入学してくれる」とみなされて有利になる場合もあります。そんなことがなくても、同じ学校を受験するのは子どもとしても気分的に楽なのです。

併願パターン失敗例


ケース1:すべり止めが遠方で通学できず

偏差値的には合格できるが、通学時間が長すぎて現実的ではない

合格しても進学できず、選択肢が狭まる

 

これは例をあげません。

おもに1月校で発生する課題です。みなさん、通学時間を軽視しがちですね。昔なら女子は1時間、男子は1時間半くらいは頑張れる、などと指導していました。

今は違います。

男女とも、自宅から学校までドアtoドアで1時間が限界です。

通学は毎日のことなのです。しかも電車は通勤ラッシュです。さらに、難関校ほど子どもたちの鞄はパンパンです。

半蔵門に住んでいる知人がこんなことを言っていました。

「近所の女子学院の生徒は私服だけどすぐにわかる。服装はバラバラで、髪の色もバラバラだけど、みんな重そうなリュクを背負っている」

 

ケース2:本命ばかり受けて全滅

強気で併願パターンを組んだ結果、安全校を用意しなかった

精神的に追い込まれ、最後まで力を出し切れず

 

これも可哀そうなので例をあげるのはやめましょう。

実際にはこのパターン、とても多いのです。

「これ以下の学校なら公立中学のほうがまし」

「こんな中学なら進学する意味はない」

こんなことをおっしゃる方がいます。お子さんの実力が伴っていない方にかぎって、このようなことを言うのです。

また、両親のどちらか(両方)が中学受験経験者の場合も多いですね。30年前とは状況は異なるのです。

また、慶應を連続して受験して全滅する方もいます。小学校受験で慶應幼稚舎で失敗した方です。慶應に対する思い入れが強すぎるのですね。慶應の場合、学力通りの合格というわけにはいきません。慎重にお子さんの学力と性格を見ながら受験パターンを組まなくては。

さらに、地元の公立中学の内容や、高校受験の様子をきちんと調べていない方も多いのです。それなのに、「開成・聖光・筑駒、この3校に進学できないのなら、日比谷高校に行きます」などと平気でおっしゃいます。日比谷高校がいかに狭き門なのかご存じなのでしょうか。都内の各中学から、1名程度しか合格していません。つまり、文字通り地域トップの生徒しか進学できないのです。

 

※日比谷高校を目指す茨の道についてはこの記事に詳しく書きました。

peter-lws.net

ケース3:過密スケジュールで疲労

午前・午後連戦が続き、体力が持たなかった

本命日に体調不良になり実力を発揮できず

 

これも可哀そうすぎて実例を上げたくはないのですが、一人だけ、D美のケースをあげておきましょう。

優秀な生徒でした。思考も外見も大人っぽい生徒で、教師の信頼も厚かったのです。この子なら女子学院は間違いない。誰もがそう思っていたのですが、1月31日にアクシデントが起きました。いきなり原因不明の40度の発熱となったのです。小学校も塾も習い事も最後まで手を抜きたくない。そのD美の意志は強固で、親もそれを尊重していたのが仇となったのかはわかりませんが、D美も無理を重ねていたのでしょう。

医者に連れて行き、親は「ここまでよく頑張った。もうあきらめなさい」とD美を説得しようとしたのですが、本人が首を縦にふりません。それを見た医者の言葉がすばらしかった。

「お母さま。ぜひお子さんを受験させてあげてください。なに、これくらいの熱で死にやしません。医者としてできる限りのことはしますので」

もしかしてお医者様にも中学受験をする(した)お子さんでもいたのでしょうか。D美は保健室受験となりました。

これで合格したのなら美談なのですが、受験はそう甘いものではありません。それでも第3志望の学校に何とか合格したのはD美の実力です。

 

子どもは元気に見えて、案外体力がもたないものです。そこまで考慮すべきでしょう。

 

併願パターンを組むときのチェックポイント

以下のチェックポイントを確認しましょう。

◆その学校は本当に合格したら進学したい学校か?

◆通学時間に無理はないのか?

◆本人と両親の意志がそろった受験校なのか?

◆確実に合格できる学校を入れてあるのか?

◆お子さんの体調を考えた受験パターンなのか?

◆塾の思惑に載せられた学校ではないのか?

◆無謀な受験校ではないのか?

◆お子さんの性格に合った学校なのか?

 

まとめ

成功する併願パターンは「安全校・本命校・挑戦校のバランス」

失敗する併願パターンは「学力や気持ちや体調を無視したもの」

子どもが最後まで力を出し切れるスケジュールを組むことが大切

 

さらにこれに加えて、お子さん本人の性格に合った学校であることも大切です。

のんびりした性格の子が、「受験少年院」と噂されるようなハードな勉強を強制される学校に進学したら悲劇です。

上昇志向の強い子が、勉強<遊び の子が目立つ大学付属校に進学したら不満でしょう。

せっかく進学した学校に、結局のところ通うことができずに不登校になった、そんな話は珍しくはないのです。