中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験 過去問は何年分解くべき?合格者の勉強法と得点目安【保存版】

過去問演習は、合格のための最重要勉強です。もう塾や学校に行く時間があったら過去問を解け! と言いたくなるほど大切な勉強なのです。(もちろん学校は行かなくては)

とにかく過去問をたくさん解いてください。そう何度もお話してきました。

しかし、さすがにこの時期になって塾を切り捨てる決断は難しいでしょう。しかも大半の塾が、9月になったら通塾日数が増えているはずです。もはや家庭学習時間はほとんどとれないのが現状でしょう。

そんな中、過去問はどれくらい解けばよいのでしょう。そして合格の目安とは?

今回はその疑問に徹底的に向きあいたいと思います。

 

塾の実例

 

大手塾の場合

 S塾では、過去問のやらせ方に塾全体の方針というものは無いようですが、何となく「過去問演習はこの時期にこれくらいやらせよう」という情報が共有されているようです。したがって、教室・科目によってやらせ方に温度差があるものの、おおむね同じような指導となるようです。

◆使う過去問・・・「今年度中学入試問題集」「学校別過去問(声の教育社)」

 6月頃に、「今年度中学入試問題集」を生徒全員が購入させられます。今年度の主要校(男子校・女子校・共学校)を40校前後収録した分厚い問題集です。問題集には、模範解答冊子・解答用紙冊子が附属しています。

また、声の教育社が出版する学校別の過去問題集の購入指示が出ます。ただし塾で買わせるのではなく、「志望校のものを買ってやらせましょう」と声掛けされるだけですね。

◆始める時期・・・夏以降

 7月までは社会科のカリキュラム学習が終了していないので、手を付けられません。やっと7月の下旬、夏休みにはいるあたりから過去問の演習が可能となります。

 塾内では一切扱いません。「各自家で解くように」という指示が出るだけです。また、「今年度中学入試問題集」を解く際の参考に、難易度の目安は示されます。各教科の担当教師から、軽い指示が出るようです。生徒達は、夏休み中の隙間時間を見つけて、教科ごとに「今年度中学入試問題集」を解き進めます。もちろん時間が無い生徒は手をつけられません。また、自分の受験する過去問についても、自主的に解くのです。

 解いた過去問の提出や添削指導は最小限行われます。その指示も、担当教師の判断にゆだねられています。生徒に提出を義務付け、丁寧な添削指導を実施する教師もいれば、「記述問題の添削だけはやる」教師も、あるいは一切指示を出さない教師もいるようですね。生徒の自主性が大切だというのはこの塾の基本方針なのでしょう。

◆中小塾の場合

A塾・・・塾の授業時間中に、生徒全員が同じ学校の過去問を解かされます。答え合わせは各生徒が家で模範解答を見てやり、さらに間違い直しノートを提出することになっています。授業での指導は一切ありません。また、家で解いた受験校の過去問の添削指導も引き受けません。

 

B塾・・・塾から綿密に過去問演習のスケジュールが提示されます。生徒全員が、決められた問題を決められた日に提出しなくてはなりません。提出しないと塾から連絡が入ります。添削指導は丁寧に行われています。得点集計を塾でやっていて、志望校面談の際に提示されます。

 

個別指導塾の場合

C塾・・・教師が用意した過去問を集めたプリントを自習室で解きます。その後、教師による解説授業が行われます。ただし、受験校の過去問指導については、別途にお願いする必要があり、対応してもらえるかどうかは担当講師次第となっています。

 

D塾・・・過去問については、指示に従うよう強い指導が行われます。声の教育社の過去問を受験校分2冊購入し、1冊は塾に渡します。土日の午前中に塾の自習室に行き、指示された過去問を解き、午後に答え合わせと解説が行われます。

 

さて、紹介したS塾の例を見て、「ずいぶん冷たい対応だな」という印象を持たれたと思います。せっかく塾に行っているのに、結局過去問演習は家でやらなくてはならないなんて。しかも子どもに課題としてももらえず、声掛けや添削も不十分に思えます。

しかし、多くの集団指導塾は同じような対応です。

中小塾の中には、A塾のように、塾内で過去問を解かせるだけで高額な授業料を徴収し、しかも解説も添削も一切やらないところまで実際にあるのです。ある保護者が、子どもが受験する予定の学校の過去問を家でやらせて、添削指導を頼みにいったところ、「今回だけは丸付けしますが、次回からは家でやってください!」と言い放たれたとか。当事者のお母様から直接聞いた話です。B塾のような塾は少数派です。個人塾にようなところになるでしょう。

また、個別対応が売り物のはずの個別指導塾も、対応は千差万別です。

 

真相をお話しますね。

過去問の添削は、ものすごく時間がかかるのです。とくに国語の記述の添削は大変です。それでも正解に近い解答なら添削指導も少しですみますが、大半の生徒の答案はめちゃくちゃですから。どこからどう指導すればいいのか、悩みながら赤入れをすることになるのです。そんな生徒が20名、40名、添削答案を持ってくるのですから、それらすべてを綿密に見てあげるとことは不可能なのです。

また、持ってこられた入試問題をその場で指導することはほぼ不可能です。算数は教師が事前に解いていなければ指導できませんし、国語も同様です。かろうじて理科・社会はその場での指導も可能ですが、それができるのは相当学力の高い教師だけでしょう。

普段の授業なら、教師は事前に問題を解いて授業案を作成してから授業に臨みます。しかも扱う問題は毎年同じです。その日の授業準備などせずに、年季の入ったテキスト片手に教室に向かう教師など当たり前なのです。しかし、過去問はそうはいきません。毎年違う問題、しかもたくさんの学校の問題の指導となると、対応が困難な教師が多いのでしょう。

つまり、塾にとってみれば、生徒の過去問指導を的確にできるレベルの教師が十分にいない中、教師の仕事時間も限られる中、どうやって過去問の指導をするのか、という問題があるのですね。

もし私がやるとしたら、一教科10名くらいの添削指導が限界かな。一人の生徒が30本の入試問題を提出してきたとして、全部で300本です。それを一人で添削するのですから。授業を全くやらないのなら可能ですが、週5日も授業に入っていたら限界を超えますね。

また、受験校がばらばらな生徒を集団で指導はできません。全く同じ受験パターンの生徒だけが集まっていれば可能ですが。

それにしても出来具合がバラバラな生徒の指導は困難です。できている生徒を飽きさせず、できていない生徒に基礎から教えるのは教師の力量が相当高くないとできない授業スタイルです。

 

過去問演習は塾には頼れない。

 

これを前提に考える必要があるのです。

 

何年分・何校分解けばいい?

 

目安をお話します。

◆第一志望校

 算数・国語・・・・10年分

 理科・社会・・・・3年分

これが基本です。ただし注意があります。

※1回だけ解く

 同じ問題を何度も解くことは無意味です。1回だけ集中して解きましょう。

※間違い直しが生命線

 解くことが目的化しては意味がありません。解き終わった問題から何をどれだけ吸収して血肉とするのかが大切です。

※社会科は古い問題は無価値

 地理データは変わります。社会情勢も変わります。古い問題を解く必要はないのです。

※記述が多い学校の社会は10年分やろう

 麻布・武蔵・海城・鴎友、これらを受験する生徒は、10年分解きましょう。良質な記述問題は少ないのです。これらの学校の過去問題は何年たっても色あせないレベルです。

◆第2志望・・・4科目とも3年分

◆第3志望・・・4科目とも2年分

◆それ以外・・・1年分

 

具体例をあげましょう。例えばこんな生徒がいたとします。

2/1 駒東
2/1PM 世田谷学園(算数)
2/2 AM 聖光
  PM 三田国際
2/3 海城or浅野
2/4 聖光or世田谷学園
2/5 桐蔭

 

日能研偏差値で60代前半の生徒です。聖光(69)が第一志望ですが、塾からは難しい(無理)と言われています。塾からは、1日は駒東(65)は危険すぎるので、サレジオ(60)、あるいは世田谷(55)で合格をとってから聖光にチャレンジしましょうと指導されました。しかし聖光は絶対、そして駒東が第二志望なのです。

そこで、1日午後の世田谷算数(62)で合格が出なければ2日午後の三田国際(57)の受験をすることになりました。

3日の海城(64)浅野(62)は、志望順位は海城>浅野です。駒東が受かっていたら受験しませんが、落ちていた場合には、そして世田谷の合格がとれていれば海城、とれていなければ浅野にするつもりです。

4日の聖光は、駒東が落ちていた場合は回避するのが定石なのですが、ここは譲れません。

5日の桐蔭(54)は、家庭は乗り気ではないのですが、塾から強引に勧められました。

 

第1志望・・・聖光

第2志望・・・駒東

第3志望・・・海城

第4志望・・・浅野

第5志望・・・世田谷学園

その他・・・・三田国際・桐蔭

 

このパターンなら、聖光の算国を10年分に理社を3年分、駒東の4科目を3年分、あとは1年分といいたいところなのですが、そうもいきません。

おそらく、聖光は塾の判断どおり、無理でしょう。それでも第一志望を受験するという家庭の意志は尊重されます。

そうすると、実際の勝負は、駒東・浅野になると思います。それだって実力からいえば適正どころかチャレンジに近い。過去問対策はこの2校にしぼるべきでしょうね。そのうえで世田谷の算数入試はぜひとも押さえておきたい。

◆駒東・浅野・・・算国10年、理社3年分

◆聖光・・・3年分

◆世田谷算数・・・10年分

◆その他・・・1年分

 

これが推奨パターンです。

ところで、海城が曲者です。とくに社会の記述が、他の学校とは傾向が全く異なるのです。その対策をする時間を考えると、後回し(できれば受験回避)するのが得策でしょう。

 

過去問演習のスケジューリング

 

午前中に1本(4科目)が基本です。

6年夏以降の休日がどれだけ使えるのかカウントしてください。

 

おそらく、夏に10日、9月以降に10日、冬休みに10日、合わせて30日といったところが限界でしょう。

ということは、たった30本分しか過去問をやる時間がとれないのです。

その中に、受験校の過去問+今年度の過去問演習を組み込む必要があります。

 

成功例・・・合格者の過去問勉強法

ここで過去に指導した生徒の成功例を紹介します。

 その生徒が目指していたのは、東京でも難易度が5本の指に入る学校でした。

多くの受験生が第一志望として目指すのですが、実際に受験にまで至る(つまりそこまでの実力がつく)ことも難しい、そういう学校です。

 5年生まで順調とも思えた成績だったのですが、6年生になってから崩れました。

模擬試験を何度受けても合格可能性が40%にとどまっているのです。

ついには、最後の12月初めのテストで20%をマークしました。

第二志望にしていた学校の合格可能性も40%まで下がってしまっています。

普通ならこの段階で受験校変更となります。

ほとんどの塾でもそういう指導が入るでしょう。

それでも第一志望を諦めさせるのは教師としては避けたいと私は考えていました。

そこで参考にしたのが、過去問の得点率のデータです。

受験校の過去問はもちろんのこと、良質な入試問題を選んで、男子校・女子校を問わず様々な学校の過去問を解かせていました。 この過去問の得点率を500点満点に換算し、その時点から過去10回分の移動平均をとっていったところ、ある傾向が出ていたのです。7割の得点、つまり350点を一度もとっていないのですね。しかもそれが秋から下がり続け、6割に届きそうなのです。

 この時点で、プロとしての判断を下します。

 生徒の保護者に受験校変更の要を告げることとなりました。

 ところが、変化の兆しは1月になってから表れました。 得点率は上昇を続け、冬休み開けに7割の壁を突破したのです。私が過去に指導して合格していった生徒たちと同じかそれ以上の力がついてきたことが実感できました。

 これはいけるぞ!

 上昇トレンドを捉えた私は、第一志望校の受験を勧め、保護者は急遽書類等を準備して出願、受験日を迎えました。

 受験結果は見事合格!

 他に受験した学校も合格しました。もちろんその学校にはすぐに辞退の連絡をしたことはいうまでもありません。人気校であり、補欠の繰り上がりを待つ生徒が多数いるはずですので。

その後聞くところによると、中高でも手を抜かずに学習を続け、大学も希望どおりの進学を果たしたそうです。

 

これがその生徒の過去問の得点データです。

夏休みから過去問演習をはじめ、入試までに100本近くは解いたと思います。

この生徒は夏以降は週末は塾に通わなかったのでこの演習量が可能でした。

勇気ある決断でしたが、大正解でしたね。

 

合格可能性を測る得点の目安

 

学校が公表している「合格者最低点」はひとつの目安になるでしょう。しかし、それもこだわりすぎることは禁物です。

「〇〇中学の△△年の過去問を家でやらせたところ、合格最低点に20点届いていないのです!これでは落ちてしまいます!」

「〇〇中学の△△年の過去問で、合格最低点をクリアしました! だから受かります!」

こういう相談?が例年ありますが、無意味です。あくまでも一つの目安にすぎません。それよりも、たくさんの問題の得点率を見ることで、生徒本来の得点力を見極めていくほうがはるかに有効です。

 

◆難関校は7割が目安

難関校では、合格最低点が概ね60%代の半ば、65%前後の学校が多くなっています。そこで7割の得点をとることが、合格の目安と考えてよいでしょう。

 

◆中堅校は6.5割が目安

中堅校だからといって、必ずしも問題の難易度は低くはありません。難関校を受験する生徒も多く受験しますので、問題の難易度・得点率も難関校と変わらないと考えてよいでしょう。その中で、65%の得点をとることが合格の目安と考えて良いと思います。

 

◆押さえ校は6割

押さえ校として考えられる学校の多くは、生徒募集に注力しています。あまりに難易度の高い問題や奇をてらった出題、いわゆる難問・奇問の類は出題されません。基本問題をきちんと得点することが求められるのです。こうした学校の問題の多くは、満点が当たり前、とまでは言いませんが、本来高得点が期待できる出題です。しかし受験生のレベルを考えると、6割の得点が一つの目安になると思います。

 

これが一つの目安です。

過去問演習で12月にもなって一度も5割を超えないようであれば、早急に志望校の組み立てを再検討してください。

 

保護者ができるサポート

 

◆決して否定しない

 これが一番大切です。

「何でこれしか点がとれないの!」

この言葉かけは最悪ですね。子どもだって、好き好んでその点をとったわけではないのです。子どもなりに取り組んだ結果にすぎません。

「何でこの問題落としたの!」

これも最悪です。別に落とすつもりなどなかったのです。

子どもの現実を冷静に受け止める度量が必要です。

 

◆得点を集計する

 エクセルを使って集計しましょう。算国を150点換算し、理社を100点換算することを推奨します。

 

◆失点の原因を探る

・時間不足

・問題の意味がわかっていない

・知識不足

・思考力不足

・ケアレスミス

まだまだ失点の原因はありますね。

時間不足で解ききれなかったとしても、時間をかければ解けるとは限りません。とくに算数の場合はそうでしょう。それを怒ったところで仕方がない。類題の基本問題から丁寧に一緒に勉強するしかありません。

また、知識不足は覚え直せば済む話です。記憶が曖昧な場合も同様です。「これ一度習ったでしょ!」は通用しませんので。

 

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